夫と死別した妻として、夫の仏壇を持つということは自然な流れとも言えます。
確かに仏壇があることによって手を合わせる場所が出来ますので、夫がいなくても仏壇があることで身近に感じることもできます。
しかし、仏壇は必要本当に必要なのでしょうか?手元供養などの方法も考えたい。
また、夫が長男で実家にある仏壇を引き継がないといけない場合はどうするべきなのでしょうか?
亡くなった夫の仏壇は必要!?
夫と死別したとなれば、夫の位牌を納める仏壇を準備するというのが自然な流れになっています。
でも夫と死別したからといって必ずしも夫のための仏壇を作る必要はありません。
・夫の仏壇を作った方が良い理由
仏壇は「先祖供養のための仏具」です。
こういってしまうと「うちはそれほど仏教に興味がないのだけれど…」という人も出てくるはずです。
確かにそういう人がほとんどですが、お葬式を仏式で行った場合は魂が入った位牌が残されます。
ですから仏具を購入して自宅に置くということは、亡くなった夫の供養を続けるということになります。
でも仏壇には「宗教」という以外の意味もあります。
夫が死んだという事実を受け入れることは簡単ではありません。
現実的に考えれば受け入れざるを得ないことの方が多いでしょう。
すでに夫の体は火葬されていますから、目の前に現れることもありませんし体に触れることもできません。
それでも、心はその事実を受け入れるまでに時間がかかります。
姿が変わってしまったとしても人には「心」や「魂」というものがあると信じていますよね?
もちろん生きていてもこの2つの存在を目で見ることはできません。
存在しているかどうか、確認することも難しいです。
それでも「必ず存在している」と信じているからこそ、まだ心が夫の死を受け入れられずにいます。
でも心や魂が目に見えないので、何か形のある物を通してその存在を確認したいと思うようになります。
その1つの方法が仏壇であり位牌だと思うのです。
仏壇は「夫の部屋」であり位牌は「夫の心・魂が形になったもの」と考えるからこそ、部屋に仏壇があることで心が落ち着きますし位牌に手を合わせることによって会話をしているような気持になります。
実際に無宗教式(自由葬)で私が担当した遺族も、お葬式が終わってしばらくしてからオリジナルの位牌と仏壇を自宅に作っていました。
もちろん一般的な位牌は仏壇とは違い、香炉と位牌が納められる小さなボックスに琉球ガラスに名前を刻印したオリジナルの位牌でした。
でも本来宗教式な儀式が嫌だという理由で無主教式にしたのですから、位牌も香炉も必要はありません。お葬式と木にも使わなかったのです。
そこでなぜわざわざ作ったのかその理由を聞くと「手を合わす場所が欲しいから」という答えでした。
私はこの家族の話を聞いて以降、「仏壇という言葉だから宗教と結びつけてしまうけれど、それ以外の言葉で表現できるのであればもっと親しみやすいのかもしれない」と考えるようになりました。
それからは同じような相談を受けた場合、「形にこだわるのではなく手を合わせる場所を作ってあげればいいですよ」と答えています。
・夫の仏壇を作らない方が良い理由
今のあなたは夫の死をまだ完全に受け入れられていないはずです。
そんな状態のあなたですから、「あなただって将来再婚するかもしれないのよ」と私が伝えたとしてもきっと全力で否定するはずです。
もちろん夫と死別した後、再婚せずに最期を迎えた妻もたくさんいます。
でも時間が過ぎていくうちに、今抱えている夫への想いに変化が出てくることもあります。
もしかしたら夫の死別の寂しさに苦しんでいる時に、常に側で励ましてくれた男性のことが好きになるかもしれません。
その男性と新しい生活を始めたいと考えた時には、自然な流れで「再婚」という2文字が浮かんでくるはずです。
でも再婚するとなった時、亡くなった夫の仏壇はどうするのでしょうか?
