お葬式には「宗教」が式の流れやお別れのお作法に違いがあります。
宗教によって式の流れやお別れの作法に違いがあるのは、それぞれの宗教によって「死」についての考え方が違うからです。
今回テーマは「エホバの証人のお葬式」です。
エホバの証人は「キリスト教系」の宗教なのですが、主流派と呼ばれるキリスト教の死生観とは少し異なります。
そのためお葬式においても式の流れやお別れの作法も違います。
そんなエホバの証人のお葬式に参列することになった場合に、事前に知っておきたいお別れの作法と式の流れについて分かりやすく解説していきます。
エホバの証人のお葬式は「追悼式」として行われる
・「エホバの証人」はどんな宗教なの?
「エホバの証人」が考える神様は「エホバ」です。
キリスト教系の宗教ですが、発生は19世紀半頃とされています。
一般的に主流といわれているキリスト教では、「父なる神」「イエスキリスト」「聖霊」の3つが三位一体となって「神様」とされています。
これに対してエホバの証人は、神様は「エホバのみ」です。
キリストも登場しますが、こちらは神様とは考えません。
唯一無二の神が「エホバ」なので、キリスト教系ではありますがエホバの証人ではキリストは「神のような存在」にとどまります。
エホバの証人では、死は復活を意味します。
しかも死んだときと同じ人間として復活します。
復活したときの姿は、その人が最も輝いて見える姿だといわれています。
ですから死によってお別れをすることになったとしても、志を同じくする信者であれば「いつか復活の地で再会することが出来る」というのが根本的な考えにあります。
もちろんキリスト教でも同じような考えはあります。
ただしキリスト教の場合は、死後の裁判において2つの判決が下されます。
善い行いをした人は神様のいる世界に行くことが出来、そこで永遠の命を約束されます。
ところが悪い行いをした人は地獄に行き、永遠にその身を炎で焼かれ続けます。
結論からいうと、キリスト教の死後の世界は天国・地獄のどちらであってもその状態が永遠に続きます。
そしてこの世の姿と同じ姿であるという保証はありません。
そのためキリスト教では、死の間際に罪を懺悔し神に許しを乞う時間を大切にします。
・エホバの証人では「火葬後に追悼式」が一般的
エホバの証人では、ほかの宗教のように宗教的な儀式を行いません。
これは「死の別れは永遠の別れではない」という考え方に基づきます。
そのため一般的なお葬式は行いません。
その代りに「追悼式」を行います。
追悼式は一般的に火葬が終わった後に行います。
場所の指定はありませんが、最も多いのは「エホバの王国」と呼ばれる場所です。
もちろん自宅で行うこともありますし、火葬場で簡単にお別れをするだけという場合もあります。
ちなみに一般弔問客として参列する場合は、火葬後に行われる追悼式への参加が一般的です。
・エホバの証人の「追悼式」とは?
エホバの証人の追悼式では形にあまりこだわりません。
もちろんキリスト教系の宗教なので聖書を読んだり賛美歌を歌うシーンはあります。
ただし信者でない一般の参列者が強要されることはありません。
主に行われるのは、「故人の人生や人柄の紹介」「故人にまつわるエピソードの紹介(遺族や友人などが行うことが一般的です)」「聖書の話」「讃美歌斉唱」「祈り」となります。
・エホバの証人のお葬式は「追悼式」だから祭壇を置かない
エホバの証人では偶像崇拝を禁止されています。
祭壇は「神を祀る場所」となるので、エホバの証人のお葬式では使いません。
そのため葬儀会場に行っても祭壇はありません。
・遺影写真も置かない
遺影写真を置くということも偶像崇拝となるため、エホバの証人のお葬式では使いません。
・お別れの時に手を合わせてはいけない
お別れの時に手を合わせてしまいがちですが、これはエホバの証人のお葬式ではNGです。
手を合わせるということは「拝む」ということになり、エホバの証人の「いかなる偶像崇拝もタブーである」という考えに反することになります。
ですから参列者としてお別れに立ち会う時も「手は合わせない」と覚えておきましょう。
・お悔やみの言葉でも「ご愁傷様」はNG
エホバの証人の教えでは、「人は死んでも同じ人間として生き返ることが出来る」としています。
もちろんこの世を去ってしまったことに対する悲しみは、信者である家族にもあります。
ただしそれ以上に「いつか再び会うことが出来る」というのがエホバの証人の考え方にあるので、「ご愁傷様」という言葉は適当ではありません。
どうしても家族に声を掛けたい場合は、家族の悲しみを癒すような励ましの言葉にとどめるようにしましょう。
エホバの証人のお葬式に参列するときの服装は?
