お葬式では遺影写真を準備します。
でもお葬式当日までに仕上げなければならず、写真選びも葬儀社に急かされてとりあえず手元にあった写真を渡してしまった為に、出来上がった写真を見て周囲から「なんでこの写真?もっといい写真あったでしょ?」といわれてしまうこともよくあります。
でもどうしてお葬式に遺影写真が必要なのでしょうか?
遺影写真の意味や遺影写真を作る時の写真選びのポイントはあるのでしょうか?
そこで今回は、お葬式の遺影写真にまつわる様々な疑問について詳しく解説していきます。
お葬式の遺影写真は本人の想いが込められているからこそ必要
葬儀社にお葬式の手配を依頼すると、必ず「お葬式では遺影写真が必要です」といわれます。
このような会話は、亡くなってから数時間以内に行われる葬儀社との打ち合わせの中で行います。
この時の家族は、「大切な人が死んでしまったことに対するショック」「危篤状態が続いたことによる精神状態の悪化」「睡眠不足による体力の低下」のレベルがMaxの状態です。
このような状態の時に、家族が正しい判断が出来るはずはありません。
ですからほとんどの人が、葬儀社に言われるままに遺影写真を手配しているはずです。
でも「遺影写真がなければお葬式が出来ない」というのはウソです。
亡くなった本人に対してお葬式でどうしても必要になるのは、骨壺と棺だけです。
棺は火葬場で火葬をするために、どうしても必要になります。
さらに火葬後の骨は家族が持ち帰る必要がありますので、骨壺も必要です。
でも遺影写真は違います。
遺影写真がなくても火葬をすることはできます。
またわざわざ写真を使わなくても、本人の肖像画でも代用することは出来ます。
さらに最近では仏間がない家や仏壇が置けない人も多いので、「お葬式が終わった後の処分に困る」という人も増えています。
そのため実際にお葬式を行った人の中には、遺影写真を作らなかったという人もいます。
では「どうしてお葬式で遺影写真が必要」といわれるのでしょうか?
それはお葬式の遺影写真には2つの意味があると考えられているからです。
人の心は遺体を目の前にしても本当の意味では死を受け入れられない
全国的に見れば、葬儀式・告別式終了後に火葬をすることの方が多いです。
このようなお葬式の流れのことを「遺体葬」といいます。
でも地域によっては火葬を済ませた後祭壇に遺骨を納めた骨壺を安置し、葬儀式・告別式を行うところもあります。
これを「骨葬」といいます。
いずれにしてもお葬式に参列する人にとっては、お葬式で故人の顔を見てお別れをすることはできません。
闘病生活が長かった場合は、元気だったころの姿と亡くなった直後の姿があまりにも違っているということもあります。
中でも多いのが、「病気のせいで急激に痩せてしまった」という場合です。
このような場合、家族の中には「すっかり姿が変わってしまったから、火葬するまでは誰にも見せたくない」という人もいます。
でもお葬式は家族だけのお別れの場ではありません。
生前亡くなった本人と付き合いがあった人も、最後のお別れをしたいと思ってお葬式にやってきます。
そんな時のために遺影写真はあるのです。
人が亡くなるのは、何も病気が原因というだけではありません。
突然の事故に巻き込まれて亡くなることもあれば、突然死ということもあります。
さらに孤独死の場合は、死後数日~数カ月後に亡くなっていることが分かることもあります。
でもこの世に生まれたからには、故人がどのような形で死を迎えたとしても、亡くなった本人を知る人には強烈なショックと深い悲しみが襲います。
それが「人が死ぬ」ということです。
ただし人は、遺体を見ただけでは大切な人の死を本当の意味で受け入れることは出来ません。
亡くなった直後の体は生きている時と同じように温かいですし、死後硬直も起こりません。
医師による死亡宣告を受けても、それをその場で受け入れることが出来るほど人の心は強くありません。
だから亡くなった人の姿を目の前にしても、ほとんどの人がそのことを現実として受け止められないのです。
お葬式には2つの意味がある
「お葬式に参列する」ということは、亡くなった人のことを偲ぶためだけに行くのではありません。
お葬式は「大切な人の死を、現実を通して受け入れる」という意味があります。
今では遺体の保存技術や顔の修復技術もかなり上がっています。
そのため葬儀社に葬儀を依頼すれば、亡くなっている人の姿が時間とともに変わっていくということもありません。
しかもその姿は、まるで眠っているようにも見えます。
ですから火葬されるまでは家族ですら、目の前の大切な人の死を本当の意味では受け入れられません。
でもお葬式に参列するということは、その姿がこの世からなくなってしまう(遺骨に変わる)ということです。
遺体葬でも骨葬でも、火葬をしないということは今の日本ではありえません。
つまりお葬式では火葬が行われるため、「大切な人の死が現実であるということを実感する」というわけです。
この事実は、お葬式に参列するすべての人にとって非常に残酷なことです。
でも大切な人の死が現実であることを認めない限り、人は悲しみから立ち直ることはできません。
だからこそ元気だったころの故人の遺影写真を見ながら、その死を現実のものとしてきちんと受け入れる必要があります。
