曹洞宗の初盆の考え方は、仏教のほかの宗派とは少し違います。
準備に必要なものや初盆供養の流れも曹洞宗独特のものがありますので、もしも曹洞宗のお坊さんに供養を願いしているのであれば注意が必要です。
でも心配することはありません。
曹洞宗の初盆であっても、宗派の考え方やお作法、さらに準備のポイントさえ分かっていれば難しいことはありません。
そこで今回は「曹洞宗の初盆の飾り方」をポイント解説していきます。
初盆での曹洞宗の精霊棚の飾り方
では、初盆に曹洞宗ではどのような物を準備して、どのような飾り方をするのかから見ていきましょう。
準備するもの
・精霊棚(本式ではひな壇型ですが、最近は1段の台を代理とすることもあります)
・まこも(白い布で代用することもできます)
・本尊(ない場合は十三仏掛け軸を飾ることもあります)
・位牌
・浄板
・盛り飯(茶碗に盛り飯を作り、橋を中心に立てます)
・水の子
・浄水
・そうめん
・精霊馬など
・その他地域の風習で必要とされるお供え物
飾り方
①精霊棚を作る
②精霊棚にまこも(ない場合は白い布を使ってもよい)を敷く
③精霊棚の奥の中央に本尊をおく
④位牌を置く(※注1)
⑤位牌の前に浄板を置き、盛り飯を飾る
⑥浄板の周りに水の子や浄水、そうめんなどのお供え物を飾る
※注1
位牌が1本の場合は、本尊の前に置きます。
位牌が2本の場合は本尊の左右に置きます。
初盆での曹洞宗の準備の流れ
初盆は亡くなってから初めて迎えるお盆のことです。
ただし四十九日が明ける前にお盆が来た場合は、翌年が初盆となります。
初盆の準備は何かと大変です。
また通常の仏壇供養とは違うので、実際に精霊棚に飾りつけをする前には必ず仏壇の写真を撮っておくようにしてください。
そうしないと初盆が終わった後、どの位置にどの仏具を置けばよいのかわからなくなってしまいます。
ではここからは曹洞宗の初盆準備の流れをポイント解説していきます。
・仏壇の掃除をする
初めてのお盆を迎えるわけですから、仏壇もきれいな状態にしておくようにします。
一般的に仏壇は木製ですので湿気に弱いです。
ですから掃除をする時には天気が良い日を選びましょう。
水拭きした後もきちんと乾いた付近などで湿気が残らないようにすることも大事です。
・墓の掃除をする
仏壇だけでなく墓の掃除も必要です。
初盆当日にはお墓参りがありますが、その時に墓掃除をするのはよくありません。
「お迎えに参りました」という意味が初盆の墓参りにはあるので、気持ちよくお迎えするためにも事前に墓掃除は済ませておきましょう。
・お坊さんの手配
曹洞宗では初盆供養でお経をあげることを「棚経」といいます。
お盆の時期は初盆だけでなく通常の盆供養の依頼も多く、お坊さんが最も忙しい時期です。
ですから「少し早いかな?」と思うタイミングで手配するくらいが丁度よいですよ。
・食事・会食会場の手配
通常は初盆供養のあとに会食をします。
自宅で行うことが出来ない場合は、法要が出来る料亭や法要専門の貸しホールなどを利用します。
ただし盆時期には予約が集中するので、こちらも早めに手配するようにします。
・案内状を送る
日程と法要会場の場所が決まったら、参加者に案内状を送ります。案内状では参加者の人数を確認するために、出欠確認の返信ハガキをつけます。
これがあれば返礼品や食事が足りない(または余り過ぎる)ことが避けられます。
・返礼品・白提灯の準備
返礼品と白提灯を準備します。
どちらも法事専門業者や仏具店などで取り扱っていますので、担当者に相談をしながら手配を進めていくのがよいでしょう。
・精霊棚・お供え物の準備
初盆では精霊棚にお供え物を置きます。
お供え物は曹洞宗のお供え物のほかにも地域の風習によるものもあります。
直前になって慌てないためにも、地域の風習に詳しい方に事前に準備しなければならないものを教えてもらうと良いですよ。
曹洞宗の考え方から初盆の意味を知ることが準備をする上での基本
仏教式の初盆供養は、宗派によって違います。
それはそれぞれの宗派によって仏の世界の考え方に違いがあるからです。
もちろん曹洞宗には曹洞宗としての考え方があり、その考え方に基づいて初盆の飾り方にも違いがあります。
・曹洞宗は「坐禅の精神」を大事にする宗派
曹洞宗は座禅を大事にする宗派です。
坐禅というと「あぐらをかいて瞑想をする」ってイメージがありますよね?
