初盆供養は、四十九日が終わりようやく落ち着いたころに行う盆供養です。
ただ一般的に盆供養としているものとは違い、お葬式から始まる一連の故人を偲ぶ行事という意味があります。
また宗教だけでなく地域の慣習も多いため「家族だけでやりたい」という気持ちもわかりますが、「勝手に判断していいのかしら?」という気持ちあるはずです。
では初盆を家族だけでやるというのはOKなのでしょうか?
それともやはりマナー違反となるのでしょうか?
またどうしても家族だけで行いたい場合にはどんな方法があるのでしょうか?
初盆供養は法事とはちょっと違う
初盆供養は、お葬式から始まる一連の行事であることは間違いありません。
一般的にお坊さんを呼び、遺族・親族が立ち会って初盆法要を行います。
お坊さんが来るから「宗教儀式」というイメージが強くなると思いますが、実際には宗教というよりも地域の風習としての意味の方が初盆には強いです。
もともと日本は神道の国です。
神道では「死者の霊は時間をかけて浄化されてから土地の神様になる」という考え方があります。
まだ亡くなって間もない霊は浄化されていないため、神様というよりも家の神様(先祖霊)となります。
そのため盆になると自宅に招き先祖の供養をするというのがもともとのルールにあります。
ですから盆供養は宗教儀式というよりも地域の慣習が深く、準備するものも地域によってさまざまな違いがあります。
・初盆供養は故人を偲ぶ人が集まる場所
初盆供養は確かに亡くなった人のための供養という意味があります。
でもそれと同時に同じように生前故人とご縁があった人が公の場で故人を偲ぶことが出来る場所でもあります。
まして四十九日以降一年忌までは公の場で故人を偲ぶことが出来ないわけですから、このような機会にみんなで集まりみんなで故人を偲ぶ時間を過ごすということは家族の心をいやすことにもなります。
ところがそこに仏教の考え方が入ることで「宗教儀式」というイメージが強くなってしまいました。
そのため「初盆法要には人を呼んでお坊さんを呼んで供養をしなければいけない」というイメージが出来上がったのでしょう。
これだとまだ喪中の家族にとっては経済的にも精神的にも負担しかないはずです。
ですから「家族だけでひっそりとやりたい」という気持ちになるのもよくわかります。
でも参加する側としては「故人を偲びたい」と思う気持ちと同時に「家族の負担にならないようにしたい」という想いもあります。
ですから「家族だけでやりたい」という気持ちがきちんと伝われば、それ以上周囲から不満が出るということは本来ありません。
・実際の現場では家族だけで初盆をしている人が増えている
「一般的に」という言い方をすると、たいていの人が「みんながそうするのならうちもそうした方がいいのかな?」という気持ちになるでしょう。
もともと日本人は争いを好まない国民性を持っているので「ふつうが一番」という考え方をどこかに持っています。
だから周りから「一般的には」とか「普通は」といわれると、「それに従わなければいけないのではないか?」という気持ちになってしまいます。
でも本当の気持ちが周りの意見と違っているのであれば、お坊さんを呼んで周りの方がやっているように初盆法要をしたとしてもあなた自身が納得できないのではないでしょうか?
もっともお葬式の現場にいると、家族葬というものがお葬式の定番となった今も家族単位で行っている人が増えたという実感があります。
家族葬はお葬式に呼ぶ人の範囲も家族で決めることが出来ます。
つまり親族であっても参加しない人もいるわけです。
そのため初盆法要においても同じように、招待する範囲は家族が判断しているケースが多いです。
あくまでも遺族・親族であれば初盆法要まで参加するのがマナーというのは、現在のように「家族葬」がめじゃーではなかった時代のことだと思ってください。
すでに家族葬は一般的なお葬式よりも人気があり、いろいろな人がこの家族葬を利用しています
ですから「お葬式を家族葬で行ったので初盆も家族で」という流れは決して珍しいことではないのです。
・招待しなくても来る人は来る
わざわざ案内状を送らなくても、「初盆だからお線香あげさせて」と言って親戚がやってくることはよくあります。
そこには純粋に「故人を偲びたい」という想いがあるのだと思うのです。
そんな想いでやってくる人に対して「いや、私たちは家族だけでやるのでお帰りください」というのは逆に失礼ですよね?