そのためにお葬式の遺影写真は必要なのです。
遺影写真には故人の想いが込められている
遺影写真には、亡くなった人の想いが込められていると言われています。
あくまでもこれはスピリチュアルなことなので、「本当に想いがこめられているか」を科学的に証明することはできません。
でもこの世を去っていった人は、どんな方法を使ったとしても誰かに何かを伝えることは出来ません。
亡くなった人としては、お葬式に来てくれた人に対して「いままでありがとう」という言葉を言いたいのかもしれません。
永らく会えずにいた友人の姿が見えたなら「久しぶりだな!逢いたかったよ」と声をかけようとしているのかもしれません。
ただ残念ながらこうした言葉を、亡くなった人からかけてあげることは出来ません。
つまり遺影写真は「亡くなった人の想いを伝えるための大切なアイテム」といえます。
だからこそ遺影写真は、お葬式で必要と考えられているのです。
遺影写真の加工について
遺影写真では、「写真に修正をすることなく引き延ばしだけを行う方法」と「写真に修整などの加工をしたうえで引き延ばす方法」の2つに分かれます。
それぞれの方法にはメリットとデメリットがあり注意すべきポイントもあります。
無修正で引き延ばしだけを行う方法の場合
★メリット
この場合は写真に全く修正や加工をせず、祭壇のサイズに合わせて引きのばしだけの遺影写真のことを言います。
ですから「元気だったころに亡くなった人が実際に体験した一瞬の時間を切り取ったもの」と言えます。
★デメリット
遺影写真として使うわけですから、本人だけでなく背景も重要です。
そのためあらかじめ写真館などで写真を撮っておく必要があります。
もちろん写真館で取った写真以外でも、背景に問題がない場合は構いません。
ただし本人の服の色と背景の色が同じ場合は、本人の表情がぼやけてしまうためあまり良い遺影写真とは言えません。
修正・加工をしたうえで引き延ばす方法の場合
★メリット
本人の服装や背景も修正・加工することが出来るので、スナップ写真でも遺影写真として使えます。
本人の表情を重視したい場合は、この方法がおすすめです。
★デメリット
「服装を修正する」ということは、「首から下は他人」ということです。
遺影写真専門の写真屋では、和装・洋装だけでなく、スーツやワンピースなど様々なタイプの着せ替え用パーツが準備されています。
でもこれは、あらかじめモデルにそれらの洋服を着せたものを使っています。
そのため首から上は本人に間違いないのですが、首から下の衣装部分は他人の写真となります。
遺影写真選びのポイント
「亡くなった直後に写真を選ぶ場合」と「あらかじめ遺影写真を選ぶ場合」では、注意すべきポイントが違います。
亡くなった直後に写真を選ぶ場合のポイント
①表情が良いものを選ぶ
遺影写真はスナップ写真意外に、スマホや携帯電話のカメラで撮った写真も使うことが出来ます。
そのため焼き増しされていない写真であってもOK!
「これが一番本人らしい」という表情の写真を選びましょう。
②ピントがずれている物は避ける
遺影写真では、祭壇のサイズに合うように必ず引き伸ばしします。
そのためピントがずれている写真を引き伸ばすと、本人の表情までぼやけてしまいます。
③写真が全くない場合
「写真嫌いだった」「どれも正面を向いていない」などの場合は、顔写真付きの証明書からでも遺影写真を作ることはできます。
ただしやはりこれらの証明書の写真はサイズが小さいので、場合によってはぼやけてしまうかもしれません。
でも顔写真付きの証明書は、基本的に本人が確認できるように正面を向いたものを使います。
ですから「どうしても写真が見つからない」という場合は、運転免許証やパスポートなどを探してみてください。
あらかじめ遺影写真を選ぶ場合のポイント
①撮影10年以上たっている写真は避ける
終活がブームになったこともあり、あらかじめ遺影写真を準備している人も増えてきました。
でも人間ですから、加齢とともに見た目も変わります。
特に10年経つと、表情や体型にも変化が出ます。
ですからあらかじめ遺影写真を準備したとしても、2~3年ごとに見直してみることが大切です。
これをしておかないと、実際に遺影写真が祭壇に飾られた時「最近の印象と全然違う」「誰だかわからない」なんてことが起こります。
②サングラス・帽子もOK
普段からサングラスや帽子を愛用している場合は、遺影写真用の写真でもサングラス・帽子をかぶっても問題はありません。
もちろん事前に選んでおくのですから、自分の表情が一番よく見えるようにポーズを付けてみても大丈夫です。
ただしこのような場合は、あらかじめ周囲に「自分のお葬式にはこの写真を使ってほしい」と必ず手渡ししておくことです。
事前に準備していても、実際に残された家族がその写真の存在や保管場所を知らなければ意味がありません。
まとめ
遺影写真がお葬式で必要となる理由は2つあり、どちらもお葬式後の心のケアに重要な役割を持っています。
ですから「遺影写真を準備しない」という選択肢もありますが、「費用を節約したい」という理由だけならば準備するべきです。
お葬式は亡くなった本人のためのものでもありますが、残される人のためのものでもあります。
だからこそ本人らしさが感じられる写真を選ぶようにしていきましょうね。