ここ数年「孤独死」という言葉を耳にすることが増えています。
ニュースやテレビ番組でも1年のうちに何度かは目や耳にします。
すでに社会問題にもなっている孤独死。
でもその現実は、意外と身近なところにも潜んでいます。
「孤独死とはどういうことなのか」
今回はそのことについてわかりやすく説明していきたいと思います。
孤独死とは!?
孤独死という言葉の認知度は高まっていますが、実のところ「孤独死」というものに明確な定義はありません。
「孤立死」「独居死」と呼ばれるのも、いわゆる孤独死と同じ意味にあたります。
とはいえいずれにしても共通して言えるのは、「看取られることなく亡くなること」といえます。
「看取られることなく亡くなる」ということは「明確な死因が分からないまま亡くなっている」とも解釈されるため、警察庁の『死因統計』では「変死」として扱われます。
変死ということになると、死因を特定するために検案が行われます。
そのため亡くなっていることが発見された時点で警察署に連絡し、遺体を検案し死亡日や死因を調べます。
そのため孤独死の場合は「死亡診断書」ではなく「死体検案書」が発行されます。
・おひとり様が病院で亡くなることは「孤独死」とは言わない
おひとり様の終活ではよく「孤独死」がテーマになります。
でも「看取る人がいないと孤独死になるのか?」というと、そうではありません。
現在の日本では、病院などのような医療施設で死を迎える人の方が多いです。
医療施設の場合、その時が来た時に必ず誰かが看取ります。
もちろん友人や知人が看取ることもありますが、施設のスタッフや医療関係者が看取ることもあります。
いずれにしてもこのような場合は「孤独死」とは言いません。
確かに家族や親族などの血縁関係者が立ち会わない死は「孤独な死」と表現されることもあります。
でも亡くなる本人が最後の瞬間まで孤独を感じていなければ、それすらも間違った表現といえます。
つまり「おひとり様だから孤独死になる」とは言えないのです。
・コミュニティーが希薄な地域に住んでいるほど孤独死が起こりやすい
これまでは「一人暮らしの高齢者が孤独死になりやすい」と考えられてきましたが、現在では様々な要因が複雑に絡み合っておこるのが「孤独死」と言われています。
このことが一気に注目されるようになったのは、1995年におきた阪神・淡路大震災でした。
未曾有の被害が起こり多数の犠牲者を出した阪神・淡路大震災でしたが、地震によってそれまで住んでいた家やコミュニティーが破壊されてしまったことによる孤独死が多発しました。
そもそも仮設住宅での生活が長期間に及ぶ大規模災害の場合は、住み慣れた場所から遠く離れた仮設住宅で避難生活を送ることになります。
働き盛りの世代であれば家を建て替えて新たな生活を始めるということもできますが、高齢者の場合はそう簡単にはいきません。
さらに住み慣れた環境であれば近所に住む高齢者同士が助け合って生活することもできますが、仮設住宅ではコミュニティーそのものがなくなってしまうため、それまでのような暮らしをすることが出来なくなります。
そのため何か異常があっても助けを呼ぶことが出来ず、そのまま亡くなってしまうということが起こります。
・都会に住む高齢者に忍び寄る孤独死の影
都会に住む高齢者も、孤独死の危険があります。
例えば建物の老朽化を理由に、永らく住んでいた賃貸受託からの撤去を言い渡された高齢者の場合を例に挙げてみましょう。
年金暮らしをしている高齢者の場合、新たに部屋を貸してくれる家主を見つけるのは非常に難しいです。
家主側としては「孤独死のリスク」も考えなければいけませんし、「家賃滞納のリスク」も若い世代と比べて高くなります。
ですから出来るだけ高齢者に部屋を貸すリスクは避ける傾向にあります。
もちろん借り手側の条件が付けば、さらに物件探しは難しくなります。
受け入れを引き受けてくれる物件が住み慣れた地域内にあればよいのですが、必ずしもその希望が叶うとは限りません。
やむなく住み慣れた土地を離れ、新たな場所で生活を始めなければならない高齢者もたくさんいます。
高齢者が加増の助けを借りずに新しい地域で暮らしていくためには、やはり地域とのコミュニケーションが必要になります。
積極的に地域の輪に入り込める人であれば良いですが、高齢になるほどどうしても新しいことを始めることが億劫になりがちです。
そのため引きこもりがちになり、地域から孤立してしまいます。
このように都会でもコミュニティーが希薄になると、孤独死を引き起こすリスクが高まります。
だから孤独死は「一人暮らしの高齢者」だけの問題ではないのです。
孤独死は身近なところに潜んでいる!
配偶者の死がきっかけとなって孤独死してしまうケースもあります。
実際に私も、過去に何度かそのような現場に立ち会ったことがあります。
でもその多くが「老老介護の末の孤独死」でした。
老老介護も、現在の日本が抱える深刻な問題の一つです。
子どもはいるものの遠く離れた場所に暮らしており、高齢の夫婦二人で暮らすというケースです。
この場合どちらかが介護が必要になると、高齢の配偶者がその介護にあたります。
そのため老老介護という問題が起こります。
介護の末に配偶者が亡くなると、高齢者の一人暮らしになります。
介護をすることによって地域とのコミュニケーションの時間が奪われてしまい、いつの間にかに孤独な独り暮らしをすることになります。
その結果、誰にも看取られることなく亡くなってしまうというのが「老老介護の末の孤独死」の現実です。
では近くに家族が住んでさえいれば、配偶者を失くして一人暮らしをすることになった高齢者の孤独死は亡くなるのでしょうか?