エホバの証人のお葬式は、「葬儀」ではなく「追悼式」です。
そのためお葬式ではマナーとされる喪服を着る必要がありません。
また「お香典」というものも必要ありません。
とはいえこれはあくまでも信者のマナーとされています。
信者ではない一般の参列者の場合は、喪服を着用しても基本的にはマナー違反にはなりません。
もちろん家族・親族全員が信者の場合は喪主を務める遺族たちも喪服をつけないので、一般弔問客が喪服をつけて参列すると式場で目立ってしまうこともあります。
そこでエホバの証人のお葬式に一般弔問客として参列する場合の服装の目安を紹介します。
・男性参列者の服装
男性の服装は、ブラックスーツは避ける方が無難です。
基本はスーツなのですが、色はダーク系であれば問題ありません。
靴もスーツに合わせて問題ありません。
もちろん信者でない場合は喪服を着用しても構いませんが、略礼服程度にとどめておくのが無難です。
・女性参列者の服装
女性の場合もダーク系のスーツまたはワンピースを着用するのがおすすめです。
喪服をつけても構いませんが、信者は喪服を身に着けませんので喪服をつけるとかえって目立ってしまうこともあります。
ただし肌の露出が多いものはNGです。
ノースリーブのワンピースの場合は、ダーク系のカーディガンなどを羽織れば問題ありません。
もちろん派手な色の服や華美な装飾やデザインの服はNGです。
カバンも追悼の場にふさわしいものを選ぶようにします。メイクもOKですが、「追悼の場にふさわしいメイク」であることが望ましいです。
エホバの証人のお葬式での香典に関する疑問!
エホバの証人のお葬式では、基本として「香典は不要」です。
もちろんお香典は参列する側の弔意を表すものですので、故人との付き合いによっては「きちんと渡したい」という人もいるはずです。
その場合は次のような点に注意してください。
・封筒は白い無地の封筒を準備する
表書きに「お花料」と書いても構わないのですが、基本的にエホバの証人では香典を受け取りません。
そのため無地の封筒に名前だけを書き入れて準備するのが良いでしょう。
・表書きに「お香典」とは書かない
「お香典」は仏教用語です。
ですからキリスト教系のエホバの証人のお葬式で「お香典」はタブーです。
・受付で香典の受け取りを拒否された場合は?
もともと香典を受け取らないのがエホバの証人の考え方にあります。
そのため準備をしていても受け取りを拒否されることがあります。
その場合は無理に渡すのは避けるのが無難です。
ただしどうしても弔意を表す行為として渡したいという場合は、「お葬式の費用の足しにしていただきたい」と一言付け加えてみてください。
もちろん受け取るかどうかは家族の判断になりますが、「葬儀代として」という一言があることで受け取ってもらえることもあります。
・あらかじめ「香典の受け取りを辞退します」とされている場合は弔電で対応を!
そもそもエホバの証人のお葬式では「追悼の場」とされています。
故人一人だけが信者の場合は一般的なお葬式と同じようにお香典を受け取ることの方が多いのですが、故人を含めた遺族・親族が信者の場合は受け取りを辞退することをあらかじめ通知される場合もあります。
このような場合は「弔電」で対応するという方法があります。
弔電なら「故人に対する追悼文」としてとらえることが出来るので、受け取りを拒否されるということがあまりありません。
ただしエホバの証人はキリスト教系の宗教ですので、「供養」「冥福を祈る」「成仏」などのような仏教用語が含まれた文章はNGです。
一般的な定型文ではこうした仏教用語が使われていますので十分に気を付けてください。
まとめ
エホバの証人のお葬式は、主流と呼ばれるキリスト教のお葬式とも違うので参列する時に戸惑うことも多いはずです。
でも信者ではない一般参列者であれば、喪服で参列しても香典の代わりにお金を準備したとしても基本的にはマナー違反とはなりません。
ただしエホバの証人のお葬式では香典を受け取らないことが基本なので、返礼品は準備されていません。
また清め塩の準備もありません。
あらかじめこうした違いがあるということを理解しておけば、エホバの証人のお葬式もほかの宗教のお葬式と同じです。
大事なのは「大切な人を想う気持ち」、それだけで良いのです。