このポーズはお釈迦様が悟りを開いたときの姿だとも言われています。
そして曹洞宗では坐禅の教えを大事にしています。
曹洞宗が考える坐禅は、「行うことによって体と心に安らぎが生まれる」と考えが原点にあります。
つまり坐禅を通して仏さまの教えを学ぶことが出来ると考える宗派と言えます。
・曹洞宗の教え(教義)とは?
曹洞宗では、人がこの世に生まれる(生を得る)ときには仏様の心を与えられてくるといいます。
仏様の心のことを曹洞宗では「仏心(ぶっしん)」といい、そこには自分の命の大切さだけでなく他人への思いやりの心も含まれているといいます。
ただ人は成長するにしたがっていつの間にかにその仏心を忘れてしまいます。
もちろん良いことがあれば「ありがたい」と素直に思うことが出来ますが、嫌なことがあると誰かのせいにしてしまったり恨みや嫉妬の感情が現れます。
でも仏心を常に意識していればそのようなことは起こりません。
何しろ「仏様と同じ心=仏心」というのですから、恨みや妬み・嫉妬、悪意などの感情は本来生まれないはずなのです。
でもなかなかその境地を理解するということは現代社会では難しいですよね?
だからあなた自身も「悩む」「不安」「苦しい」という感情をかんじるのです。
そこで曹洞宗では坐禅を通して生まれた時に与えられた仏様の心を改めて自覚をし、日々の生活で起きる一つひとつのことを大切にするように心がけることを教えとしています。
こうした日々の心がけを続けることによって、心と体は穏やかな状態になり生まれた時に与えられた仏心の本当の姿(仏の姿)が見えてくるようになります。
これが曹洞宗の考え方の基本です。
・曹洞宗の焼香の仕方
実は宗派によって焼香の仕方も違います。
回数だけでなく作法も違いますので、初盆供養に参加するときには注意してください。
曹洞宗の場合、焼香は2回です。
1回目は主香とし、2回目は従香として行います。
またつかんだ粉のお香(抹香)を焚く(香炉の火種の上に乗せる)作法は、1回目と2回目で違います。
1回目の焼香は額の近くに持ってきた後火種の上に乗せます。
2回目は粉のお香をつかんだら、そのまま香炉に置きます。
・曹洞宗の線香の立て方
線香の立て方も、宗派によって本数や立て方に違いがあります。
自宅で行う(または人数が少ない)場合は基本的に線香を使って焼香します。
曹洞宗の場合は、1本線香となります。右手で線香を持ったら火をつけ、左手を扇のようにしてあおいで火を消します。
火が消えたら香炉にまっすぐに立てます。
お作法に厳しい宗派なので、くれぐれも初盆法要のときに間違えないようにしてくださいね。
・曹洞宗が考える初盆の白提灯の意味
お盆には玄関先や鐘楼棚の前に提灯を置きます。
でも初盆の場合は、一般的にどの宗派・地域でも白い提灯を使います。
この白い提灯の意味も宗派によって考え方が違います。
曹洞宗では白い色には「清浄」「無垢」という意味があります。
何しろ初めてのお盆なのですから、迎える側にも清らかな心を持つということが大事だと考えます。
その意味から曹洞宗では「清浄」「無垢」という意味を持つ白い提灯でお迎えするのがふさわしいと考えています。
まとめ
曹洞宗の初盆の準備と飾り方、さらに当日を迎えるまでの流れをポイント別に解説してみましたが参考になったでしょうか?
初盆は仏教行事だけでなく地域の風習・慣習とも関係します。
ですから身近な人で相談できる人がいない場合は、地元の法事専門業者や仏具店などに相談するとアドバイスをもらうことが出来ますよ。