「親の介護」は親の終活をする上では切っても切れない問題です。
日本人の平均寿命も男性80.93歳、女性は87.14歳と過去最高を更新していますから、元気なうちから子供が親の介護について考えてかなければならない時代が来たとも言えます。
ただ漠然と親の介護にかかる医療費といっても、「どれだけの費用」「どこまでの期間」を考えておけばよいのかわからないというのが本音なのでは?
確かにあまりにも漠然とし過ぎているので、イメージをするのは難しいでしょう。
でも日本では高齢者の介護に必要な医療費を抑えるための公的制度があります。
そのためこの制度を利用すれば、親の介護の負担もかなり抑えられるようになります。
そこで今回は親の終活をする上で知っておきたい「医療費の公的制度」についてわかりやすく解説。
知っているだけでも安心できる医療の公的制度とは?
親の介護にかかる費用は年々増加傾向!
親の老後にかかる費用で一番気になるのは、やはり医療費の問題ではないでしょうか?
厚生労働省によると、現代人の医療費は年々上昇傾向にあることが分かっています。
しかも日本人の平均寿命は男女ともに80歳以上となっているため、高齢期における医療費は他人事ではなく身近な問題といえます。
ただ漠然とし過ぎていて見えづらくなっているのが、高齢期における医療費。
そこでここからはもう少しわかりやすく解説していきます。
・年齢によって1年あたりの医療費は違う
厚生労働省による「国民医療費の概況」を見てみると、平成26年度の人口一人当たりの医療費が65歳以上で74万1900円となっています。
これは1か月あたり約6万円の医療費がかかっていることが分かります。
ただ年齢によっても1人当たりの医療費に違いがあります。
同じ統計から70歳以上の医療費を見てみると1か月あたり約7万円、さらに75歳以上になると約7.6万円となります。
・民間の医療保険に入っていてもあまり意味がない?
少しでも医療費の負担を減らすために民間の医療保険に加入している人も多いですよね?
でも民間の医療保険には様々な制限があります。
たとえば年齢が高くなってからでは加入できない保険もありますし、年齢が高くなるほど月々の保険料が高くなる保険もあります。
しかももう一つの問題が「同じ病気で入退院を繰り返す場合」です。
民間の医療保険は、保険商品によって保障の内容が変わってきます。
月々の保険料が高いほど保証が手厚くなる傾向がありますが、そのような保険商品であっても「同じ病気で入退院を繰り返す場合」や「入院期間が長期になる場合」は保証の対象とならない場合もあります。
これではせっかく高額な医療保険に加入していても、実際には手出しの方が大きく保証が薄くなってしまいます。
そのため親の医療保険は「補償内容の定期的な見直し」が大切になります。
・75歳以上でも収入次第で医療費の負担額は変わる
65歳以上を「高齢者」と位置付けている今の日本ですが、同じ高齢者でも74歳未満と75歳以上では医療費の自己負担額が違ってきます。
高齢者の医療公的制度には、医療費の負担額を軽減させるものがあります。
こうした医療制度を使えば医療費の自己負担額を抑えることが出来るのですが、現役並みの収入がある場合には自己負担額は3割負担となります。
あくまでも年金生活をしている高齢者の医療費軽減を目的とした制度なので、収入によっても負担額に違いがあるということを知っておく必要があります。
・親の介護の前に知っておきたい2つの公的制度
親の医療費を少しでも抑えるには「後期高齢者医療制度」と「高額療養費制度」の2つについて知っておく必要があります。
高額療養費制度は、高齢者でなくても医療費を抑えることが出来る公的制度です。
年収や年齢によっても内容は異なりますが、「入院することになった」「長期療養が必要になった」という場合にはぜひ利用しておきたい制度でもあります。
後期高齢者医療制度は、75歳以上(障害認定を受けている場合は65歳以上)の医療費の自己負担額が抑えられる公的制度です。
こちらも収入によって自己負担額に規定がありますが、利用することによって月々の医療費を抑えることが出来ます。
70代になると外来診療を受ける回数が増えます。
その分、月々の医療費も増えてきます。
ですから親の老後の医療費を考えるのであれば、この2つの制度を上手く利用して老後に必要となるお金の計画を立てることが大切になります。
介護の公的制度その①【後期高齢者医療制度とは?】
後期高齢者医療制度は、70代以上の医療費の自己負担額を軽減させる公的制度です。
この制度を利用すると、74歳までであれば月々の医療費の自己負担額が基本的に2割になります。
さらに75歳以上になると自己負担額が基本的に1割になります。
★現役並みの収入がある場合は自己負担額が変わる
現役並みに収入がある場合は、70歳以上であっても医療費の自己負担額は3割になります。
ちなみに「現役並みの収入」とは単身世帯の場合は年収383万円以上(月収約32万円)、夫婦の場合は年収520万円以上(月収約43万円)となります。
★2020年以降軽減率が変わる
現在保険料の軽減率が最大9割となっているのですが、この軽減率はすでに見直し案が出ています。
2020年以降は段階的に引き上げられ、最終的には5割まで引き上げられることになっています。
ですからこれから老後を迎える世代は、親の医療費はもちろんですが自分たちの老後の医療費も大きく家計に負担となってくることを考えておかなければいけません。
介護の公的制度その②【高額療養制度とは?】
高額療養制度というのは、一か月の医療費が上限額を超えた場合にその差額を国が支給する公的制度のことを言います。
ここでカギとなる「上限額」には、年齢や所得によっても細かく規定があります。
とはいえこの制度を移用すれば、入院や長期治療が必要になった場合の医療費を少しでも抑えることが出来ます。
★高額療養制度を利用する場合の注意点
高額療養制度は、1か月あたりの医療費の上限が肥えた場合に国が助成をしてくれる制度です。
医療費の計算方法は1日からその月の最終日までを1か月とします。
実はこの「1か月」の解釈がよく間違えるポイントになっています。
たとえば9月に20日間の入院をすることになったとしましょう。
入院日が9月1日であれば退院日が9月20日になりますので、9月の入院にかかった費用が限度額を超えた場合は高額療養制度の対象になります。
ところが入院日が9月20日で退院日が10月10日となると、高額療養制度を申請する場合には「9月分」と「10月分」で計算しなければいけません。
いずれの月も限度額を超えている場合は対象となりますが、それぞれの月が限度額を超えていない場合は対象になりません。
★高額療養制度で対象となるのはあくまでも保険適用費用のみ
入院にかかる費用には、「保険適用内」と「保険適用外」があります。
保険適用内の費用としては「治療費」「ベッド代」などがあります。
ただ入院中の食事代や差額ベッドを利用した場合などは、これらにかかる費用は保険適用外となります。
もちろんテレビカード代も保険適用外となります。
ですから入院にかかった費用の総額が対象になるのではなく、あくまでも保険適用範囲内の費用が公的制度の対象となるというわけです。
まとめ
親の介護で必要となる医療費も、公的制度を上手く利用しながら計画すれば家計に大きな負担がかからないような仕組みになっています。
ただ高齢者の医療費に関する制度は見直しも多く、定期的に情報をチェックしていくことが大切です。
まずは民間の医療保険の見直しや親の収入などのチェックをし、無駄が見られる部分は見直しをしてみることが親の終活では大事なポインです。