処分をするにしてもそれまで大事に守ってきたものなのですから、粗大ごみと一緒に処分をするというのは心苦しいものです。
かといって夫の実家の仏壇に位牌を移させてもらうにしても、相手が了承してくれなければこれも叶いません。
ただし再婚する相手が「亡くなった旦那さんの仏壇をそのまま持っていてもいいよ」と言ってくれる可能性もあります。
ただこの場合も消極的な了承と考えた方がよいです。
もちろん消極的という言葉には「死別した夫への愛情を捨ててほしい」という意味が含まれているのではありません。
「新しい人生を2人で始めたい」という純粋な想いから来るはずです。
ですからもしも夫の仏壇と共に再婚することを認めてくれたとしても、あくまでもそれは消極的な了承なのです。
つまり亡くなった夫の仏壇や位牌には「亡くなった夫の魂が宿る場所」という意味があるからこそ、再婚相手にとっても悩むわけです。
これまでのあなたの人生を否定する気持ちはなくても、「これからは自分が夫である」という気持ちに水を差すことになるわけです。
だからこそ再婚相手としては死んだ夫の仏壇や位牌を素直に受け入れにくいのです。
それにそのことを受け入れるためには、同じような経験をした人でなければ理解できません。
結果的に死別した夫の仏壇や位牌は、あなたの再婚に大きなハードルとなります。
死別した夫の仏壇代わりに手元供養という方法もある
最近では仏壇や位牌を作る代わりに、故人の遺骨の一部などを身近な場所において供養する「手元供養」という方法があります。
メモリアルプレートタイプのものであれば、写真たてと分骨した遺骨の一部を治めることが出来る物もあります。
また常に身近に感じていたいという場合は、遺骨の一部を治めたブレスレットやペンダントなどの手元供養もあります。
こうした手元供養はあくまでも遺骨の一部を分骨してもらうのが前提にあるので相手側の遺族の了承が必要ではあるのですが、最近は形にこだわらない供養の方法を探す人も多いので人気が出ています。
またこのような手元供養品は、一見するとただのオブジェやアクセサリーのようにしか見えません。
そのため部屋の一角に置いておいてもインテリアの一部に見えるので、部屋の雰囲気を壊しません。
また将来再婚をする場合も、仏壇や位牌と違って処分がしやすいのもメリットにあります。
夫の実家の仏壇も引き継ぐべき!?
死別した夫が長男だった場合、夫の実家の仏壇も嫁であるあなたには大きな負担になります。
ただしこれに関していえば、あなたが今後夫との実家とどのように付き合いたいのかがポイントになります。
・これまで通り嫁として夫の実家の仏壇を引き継ぐ
夫が生きていた頃のあなたは、長男の嫁として夫の実家の仏壇の供養にも立ち会ってきたはずです。
そもそも結婚は家同士の結婚でもありますので、夫と結婚した時点で夫の親と義理の親子関係が生まれます。
もちろん夫が死亡した時点で夫との婚姻関係は終了しますが、夫の親との親子関係はそのまま継続します。
ですからあなたがこれまで通り嫁として夫の実家の仏壇を引き継ぐということそのものには何の問題もありません。
むしろ仏壇の継承者がいるということで、夫側の両親も安心するはずです。
・気持ちの整理がついたら夫の実家とは距離を置きたい場合
夫と死別した事実を上手く受け入れられないうちは、夫の実家との付き合いを通して悲しみを共有するということは良いことです。
大切な人との死別の悲しみは「乗り越える」ではなく「共に生きる」ということなので、それが出来るようになるまではいろいろな方法を使うことが大事です。
でもその方法が自分なりに見つかった時、「これからはもう一度自分のための人生を歩んで行こう」と思うかもしれません。
この場合は単に夫の実家と距離を置くだけではだめです。
ちょっと面倒なのですが、夫と死別しても夫の両親やきょうだいとの姻族関係は残っています。
そして仏壇や位牌などは「祭祀継承者」として指名された人が受け継がなければいけません。
もしもあなたに息子がいるのであれば、「一族の仏壇は長男が引き継ぐもの」という地域の慣習があればそれを拒否することは難しいです。
こういう場合は、あなたと子どもが死別した夫との姻族関係を終了する手続きをすることで、引き継ぐことを拒否することも出来ます。
ちなみに祭祀継承者と指名された人は、引き継いだ後に仏壇や位牌をどのようにするか決定する権利があります。
ですから祭祀継承者として指名された場合は拒否できませんが、引き継いだ後に仏壇や位牌を処分することはできます。
まとめ
死別した夫の仏壇や夫の実家の仏壇については、将来あなたの生き方とも関係してきます。
ただし一度仏壇を作る・引き継ぐと、そう簡単には処分したり戻したりすることが出来ません。
また仏壇や位牌を作る時には、次の代で引き継ぐ人がいることが条件になります。
ですからあなたの気持ちもよくわかりますが、新たに夫の仏壇や位牌を作る時には十分に家族や親族と相談したうえで決めるようにしてくださいね。