夫の死後、離婚をする人が増えています。
こうした離婚のことを「死後離婚」といいます。
すでに夫が死んで別れた状態になっているわけですから、わざわざ法的な手続きをすることはないような気もします。
でも死後離婚にはメリット・デメリットがあり、あなたにプラスとなることもあるのです。
そこで今回は死んだ夫と死別離婚をする場合のメリット・デメリットについて分かりやすく解説します。
死亡離婚とは!?
夫と死別することによって、法律上ではすでに「夫との婚姻関はない」ということになります。
つまりあなたが「未亡人」と呼ばれたとしてもそれは「すでに死亡した夫の元妻」ということであって、法律上では夫との婚姻医関係はすでに終了しているのです。
そのため死亡離婚といっても一般的な婚届を提出する必要はありません。
もっとはっきり言えば「死亡離婚のための手続き」というものはないのです。
それでも今、夫の死後わざわざ手続きをして死亡離婚をする妻が増えています。
・夫が死亡しても姻族関係は継続する
夫との婚姻関係は夫の死によって終了するのですが、姻族関係は夫が死亡しても継続します。
「姻族」とは夫の両親や夫の兄弟姉妹のことを言います。
この姻族関係は、メリットもあればデメリットもあります。
例えば夫の親と同居をしていた場合、すでに夫は死亡していますから夫の両親の面倒を見るのは妻であるあなたとなります。
なぜなら夫と結婚したことによって、あなたは夫の両親の子になっているからです。
さらに夫の兄弟姉妹との関係も、夫が死亡した後も続きます。
結婚したことによって夫の戸籍に入るわけですから、夫の兄弟姉妹とも戸籍上では義兄弟・義姉妹となります。
そのため夫と死別することによって「夫との婚姻関係は終了」しますが、「夫側の姻族関係は継続する」ということになります。
・死亡離婚をしなければ夫の両親・きょうだいの扶養義務があなたにはある
ちょっと難しい話をすると、民法の中では結婚に関する扶養義務についても書かれています。
民法877条1項には「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」とあります。
これはあなたが死亡した夫が「事実婚」の場合は関係ありません。
事実婚の夫婦は、戸籍上では婚姻関係にあるというわけではありません。
ですから夫が死亡したとしても、あなたには夫の両親やきょうだいを扶養する義務がないのです。
ただし現在の日本では「事実婚」はオーソドックスな結婚のスタイルではありません。
結婚をするということはパートナーのどちらかの戸籍に入ることを意味しています。
もちろんあなたの場合もそうですよね?
そうであれば夫が死亡した後、あなたは夫の両親やきょうだいを扶養する義務があるということになります。
・夫と死別をしても手続きをしなければ旧姓に戻ることはできない
お互いに生きている間に離婚が成立する場合、離婚届を提出する段階で戸籍の変更をすることが出来ます。
この時にあなたが離婚を機に旧姓に戻りたいという意思表示をすれば、その手続きも同時に行うことが出来ます。
ところが夫の死によって婚姻関係が終了する場合、何も手続きをしないのであればあなたの姓は夫と結婚していた当時のままになります。
・死亡離婚を決断した人の多くは「結婚前の状態に戻りたい」と考えている
法律では「配偶者の死亡によって婚姻関係は終了する」とありますので、わざわざ死亡後に離婚届を提出する必要はありません。
でも夫が死亡したとしても、夫の両親やきょうだいとの関係は続きます。
また複氏届を提出しなければ、夫が死亡した後もあなたの名前は夫の姓のままです。
こうしたことをすべて清算し、夫と結婚する前の状態に戻って新たなスタートを切りたいと考えている人が増えています。
そのためわざわざ手続きをいてまで死亡離婚を行う人が増えているのです。
死亡離婚のメリット
・夫の両親の介護を引き受ける義務がなくなる
死亡離婚をしてしまえば、死んだ夫の両親との姻族関係も終了します。
つまり「夫の両親の老後の面倒を見る義務がなくなる」ということです。
一番多く耳にするのが「死んだ夫が長男だった場合」です。
現在でも日本には「長男は家を守るのが義務」という古い価値観が残っている地域が多いです。
もしも亡くなったあなたの夫が長男であれば、当然長男の嫁として夫が死んだ後もあなたが夫の代わりに夫の両親の介護をすることになります。
もちろんすべてを負担しなければならないということはありません。
民法では「扶養の義務を負う」とだけ書かれていますので、同じように不要の義務を負う人はいるはずです。
でも高齢者の介護は非常に大変です。こうした面倒なことは出来れば逃げたいと思う気持ちは誰だってあります。
だから「長男」「長男の嫁」という都合の良い対象に押し付けてしまうのです。
ところがいざ両親が他界するとなると、その遺産の相続については「法定相続人」という立場を利用して要求してきます。
これは死んだ夫の妻の立場としてはとても容認できるものではありませんよね?
