終活を進めていると、時々「本当に事前にお葬式の準備をしていて得をするのかしら?」と思う事ってありませんか?
なにしろエンディングノートが爆発的な人気となった時に初めて「終活」という言葉が生まれたようなものですから、実際には終活そのもののことをよく分からずに進めているという人も多いはずです。
でも実は終活をすることによって、生きている間に得をすることもたくさんあるのです。
知っているようであまり知られていないのがお葬式に関することなのですが、知らないのと知っているのでは今の暮らしの中でも大きな違いがあります。
そこで今回は「終活に役立つお葬式の節税対策」についてわかりやすく解説していきましょう。
終活で覚えておきたいお葬式の節税!
お葬式の計画についてはエンディングノートなどで「あなたの希望」という項目がありますが、お墓については意外とあまり詳しく書かれていないのをご存知ですか?
その理由の一つは、「エンディングノートを発行しているのがお葬式屋さんだから」です。
書店などで販売されているエンディングノートは、お葬式だけでなく病気のことやお墓のこと、遺産の相続や遺品の整理など様々な項目が細かく記入できるようになっています。
ただしあまりにも幅広いために、「実際に購入したもののまだ1ページも記入していない」という人が多いのがこのパターンです。
これに対して「お葬式」という人生の締めくくりについて特化したエンディングノートの多くは、資料を請求すると無料で送られてくるものがほとんどです。
こういったものの多くは葬儀社もしくは葬儀関連業者が発行しているため、無料で手に入れることが出来ます。
でもここで問題なのは、「人の死に関わる物事はお葬式だけでは済まない」ということです。
相続税は今や他人ごとではない!今では一般家庭でも課税対象になる時代
相続税に関する法律は2015年に改正され、それ以前に適用されていた基礎控除の対象が大きく変わりました。
簡単に言ってしまえば「相続額が低くても課税対象になる法律に変わった」ということです。
2014年までの法律では、よほど財産がある家庭でなければ相続税のことで悩むことはほとんどありませんでした。
なぜなら基礎控除の対象となるのが「5000万円+法定相続人の数×1000万円」とされていたからです。
例を挙げてみるとすぐにわかります。
例えば80歳男性が亡くなった場合、妻と4人の子どもたちがいたとします。
この場合法定相続人の人数は全部で5名ですから、「5000万円+5名×1000万円」となりますよね?
つまりこの例だと相続の控除の対象が1億円ということになります。
さすがにこれだけ高額な遺産相続が必要となる家庭は、「一般家庭」とは言い難いですよね?
ところが改正された現在の法律では、基礎控除の対象額がグッと下がっています。
実は現在の法律では「3000万円+法定相続人の数×600万円」となっているのです。
つまり先ほどの例を現在の法律であてはめてみると、「3000万円+5名×600万円」ですから6000万円以上遺産がある場合は相続税の納税対象となるのです。
こうなってくると、ギリギリ一般家庭の範囲内に入り込んできます。
さらに問題なのが、急激に深刻化している少子化の問題です。
かつては1家庭当たりの子どもの数も多かったので法定相続人の数も増え、課税対象となる金額もかなり高くなっていました。
でも少子化によって法定相続人の数が少なくなっているのが現状ですから、問題はかなり深刻です。
もしも法定相続人が子供2人のみだったとしたら、4200万円以上の遺産については相続税の課税対象になってしまうのです。
こうなってくると、相続税も他人ごとではなくなってきます。
お墓は節税対策になるはホント?ウソ?
昔から「お墓を建てると節税対策になる」という噂はよく耳にしてきたはずです。
でもこの噂は「全くのウソ」ではないですが「全部ホント」でもないのです。
実はお墓が相続税の課税の対象とならないのは、「生前に墓を建てた場合のみ」なのです。
ですから「生前にお墓を建てれば節税対策になる」というのは、ウソではありません。
ただし問題なのは、「お墓の購入代金を生前に完済しているか」なのです。
お墓の購入も、かなりの高額になります。
そのためローンでお墓を購入する人がかなり多いです。
でも月々の支払額を出来るだけ抑えたいと思えば、どうしても長期間のローンを組むことになります。
とはいえ死んだ後に必要になるお墓のことですから、「早めに申し込んで購入しておけば問題がない」と考えてしまうはずです。
でもそれこそが、お墓の大きな落とし穴です。
実は相続税の対策として有効なのは、「生前にお墓にかかる費用をすべて支払い終わっていること」が条件なのです。
つまりローンが残っている状態では、いくら生前に相続税対策として建てたとしても何の意味もないのです!
