生前整理にはいろいろな種類があります。
例えば「身の回りの物を片付ける」ということも生前整理になりますし、相続など法的な手続きを済ませることも生前整理の一つになります。
ただし内容によって「専門家に相談すべきこと」と「自分でもできること」に分かれます。
そこで今回はお金をかけずに自分でできる生前整理とその方法をポイント解説します。
生前整理を自分で始める前に考えてほしい事
生前整理の言葉の反対側にあるのが「遺品整理」でしょう。
遺品整理はその名の通り、あなたが亡くなった後あなたの持ち物を家族が整理することを言います。
これに対して同じ作業であっても元気なうちに自分で作業を進めることを「生前整理」と言います。
生前整理には様々な方法がありそれぞれにポイントがあります。
でも生前整理をする前に考えてほしいことが2つあります。
・誰のための生前整理なのかをはっきりさせよう
生前整理というと「良いことだ」という人もいれば「死を前提にしているみたいでいやだ」という人もいます。
これは生前整理の相談を受けると相談者の家族や身内から出てくるセリフの代表的なものです。
生前整理を肯定的に考えている家族・身内は、いざとなったときに何をどう処理すればよいかわからなくなるのが困るという意見が多いです。
特に物にあふれている古い実家に親が一人暮らしをしているケースではよくあります。
確かに一人暮らしの場合は、住人が亡くなるとその家の整理や片付けは家族や身内が引き受けなければいけなくなります。
これはとても大変な作業ですし、物の量が多ければ処分費用だけでも相当な金額になります。
ですからこのような状況になる前に親自ら「生前整理をする」と言い出してくれれば、それは子供や家族としてはありがたいことなのです。
ところが若い世代でも親が生きているうちに自分の身の回りのことを整理することを嫌がる人はいます。
このような場合は「これから先の暮らしもあるのだから、元気なうちにいろいろなものを整理する意味がどこにあるの?」と逆に反発するケースが多いです。
でもこうした反応が起こることは仕方のないことです。
親子であってもそれぞれ考え方は違います。
また相手に対する思いや老いていく親の姿を見守る子どもの心も揺れ動くのです。
だからそのような反発にあったとしても、それは自然なことなのだということをまず理解してあげてください。
でも本当の問題は相手にあるわけではありません。
そもそもあなたが今からやろうとしている生前整理は「何のため?」ではなく「誰のため?」なのでしょうか?
あなたの中ではっきりと「○○のために生前整理をする」と言えるのであれば、それを伝えることで誤解が解けることはよくあります。
ですからまずは「誰のための生前整理なのか」の答えをあなた自身がしっかりと持つようにしてください。
生前整理は少しずつ!
あなたが生前整理をする理由が「残す家族のため」であれば、まずはあなたの身の回りの整理から始めてみてください。
いきなり「さあ、片付けるぞ!」と意気込むのは失敗のもとです。
私の経験上ですが短期集中型で進めてしまう人は、ほとんどの人が途中で断念してしまっています。
それって疲れてしまうからなのです。
考えてもみてください、あなたが生きてきた証があなたの周りにある物たちなのです。
つまりあなたの人生が形となっているのが、あなたの家の中にある物たちなのです。
その一つひとつに向き合っていく作業が「身の回りの整理」なのです。
だから物を処分するにしても、一つひとつの思い出に向き合い今必要なものなのか、それとも不要なものなのかを判断していくことなのです。
これって途方もなく大変なことだと思いませんか?
ですから物の片づけは、あなたがいつも家の中にいる場所(定位置)から始めます。
はじめにいつものようにあなたの定位置に座ってみてください。
その場所から見える物をまず整理します。ここでは物を捨てるという考え方はいったん横に置き、物を整理すると考えてください。
整理するうちにゴミなどが見つかったらそれはきちんと処分しましょう。
これだけでもゴチャゴチャとしたスペースがすっきりとします。
この作業をし終えた後、もう一度いつも通りに座ってみてください。
その場所を見た時に居心地が良いと思えたなら、一つ作業は終了です。
次の作業は、先ほど終わった場所のすぐ横の部分になります。
「この部屋の柱まで」のように大きくスペースをとってしまうと失敗します。
せめて両手を広げた範囲内までが無理のない作業範囲です。
作業が終わったら、またいつもの位置に座り周りを確認してみます。
大事なことは「安心できる場所を確保してから進めること」です。
すべてのものをいきなり変えてしまうと、誰だって不安になります。
でも必ず安心できる場所があると分かれば、疲れた時にそこに戻ってくればまた元気になります。
それにいつも座っている場所の周りにある物は、最後まで手放すことが出来ないものが多いのです。
そこに目を向ける習慣をつけるということは、心の整理の第一歩なのです。
物を整理する・処分すると考えるから手を付けたくなくなるのです。
特に普段からいる場所はあなたが最も安心できる場所であり、思い出が詰まった場所なのです。
その場所に目を向けることで心が前向きになり、これが習慣になることでどんなものに対しても心を整理する時間を持つ余裕が持てるようになります。
・ゆっくりと変化することは家族も安心する
普段の掃除と年末の大掃除の違いを考えてみればよくわかります。
普段の掃除は、あまり変化がないので物の位置が変わっていたりしても意外とあまり気が付かれません。
ところが大掃除のような大掛かりなものになると、見た目の印象は全く変わりますよね?
