遺体の解剖には断れる解剖と断れない解剖ある!その違いって!?

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亡くなった人の体を解剖することを「遺体解剖」といいますが、解剖をする目的によって「行政解剖」と「司法解剖」の2つに分かれます。

この2つは違いがあり、内容や目的も違います。

そのため「家族が断ることが出来る解剖」と「断ることが出来ない解剖」に分かれます。

ただ家族の死を目の前にしている家族にとって「遺体を解剖する」ということは、大きな心の負担になります。

それでも場合によってはその事実を受け入れなければいけないこともあります。

そこで今回は一般的には良く知られていない「遺体解剖」について紹介してみることにします。

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断ることが出来ない遺体解剖って!?

亡くなった人の体を解剖する「遺体解剖」ですが、解剖の目的によって「断る」「断ることが出来ない」に分かれます。

 

・断ることが出来ない遺体解剖とは?

遺体解剖は大きく分けると「行政解剖」と「司法解剖」の2つがあります。

遺体を解剖する場合、原則として「家族の承諾」が必要になります。

ただしこの中で「例外」として家族の承諾を得ずに解剖が行われるものもあります。

まずその可能性が高いのが「司法解剖」です。

 

司法解剖とは「刑事訴訟法」に基づいて行われる遺体解剖のことを言います。

「刑事訴訟法」という法律名が出てきた時点であなたも何となく理解できたと思いますが、司法解剖では「何らかの犯罪に巻き込まれた可能性がある場合」に行われます。

私も司法解剖の遺体の引き取りに何度も立ち会っていますが、実際にはその遺体が「明らかな犯罪の被害者」というケースはそれほど多くはありません。

 

犯罪の被害に遭って死亡した場合の遺体解剖では、「どのような行為によって死亡したのか」「遺体の損傷がどの程度あるのか」「正しい死亡時間はいつなのか」など死因を特定することが目的になります。

この解剖の結果は、事件の裁判において重要な証拠となることもあります。

そのためこの場合の解剖は、原則として法医学者または大学病院の解剖医によって行われます。

 

ただ先ほども言いましたが、私が実際に遺体の引き取りに立ち会った司法解剖の中で「明らかに犯罪の被害者」というケースはそう滅多にありません。

ただ「自殺・他殺・事故死のいずれに当たるのか判断しにくい場合」は司法解剖となります。

 

たとえば高架橋の下の道路上で死亡している身元不明の遺体があったとします。

遺体の状態や周辺の状況から死亡した人が自ら高架橋から飛び降りたと考えられる場合は「犯罪の可能性は低い」となります。

明らかに自殺であると判断された場合は、解剖は行わず検視のみで死体検案書を発行します。

ただし犯罪の可能性はなくても死因が不明な場合は「行政解剖」となります。

 

ところが同じような状況であっても自殺・他殺の判断が難しい場合は違います。

車の事故に巻き込まれたような損傷が見られるのにその周辺に事故が起きた痕跡がない場合や、検視だけでは自殺とも他殺とも判断が出来ない場合は「犯罪の可能性が認められる」ということで司法解剖になります。

 

・不審死の場合は司法解剖

司法解剖で最も多いのが「不審死」です。

不審死では目立った外傷がないことの方が多いです。

ただ「何が原因で死んでしまったのかがわからない」「いつ死亡したのかがわからない」「孤独死していた」という場合は、「不審死」と判断されるので司法解剖されます。

 

私がここ数年葬儀の現場で感じるのは「孤独死した遺体の司法解剖が増えたこと」です。

「孤独死」というと、一人暮らしの高齢者が自宅で死亡し遺体が発見されるまで時間がかかり、近所の住民から「異臭がする」という通報があって遺体が発見されるというケースのことを思い浮かべるかもしれません。

確かにこのケースはよくあります。

このようなケースで司法解剖された遺体の中には、顔が判別できないほど腐敗していることも多いです。

臭いも「異臭」という2文字だけでは表現できないほど強烈な腐敗臭がしますし、肌の色も緑や黒に変色しているケースがほとんどです。

 

また腐敗が進んでいる場合は解剖しても死亡した正確な日時が分からず、死体検案書に「死亡した日時 〇月〇日頃推定」となっていることもよくあります。

ただしこうした一人暮らしの高齢者が孤独死することが社会問題となってからは、地域での見守りの強化や一人暮らしの高齢者同士での声掛け運動などいろいろな対策が行われるようになりました。

 

その反面、高齢者以外の一人暮らしまでは地域の目が行き届いていないのではないかと葬儀の現場にいながら感じます。

孤独死は高齢者だけがなるものではありません。

20代、30代の孤独死もあります。

ここ数年葬儀の現場で感じるのは「40代の現役世代の孤独死が増えている」ということです。

 

現場でも、現役世代が死に至るような重大な病気にかかって治療を受けているというケースはあまり耳にしません。

「前日まで元気に職場で働いていた」「死亡するまでの数日間に変わった様子は全く見られなかった」というケースも多いです。

 

ところが「出勤時間になっても出勤しない」「電話をしても連絡が取れない」などがあって、心配した同僚が自宅を訪ねると布団で眠ったままの状態で死んでいたというケースはよくあります。

