香典を準備する場合、お札の入れ方にもマナーがあります。
一般的に香典といわれるのは「不祝儀」といわれるもので、その反対の意味にあるのが「祝儀」です。
この2つはそれぞれ意味があるので、お札の入れ方のマナーも違います。
では香典の入れ方にはどんなマナーや理由があるのでしょうか?
今回は香典のお札の向きに関する素朴な疑問と、知っておきたい香典のお札の入れ方の基本を紹介します。
香典に入れるお札の向きって!?
お葬式に参加するならば不祝儀、結婚式に参加するのであれば祝儀を持参するのが参加者のマナーです。
不祝儀も祝儀も包む金額の相場は、主役との関係や立場によって変わります。
ただしどちらの場合も式に参加するのであれば相場に合わせた金額を準備する必要があります。
さすがに不祝儀や祝儀に硬貨を使う人はいません。
ですから必然的に現金=お札となります。
そこで問題になるのがお札のマナーです。
お葬式と結婚式はどちらもフォーマルなセレモニーですが、不祝儀と祝儀では新札に対する考え方が全く違います。
香典に入れるお札のマナー
お葬式に参加するのであれば、香典という名目で現金を準備します。
金額が大きい場合は数万円~10万円とかなり高額になるのですが、どんなに金額が大きくても新札を使うことはNGです。
お葬式は突然の出来事です。
スケジュールがあらかじめわかっているというものではありません。
今は街のいたるところに現金を下ろすことが出来るATMがあるので、10万円単位の現金であっても銀行の窓口に行かずに準備することができます。
でも昔は違います。
昔は金額の大きなお金を準備するためには、銀行の窓口に行かなければいけませんでした。
もちろん窓口でお金をおろせば、新札で対応してくれます。
ただ普段の生活で新札を手にすることは滅多にありませんでした。
つまり「新札=わざわざ銀行に行ってお金をおろすこと」という意味になるわけです。
ここで問題なのは「なぜわざわざ銀行に行ってお金をおろす理由があるのか?」ということなのです。
結婚式の場合はあらかじめ式の日程は決まっていますので、参加するのであればきちんと式当日までに祝儀を準備すればよいわけです。
しかも結婚式は若い2人の門出の日というおめでたい席なのですから、汚れのない新札で祝儀を準備するのがマナーです。
でもお葬式は結婚式とは違います。
いつ起こるかわからない弔事なのですから、あらかじめお金を準備するということは基本的にありません。
それなのに新札のお金を準備することができるということは、葬儀があることを予想してあらかじめ準備していたと解釈されてしまう場合があります。
特に今のように便利な時代ではなかったかつての日本では、そのような考え方をされても当然だったのです。
そのためお葬式では新札で香典を準備するのは縁起が悪いとされ、マナー違反といわれるようになったのです。
香典に入れるお札の向き
お葬式も結婚式も不祝儀・祝儀として現金を準備する時には、不祝儀袋または祝儀袋にお札を入れます。
この時のお札の向きもお葬式と結婚式では全く違います。
まずお札には表と裏があります。
一般的に「肖像画が書かれている方が表」といわれていますが、二千円札の場合は肖像画がありません。
そこでもう一つの目安として覚えておきたいのがお札に描かれた漢数字です。
お札には金額を表す文字が必ず印刷されていますが、基本的にアラビア数字が使われています。
ところがお札の表側には、左側に「日本銀行券」という文字の下に漢数字で金額が印刷されています。
例えば千円札であれば「日本銀行券 千円」とありますし、一万円札の場合は「日本銀行券 壱万円」とあります。
肖像画がない二千円札にも表側には「日本銀行券 弐千円」と印刷されています。
ですからこのように書かれている方がお札の表側というわけです。
ではお札の表と裏の区別が分かったところで、今度はお札の上下はどうでしょうか?
通常の場合はお札の表が正面に向けた時に肖像画の頭が上(二千円札の場合は守礼門の屋根が上)に向けます。
この状態で上下を判断します。
ただし不祝儀・不祝儀の場合はお札を縦長の封筒に入れて準備しますよね?
ということはお札も縦方向に向けなければいけないので、先ほど説明した上下を見分ける基準では判断できなくなります。
実はこの時にこそ肖像画の位置が判断のポイントになるのです。
最初に結論から言っておくと、「お葬式→肖像画(または守礼門)が封筒の下」「結婚式→肖像画(または守礼門)が封筒の上」です。
お札を入れる向きが不祝儀・祝儀で真逆となる理由については諸説あります。
そのためすべての説明をすることはここではカットしますが、お葬式のお札の向きについては「悲しみで顔を伏せている」という意味があります。
香典にお札を入れる時の基本的なマナー
まずお札を準備します。
金額は故人との関係や付き合いの深さなどによって変わりますので、相場を目安にするようにします。
「香典の金額は気持ちで!」という表現がありますが、相場よりも大幅に金額が高いとかえって遺族に気を遣わせてしまいます。
ですから相場以上の弔意を表したい場合は、香典とは別に「御供物代」としてお金を準備するのが良いです。
御供物代以外にも供花や弔電という方法もあります。
なおお札の枚数が複数枚の場合は、必ずすべてのお札の向きをそろえてください。
封筒に現金を入れる時には、お札の表を確認します。
そして封筒から遺族がお札を取り出したときにお札の表が見えるように入れます。
香典のお札を入れる時に注意しておきたいポイント
繰り返しになりますが、新札は避ける。
新札をお葬式の香典として使うことはマナー違反になります。
どうしても新札が混じってしまう場合は、封筒に入れる前に真ん中に折り目を付けます。
折り目がつけば新札とはみなしませんので香典として使うことができるようになります。
・お札の枚数に気を付ける
お葬式では2つに分けることができる数字は避けるのがマナーです。
つまり偶数枚数は避けるということです。
もちろんこれにも意味があります。
偶数は2で割り切れる数字ですよね?
つまり「2つに分かれる=死に別れる」となります。
そのためお葬式では使いません。
ちなみに奇数であっても「9」という数字は避けます。
これは「9=苦しむ」と解釈されるからです。
同じく「4」も「4=死」となるのでお葬式では使いません。
・封をしめないのが正式なマナー
お葬式の香典は現金を入れる封筒にのり付けをして封をしめることはしません。
のりづけをして封をするのは中身がなくならないようにするためですよね?
確かに香典として包むお金は高額ですので「失くしたくない」という気持ちはわかります。
でも、そもそも香典は大切なお供え物ですから、誰かに預けるということが前提にありません。
しかも直接手渡すものなのですから、中身が途中でなくなってしまうということもありません。
そのためお葬式の香典はのりづけや封をしないのが正式です。
また実務的にものりづけをしない方がよいとされます。
香典を整理するときには封筒から現金を取り出しますよね?
この時に現金が入った封筒がのりづけされていると、のりづけを剥がす手間がかかります。
そのため遺族の手間を省くという意味から「のりづけをしない方がよい」ともいわれています。
まとめ
日本では、香典のお札の向きひとつで弔意を表すことができます。
そのため香典を準備するといっても、お札の選び方から入れ方までマナーを意識して準備する必要があります。
細かいように思うかもしれませんがとても大事なことなので、ぜひ意識するようにしてくださいね。