でも年末の大掃除のときには、「1年の汚れを落として気持ちよく新年を迎える」という目標が共通していますよね?
だからいろいろなものを処分したり移動したりしても、誰からも反対されないのです。
つまり生前整理を勢いで進めてしまうということは、年末の大掃除と同じことなのです。
そこに共通した目標が家族の中であればだれからも反対されませんが、あなたの気持ちの中だけでその目標があるのであればそれは家族にとって不快にしか思えません。
あなたが本当に家族のためを思って生前整理をしたいのであれば、時間をかけてゆっくりと物事を進めるということだけ守ればよいのです。
そしてそれを続けるだけです。
そのうち家族の方からあなたのその行動の意味を尋ねられるはずです。
その時に「自分で整理できるうちに少しでも家の中を整理しとかなくちゃね?」とでも答えてください。
そうすれば家族少しずつあなたの手伝いをしてくれるようになります。
手伝うことによって子どもや家族はあなたの本当の気持ちを理解していきます。
そして最後にはあなたの子どもや家族があなたの最大の理解者となってくれるのです。
生前整理をする理由がはっきりしているなら家族に伝えるべき!
生前整理を実際に行っている人の中には、これからの生活のために不要なものをすべて処分し物にとらわれないシンプルな生活を手に入れるために生前整理をする人もいます。
この場合は「生前整理をした後に○○な暮らしがしたい」ということとがはっきりしています。
このように生前整理をする理由が自分自身の中ではっきりとしている場合は、その意思を周りにもきちんと伝えて理解してもらうことが成功のポイントです。
家族と同居しているのであれば、ある日突然あなたが家の中のものを整理し始めたら「何事か?」とびっくりするはずです。
もちろんあなたが一人暮らしであったとしても、あなたの周りにはあなたのことを大切に思ってくれている家族や友人たちがいるはずです。
その人たちがあなたの突然の行動を見れば、やはり同居の家族と同じような反応をするはずです。
あなたのことを大事に思っている人の中には、あなたの真意がわかったとしてもその行動に対して激しく反対する人もでてきます。
でもそれはあなたのことを大切に思っているからこそだということをわかってください。
あなたが大切にしているものを突然処分するという行動は、受け取る側によっては「あなたがいなくなってしまう=あなたの死を連想する」となります。
だから反対してしまうのです。
でもそうではないということをあなたがきちんと説明して説得すれば、あなたの行動がこれから先の人生のためであるということを理解してくれるはずです。
理解してくれればあなたの手伝いをしてくれます。
なにしろあなたの人生と同じだけの荷物があなたの家の中にはあるのですから、手伝ってくれる人が一人でも多いということはとてもありがたいことです。
それが手に入るわけなのですから、あなたにとっても損はないはずですよ?
まとめ
生前整理というとどうしても難しく考えてしまいがちですが、本来はむずかしいことなんてひとつもないのです。
でも「誰のためにやるのか」または「生前整理をした後にどんな暮らしをしたいのか」がはっきりしていないと絶対に成功しません。
「なぜ整理をするのか」と聞かれた時に「○○のためにやる」とあなたがはっきりと答えられるのであれば、時間はかかっても必ず周りは理解してくれます。
「生前整理をして身軽になって今よりももっとハッピーな人生を送りたい」というのであれば、きっとその想いに共感してくれる人が出てきます。
でもその答えがまだあやふやなうちは、生前整理をするのは少し待ってみましょう。
生前整理を成功させたいのであれば、始めるタイミングをちょっと先送りする勇気を持つことも時には大事なことです。