もちろんこのような遺体には、犯罪に巻き込まれた可能性のある遺体の損傷などはありません。

姿を見ても眠っているようにしか見えませんし、発見が早ければほとんど腐敗もしていません。

でもこのようなケースは「不審死」と扱われるので、司法解剖されます。

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家族が拒否することが出来る遺体解剖

遺体の解剖には原則として家族の承諾が必要といいましたが、場合によっては家族の承諾がなくても強制的に解剖が行われるケースもあります。

これとは反対に、家族の承諾がなければ解剖することが出来ないケースもあります。

つまり「家族が拒否することが出来る遺体解剖」のことです。

 

・行政解剖は基本的に家族が拒否できる

行政解剖には「病理解剖」「承諾解剖」「行政解剖」の3つがあります。

この3つは一部の例外を除き、遺体の解剖を家族が拒否することが出来ます。

たとえば死因や病名がはっきりしているのに病院から「遺体の解剖をさせてほしい」との申し出があったとしましょう。

この場合は「病理解剖」となるので、必ず家族の承諾が必要です。

 

病理解剖は、家族が「亡くなってまで痛い(苦しい)思いをさせたくない」「身体に傷をつけさせたくない」という想いが強いのでほとんどの人が拒否します。

ただ故人が「亡くなったらお世話になった病院のために自分の体を役立ててほしい」という遺言を残している場合は、故人の遺志を尊重するとして遺体の解剖を承諾するケースもあります。

 

これに対して行政解剖では、解剖を承諾する家族が多いです。

行政解剖は検視だけでは正確な死因を判断できない場合に行われるもので、犯罪の可能性がないことが条件になります。

もちろんこの場合も家族の承諾が必要になるのですが、突然死や不審死、孤独死などのケースが多くほとんどの家族が遺体解剖に承諾しています。

 

解剖が終わると、解剖を担当した医師から直接家族は死因の説明を受けます。

この死因の説明は専用の個室で行われるので、遺体の引き取りのために現場にいる葬儀社スタッフが話を聞くことはできません。

ただ行政解剖の場合、解剖によってほとんどの人が「病死である」ということがわかります。

そのため死因の説明を受けた後の家族と話をしても、解剖前よりも気持ちが落ち着いているように感じます。

 

特に一人暮らしの高齢者が亡くなった場合、顔や手などに擦り傷があると家族は「家の中で転んでしまったことで死んでしまったのではないか?」と思い込んでしまっていることが多いです。

そして一人暮らしをさせてしまったことが死亡の原因になったのではないかと自分を責めます。

でも遺体解剖で死因が分かることによって、家族が無意識に抱えてしまった苦しみを打ち消してくれることが出来ます。

だから「遺体の解剖」といっても、場合によっては家族の心の負担を軽くすることにつながるケースもあるのだと思います。

遺体解剖と献体は違う

一般的な遺体解剖と献体は、その目的が大きく違います。

一般的な遺体の解剖は「死因を特定することが目的」です。

もちろん家族の承諾が必要ですが、死因がわからないままお葬式をするよりも死因が分かったうえで見送る方が家族の精神的な負担は減ります。

 

ただ献体は、その目的が「医学の発展」にあります。

ですから献体された遺体は、医学を学ぶ学生のために使われます。

もちろん献体をするにしても家族の承諾が必要なのですが、その前に「献体登録」をしておく必要があります。

 

もちろん献体しても遺骨は家族に返却されます。

解剖された遺体は大学側が責任をもって火葬まで行いますし、遺骨の返却までにかかる費用については大学側が負担します。

ただこのことが「献体すればお葬式の費用が掛からない」という間違った方向に解釈されているという現実もあります。

 

確かに献体した遺体の火葬費用は大学側が負担します。

また遺骨の引き取りを望まない場合は、大学の納骨堂に合祀されます。

言い方を変えれば「献体すればお葬式だけでなくお墓の費用も掛からない」ともいえるかもしれません。

ただし献体は「無条件」「無報酬」が原則です。

あくまでも火葬の費用を大学側が負担するのは、医学のために遺体を提供してくれた故人と遺族への感謝の気持ちが含まれていると考えた方がよいのです。

 

ところがそのことが変な誤解を招いてしまっている気がします。

特に自分の死後の整理を積極的に行う「終活」がブームになってからは、「出来るだけお金をかけたくない」「家族に迷惑をかけたくない」「お墓を購入するお金がない」など本来の献体の目的とは全く違う理由で献体を申し込む人が急増しました。

そのこともあって現在では、全国的に見ても積極的に献体の受け入れを行っていない大学の方が増えています。

 

ハッキリと言っておきますが、献体をしたからと言ってお葬式をしなくても良いということはありません。

少なくとも私の経験上、お葬式を済ませてから遺体を献体したケースを何件も知っています。

遺体を解剖するという行為だけを見れば、一般的な遺体解剖も献体も同じように見えるかもしれません。

でもそもそもの目的を考えれば、この2つは大きな違いがあるといえます。

もしも終活の一部として献体を考えているのであれば今一度献体の目的を理解してほしいと思いますし、大切な人の体を解剖されてしまう家族の心のつらさも考えてほしいと思います。

まとめ

遺体解剖は、お葬式の現場でも決して一般的なことではありません。

家族は大切な人が亡くなった悲しみを背負うだけでなく「家族の身体にメスを入れる」という苦しみも味わいます。

でもすべての遺体解剖が苦しみばかりとは言えません。本当の死因を知ることによって、心にのしかかっている苦しみがほんの少しだけ和らぐこともあります。

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