だからこのことを知らずにいると「生前にお墓を買ったのに節税対策にならないじゃないか!」ということになります。
そもそもお墓は財産ではない!
「どうして生前にお墓を建てると相続税の対象にならないのか?」という疑問が浮かんできたと思いますが、それにはきちんとした理由があります。
お墓は確かに財産です。
でも財産にも様々な種類があり、その中でも「祭祀財産」と呼ばれるのがお墓です。
これは民法で「非課税対象財産」とされているものです。
そのためお墓を建てた時の費用は、遺産から差し引いて計算することが出来ます。
そのため相続税の節税になります。
ところが遺産であるはずのお墓のローンが残っているということは、実際のお墓の所有者はローン会社となります。
つまり相続税の計算をする段階では、いくら墓石が経っていようとも財産とはみなされないのです。
つまりお墓を財産として扱ためには、墓の所有権を完全にあなたのものにするということが必要なのです。
だからこそ生前に墓を建てるだけでは節税にならないのです。
実は仏壇や位牌も相続税の対象外
お墓と同じくお葬式の後に購入することが多いのが、仏壇と位牌です。
実はこれも生前に作っておくと「祭祀財産」とみなされるため、相続税の対象外となります。
日本のお葬式の多くが仏教式で行われるため、仏壇がない家はお葬式の後に改めて購入することがほとんどです。
でもこれも相続税対策としてはもったいないポイントなのです。
位牌は生きているうちに作っておいた方が絶対に得!
日本のお葬式の多くが仏教式で行われるということは、位牌も必要になるということです。
位牌といえば、お葬式の費用の中でもグレーゾーンといわれる代表的なものです。
なぜならお坊さんにお葬式を頼むと、供養に対するお布施以外に「位牌の戒名代」も請求されるからです。
どうやら仏さまの世界にもこの世の世界と同じようにランク(位)があるらしく、そのランクを表すのが戒名の下につけられる文字です。
もちろん宗派によって戒名の付け方にも決まりがあるのですが、多くの宗派では戒名の位はお布施の額に応じて決まります。
つまり「いい戒名を付けてください」というセリフは「ランクの高い戒名を付けてください」といっているのと同じです。
生前に何の修行もしていない人に対してランクの高い名前を付けることは出来ません。
でも生前にできなかった分、お布施(戒名代)をすればランクの高い名前を付けることもできます。
これが「戒名代がグレーゾーン」といわれる所以です。
こうならないためにも、せっかく節税するのであれば生前にあなたが納得できる戒名を貰い、位牌まで準備してしまえばよいのです。
実は生きているうちに位牌を作った方が長生きするといわれている
戒名は死んでからもらうものと思われがちですが、それは違います。
生前に貰う戒名は「逆修戒名」といい、生前に位牌を作ることを「逆修牌」といいます。
逆修牌にかかれる文字は、人の血液を意味する朱色で書かれます。
そのため「逆修牌を持っていると長生きする」といわれています。
その証拠に日本と同じく位牌に対する供養の習慣が残っている中国や韓国では、早めに逆修牌を作り「長生きのためのお守り兼財産」として仏壇に安置しています。
ちなみに逆修牌の朱色は、亡くなった後に落とすことで、正式な位牌となります。
まとめ
相続税の課税対象が法律の改正によって変わったために、これまで縁がないと思われてきた家庭でもきちんと相続税対策をしておかないといけない時代になっています。
大切な家族のための終活なのですから、あなた自身で経済的な負担を少しで解決しておきたいのが本音ですよね?
そのためにはあなた自身がお葬式にまつわる税金の仕組みをよく知り、賢く節税しながら終活を進めていくのが一番です。