仏式のお通夜・葬儀式に参列する場合、必ず行うのが焼香です。
でも焼香には宗派による作法や式場のスタイルによってやり方に違いがあり、何をどうすればよいのかわからないという人も多いはずです。
そこで今回は、お通夜・お葬式に参列する前にチェックしておきたい焼香のやり方とマナーについてわかりやすく解説します。
焼香のやり方は式場や宗派によっても違いがある
仏教式のお葬式では、お別れの作法として「焼香」を行います。
これは仏教式ならではのしきたりになるので、ほかの宗教では見られません。
線香と粉のお香、何が違うの?
仏教式で焼香では「お線香を使う場合」と「粉のお香を使う場合」があります。
いずれも「焼香」といいますが、お通夜やお葬式では粉のお香を使って行います。
そのため一般的に焼香というと「粉のお香(抹香)で焼香をする=抹香焼香」のことを言います。
そもそも焼香ってどんな意味があるの?
そもそも焼香というのは「亡くなった人を悼むための作法」というわけではありません。
香の煙には「心」「身体」の穢れを取り払うという意味があります。
尊い存在を前にした時に「清浄な心で向き合うための作法」というのが焼香本来の意味にあります。
その意味でいえば焼香は「清浄な心で真摯に悲しみと向き合うという気持ちを態度で表すこと」とも言えます。
焼香するときに数珠を持っていくのは常識?
数珠は、仏教の仏具の一つです。
そのため数珠を持っていくのは「仏教のお作法に従う」という意味があります。
ですから必ずしも持っていかなければいけないというわけではありませんが、社会人であればお葬式のマナーとして持っていくのが望ましいです。
宗派によって数珠の形は違う
数珠は宗派によって形が違います。
それぞれの宗派によって決められている数珠のことを「本式数珠」といいます。
自ら信仰する宗派が決まっているのであれば、本式の数珠を持っていくのが良いでしょう。
ただ社会人のマナーとして数珠を準備するのであれば、宗派に関係なくもつことが出来る「略式数珠」を準備するのがおすすめです。
略式数珠は日蓮宗以外であればすべての宗派において使うことが出来ます。
略式数珠は様々な種類があるので好みによって選ぶことが出来ますが、男性用と女性用があるので注意が必要です。
男性用の方が女性用の数珠の玉よりもサイズが大きいため、数珠そのもののサイズも女性用より一回り大きいです。
式場のスタイルによって焼香のやり方に違いがある
焼香のスタイルには「立礼焼香」「座礼焼香」「回し焼香」の3つのスタイルがあります。
これは式場のスタイルによって使い分けられます。
椅子式の式場の場合は、立ったままで焼香が出来る「立礼(りつれい)焼香」が主流です。
これに対して座敷の式場の場合は、座って焼香を行う「座礼(ざれい)焼香」が主流です。
また座敷の式場でも、式場のスペースの関係で焼香所までの移動が難しい場合は「回し焼香」となることもあります。
いずれの場合も焼香は粉のお香を使う「抹香焼香」で行われます。
同じ仏教でも宗派によって焼香の回数が違う
焼香のお作法は宗派によっても異なります。
これは焼香に対する考え方の違いが関係しています。
自ら信仰する宗派が決まっている場合は、信仰する宗派のお作法に従って焼香をします。
特に信仰する宗派が決まっていない場合は、葬儀を担当する宗派の焼香作法を参考にするのがマナーです。
スタイル別焼香のやり方
立礼焼香のやり方
数珠は左手に持ちます。
焼香所に進み出る前に、遺族に一礼します。その後焼香台の1歩手前まで進み、その場で祭壇に向かって一礼します。
焼香台の前に進んだら、合掌して右手の親指、人差し指、中指で抹香をつかみ目の高さまで掲げそのまま香炉内の火種の上に抹香を落とします。
改めて合掌し、姿勢を正します。
祭壇正面を向いたまま、一歩後方へ下がりその場で一礼します。その後、僧侶と遺族に一礼し席へ戻ります。
座礼焼香のやり方
左手で数珠を持ちます。
焼香台まで進み出る時は、中腰のままで進みます。
遺族・僧侶の前に進み出たら、正座をしてその場で一礼します。
体の向きを祭壇正面に向き直し、遺影に向かって一礼します。
膝をついたまま移動し、静かに座布団に正座します。
合掌をしたら右手の親指、人差し指、中指で抹香をつかみ目の高さまで掲げそのまま香炉内の火種の上に抹香を落とします。
改めて合掌し冥福を祈ります。
下がるときも膝をつけたまま座布団から下ります。
座布団を下りたら遺影に向かって一礼します。
その後僧侶・遺族に一礼し、中座のままで席に戻ります。
回し焼香のやり方
香炉が目の前に回ってきたら、次に香炉を回す相手に向かって目礼します。
(この時の目礼は「お先に失礼します」の意味があります)
香炉を自分の正面に来るように正しく置き直します。
まずは遺影に向かって一礼します。その後合掌をし、右手の親指、人差し指、中指で抹香をつかみ目の高さまで掲げそのまま香炉内の火種の上に抹香を落とします。
改めて合掌し冥福を祈ります。
焼香が終わったら、次の順番の方へ両手で香炉を渡します。
宗派別焼香のやり方
曹洞宗
曹洞宗の場合、焼香の回数は2回です。
ただし抹香を落とすまでの作法が違います。
1回目は抹香を目の高さまで掲げてから火種に落とします。
2回目は、抹香をつかんだらそのまま火種に落とします。
これは1回目の焼香を「主香」、2回目の焼香を「従香」とするためです。
真言宗
真言宗の場合、焼香の回数は3回です。
高さに決まりはありませんが「身・口・意の三業を清める」という意味があります。
そのほかにも「仏・法・僧の三宝に捧げる」という意味や「三毒の煩悩(貪り、いかり、愚痴)を消す」という意味があります。
天台宗
天台宗の場合、焼香の回数に特にこだわりません。
一般的には1回、または3回とします。
臨済宗
臨済宗の場合、焼香の回数は1回です。
「1回の焼香に想いを込める」という意味があります。
浄土宗
浄土宗の場合、焼香の回数に特にこだわりません。
一般的に1~3回とします。
浄土真宗本願寺派
浄土真宗本願寺派の場合、焼香の回数は1回です。
香は目の位置まで持ち上げず、そのまま火種の上に置きます。
★浄土真宗本願寺派の場合は線香の置き方に注意!
線香で焼香をする場合、浄土真宗本願寺派では香炉に線香を立てません。
折ってから横に寝かせます。
浄土真宗大谷派
浄土真宗大谷派の場合、焼香の回数は2回です。
香は目の位置まで持ち上げず、そのまま火種の上に置きます。
★浄土真宗尾谷派の場合は線香の置き方に注意!
線香で焼香をする場合、浄土真宗大谷派では香炉に線香を立てません。
折ってから横に寝かせます。
日蓮宗
日蓮宗の場合、僧侶と参列者で回数が異なります。
僧侶は3回焼香しますが、参列者は1回です。
日蓮正宗
日蓮正宗の場合、焼香の回数は3回です。
まとめ
焼香のやり方やお作法は、式場のスタイルや宗派によっても異なります。
数珠を持参する場合は、常に左手にかけて持ちます。
また焼香をする前には遺影に対して体が正面を向くようにするのがマナーです。
宗派の焼香の作法がわからない場合は、式場に入る前に式場誘導員(葬儀スタッフ)に相談しても構いません。
いずれにしても「故人に対して敬意を表する」ということが重要になります。