でも招待をされていなくても来るということは、見返りがある(お返し物がある)ということを期待してきているわけではないのです。
相手の側からすれば「もしかしたらお邪魔になるのかもしれない」という想いの方が強いのです。
実際に現場担当者の私に対して「友人なのですが、初盆に手を合わせに行くのはマナー違反ですか?」と相談してくる人が多いので、これは間違いのないことだと思います。
つまり特別なことをしておもてなしをしなくても、こうしてわざわざ足を運ぶ人は何も文句はないのです。
もてなす側としても茶菓子程度が出せれば問題ないですし、ほんのひと時でも亡くなった家族の昔話を聞くことはあなたにとっても癒しの時間になると思うのです。
どうしても誰とも会いたくないというのであれば、初盆という考え方のないキリスト教と同じようにサマーバカンスに出かけるのも一つの方法です。
家にいなかったからと言ってそのことを責めるような人はいません。
初盆は特別だからこそ、招待をしてもしなくても手を合わせに来る人は来ます。
逆に故人と近い遺族・親族であってもわざと用事を作って参加しない人だっています。
それならば本当に故人を偲んでくれる人とだけで初盆を過ごすというのも良いのではないでしょうか?
・初盆にお坊さんを呼ばなくても問題はない
盆供養は確かに仏教行事でもあります。
でも仏教式のお葬式をしたからと言って必ずしもお坊さんを呼んで供養をしなければいけないということではありません。
あなたが出来る範囲で亡くなった家族を迎え、お盆の時期を静かに過ごし、また「来年のお盆にも帰ってきてください」と静かに手を合わせて見送れば十分なのです。
ちなみにお坊さんにお願いすれば、必ずお金が発生します。
お坊さんだって商売なのですから、お金をもらわないのにボランティアで読経してくれるなんてことはありません。
その費用を別のことに使う方が亡くなった家族が喜ぶとは思いませんか?
本来人を偲ぶということはお金で解決することではないのです。
集まる人と共に思い出話を聞き、笑い、そしてほんの少しだけ心の悲しみが癒されたと感じることが一番大事な供養なのです。
しきたりが厳しい地域では事前に家族の意向を相談する方が無難
初盆供養は地域のしきたりとも深く関係しています。
特にしきたりが厳しい地域や家ではどんなに家族が「自分たちだけでやりたい」と思っても、周りから反対が出ることはよくあります。
とはいえやはり時代の流れもあり、しきたりが厳しい地域であったとしても少しずつ考え方も緩やかになってきています。
もちろん直前になって「うちは家族だけでやることにしましたので」と言われたら周囲からの反発を買うことは避けられないでしょう。
でも事前に「相談」という形から入ってみれば、しきたりが厳しい地域の人たちでも理解してくれるようになってきています。
「私たちは私たちのやり方でやります」と突き放されると、相手も人ですから感情としてあまりいい気はしません。
でもお互いに話をすれば、相手も納得してくれるはずです。
それに過去にしきたりが厳しい地域で同じように家族だけで初盆供養をしたいと考えていた家族から相談を受けた時に同じようなアドバイスをしたところ、最終的に相談した地元の人が一番の理解者になってくれて無事に思い通りの初盆が過ごせたというケースがありました。
もしもそれがあなたにも当てはまるとしたら、その方が心強いとは思いませんか?
急な来客があったときのための対策だけはしておこう
家族だけでやるのだとしても、急にお客さんがお参りにやってくることはあります。
もちろん相手の方も「案内されていないけれど、せめてほんのひと時だけ手を合わせたい」という想いでやってきます。
ですから世間一般的なおもてなしが出来なかったとしても、そのことに対して不満を持つような人は自分からやってくることはありません。
その代り急な来客があっても困らないように茶菓子や飲み物の準備などはしておいた方が良いですね。
基本的にお客さんがいらっしゃるのは盆の中日になりますので、その間はできるだけ家を留守にしないように心がけるだけでもOKです。
それに中日は大切な家族が久しぶりの自宅でのんびりとくつろいでいる期間です。
ですからこの期間に家を空けてしまうと、せっかく帰ってきた我が家に亡くなった家族を一人ぼっちで留守番させることにもなります。
そんな風に考えてみたらあなたの家族なりのやり方で初盆を行っても問題がないと思いますよ。
まとめ
家族だけで初盆法要をすることに問題はありません。ただしあらかじめ周りに相談することはしておいた方が無難です。
特にしきたりに厳しい地域の場合は、地域の人にも理解してもらう努力をしてみてください。
最近はしきたりが厳しいところでも事前の相談と家族の意向が分かれば、周囲も理解して協力してくれるところが多いですよ。