・お葬式が終わった後ほど注意が必要
これは私が実際に体験したある高齢男性Aさんの孤独死の話です。
Aさんは、奥さんと2人暮らしでした。近くには別居してはいますが、子ども達家族も済んでいます。
奥さんが病気になってしまい、2カ月余りの闘病生活の末病院で亡くなりました。
入院中は「できるだけそばにいたい」というAさんの希望もあり、ほぼ毎日のように家族が病院までAさんを送迎し最期の瞬間も立ち会うことが出来ました。
お葬式が終わり四十九日法要も終わったある日、なんとなくAさんの様子が気になりAさんの自宅を訊ねました。
いつものように笑顔で迎えてくれたAさんですが、私の顔を見るなり涙をにじませて「会いたかったよ」といいました。
私自身は、正直言うとその言葉に戸惑いました。
実はボランティアとしてAさんと接していただけで、それほど親しく付き合いがあるというわけではありません。
そこで話を聞いてみると、四十九日が終わると子どもたちがほとんど家に来ることがなくなったのだといいます。
確かにAさんの子供たちにも仕事があります。
だからAさんの奥さんが入院していた時も出勤前にAさんを病院に連れていき、帰宅時に病院によってAさんを自宅に連れて帰るという生活をしていました。
お葬式が終わった後も中陰法要のために1週間に一度は自宅に集まっていたため、Aさんも奥さんがいない寂しさはあるものの自宅に人が集まることが何よりの支えだったそうです。
とはいえ四十九日法要が終わると自宅に人が集まることも無くなり、時々顔を見せに子どもたちが自宅に立ち寄る程度になってしまったのです。
でもAさん自身も「子供たちにも生活があるから迷惑はかけられない」と黙って一人で寂しさに耐えていたのでした。
そんなAさんの家族から電話があったのは、それから数週間後のことでした。
電話の内容はAさんの訃報。
孤独死でした。
幸い発見が速かったため、遺体が腐敗するようなことはありませんでした。
ただ真新しい仏壇がある部屋のこたつの中で、眠っているような状態で見つかったのです。
これが私の体験した「もう一つの孤独死」の実態です。
高齢者だけが孤独死するわけではない
孤独死というと「高齢者」というイメージがあるかもしれません。
でも最近では「高齢」と呼ぶにはまだ早い年齢でも、孤独死してしまうことがあります。
高齢者以外で孤独死をしてしまうタイプには3つあります。
もしもあなた自身やあなたの家族が当てはまるのであれば、早めに対策を取っておくようにしてください。
・熟年離婚で一人暮らしとなった男性
最近では長く連れ添ってきた配偶者と熟年離婚をする人も増えています。
女性の場合は孤独死の危険はそれほどないのですが、男性の場合はリスクが高まります。
特に「仕事一筋で家事は一切できない男性」の場合は、孤独死の上に発見が遅れるリスクがあります。
何しろ家事が一切できないわけですから、最も面倒な食事も簡単に取れるインスタント食品やコンビニのお弁当などが中心になります。
栄養が偏る上に健康状態も悪くなります。
さらに定年直後の熟年離婚の場合は、外とのつながりが一切なくなってしまいます。
身なりを気にする必要もありませんし、好きな時におきて好きな時に寝ても誰にも気兼ねする必要がありません。
そのため部屋の中はゴミ屋敷化し、だんだんと周りから孤立していくようになります。
そのため孤独死してもすぐには発見されず、臭いなど異変を感じた住人からの通報によって遺体が発見されることも少なくありません。
・何でも自分で解決しようとしてしまう女性
「おひとり様」という言葉が定着して以降、中年女性の一人暮らしも社会的に受け入れられるようになってきました。
そんな女性の場合は「なんでも一人で解決しなければいけない」と思い込みがちです。
そのため多少の問題があっても、「自分がいま我慢すれば何とかなる」という人が多いです。
このようなタイプの女性も、孤独死する傾向があります。
・無職で生活が苦しい人
景気が一向に回復しない今、突然リストラされたり長年勤めていた会社が倒産してしまうということも珍しくありません。
それまで順調に歩んできたはずの人生設計は脆くも崩れ去り、再就職先も年齢によってはかなり厳しくなります。
「とにかく仕事が見つかるまでは…」と、考え得る限りの節約をします。
本来であれば最も節約してはいけない「健康管理に関する費用」ですら、こうした状況では切り詰めようと考えます。
そのため「体調が悪くても病院に行かない」「健康保険に未加入のため病院を受診できない」などが起こります。
その結果として孤独死を引き起こすリスクが高まります。
まとめ
孤独死は「高齢者の一人暮らし」だけの問題ではありません。
どんな人にでも孤独死のリスクはあります。
でも孤独死の実態や原因、なりやすい傾向が分かれば対策することは出来ます。
もしもあなたやあなたの家族に思い当たることがあったなら、ここで一度生活を考え直してください。
今からのあなたの行動が、あなたやあなたの大切な人を孤独死から守ることにつながります。