なにしろ面倒な両親の介護は長男の妻であるというだけで血縁関係のないあなたに押し付けてきたのに、遺産相続となった場合には「私には相続権がある」として堂々と主張してくるのです。
でも法定相続人であれば遺産の相続を要求することは正当な権利なので、あなたの気持ちがどうであれこればかりはどうにもなりません。
このように将来のトラブルを避けることが出来るのも、姻族関係を終了させる「死後離婚」のメリットといえます。
・死後離婚をしてもあなたの子どもと夫側の親族との関係は変わらない
死後離婚をしたとしても、あなたの子どもと死んだ夫の家族との関係は何も変わりません。
夫とあなたの子どもであれば、夫の両親から見れば「孫」に当たります。
また兄弟姉妹にとっては「甥・姪」の関係です。
あなたと死んだ夫との間には血縁関係はありませんが、あなたの子どもは死んだ夫と血縁関係があります。
つまりあなたが死亡離婚をしたとしても、あなたの子どもと夫側の家族との間には血縁関係が残ります。
ですからあなたの子どもはあなたが死亡離婚をしたとしても、夫側の親族と「孫」「甥」「姪」であることは変わらないのです。
死亡離婚をするデメリット
・死亡離婚をするかどうかは、残された妻であるあなた次第
結婚届を提出する際には、夫となる男性と妻となる女性の合意がなければできません。
つまりどちらか片方が結婚の意思があっても、パートナーにその意思がなければ結婚は出来ないのです。
ところが死亡離婚の場合は、すでにパートナーである夫は死亡しています。
死んだ夫の意思を確認することはできませんから、残されたあなたが希望すれば死亡離婚をすることはできます。
ただしその判断をすることによって夫婦として築いてきた関係をすべて解消するということにもなります。
良好だった夫の両親や兄弟姉妹も、あなたが死亡離婚をすれば態度を変えることになるでしょう。
むしろ死亡離婚をした後も友人として良好な関係を築き続けるということの方が難しいのです。
こうしたことも含めて考えてみると、あなたの判断1つでこれまでの関係がすべて変わってしまうということが死亡離婚のデメリットとして考えられます。
まとめ
死亡離婚のメリット・デメリットについて説明してみましたが、あなたのこれからの生き方のヒントになったでしょうか?
夫婦はとても不思議な関係です。結婚する時にはわずか1枚の婚姻届けを提出・受理すればその時から2人は夫婦になります。
もちろん離婚をする時にも1枚の離婚届があればすぐに関係を解消できます。
でもこれはお互いの意思が確認できる時だからこそ、悩みはあってもきちんと解決できます。
でも死亡した夫が相手となると、死亡離婚をする・しないはあなたの判断のみです。
死亡離婚にはデメリットもありますが、これから先のあなたの将来を考えればメリットもあります。
ですからまずはこうした選択肢があるということを知っておくということが、夫に先立たれた妻としては大事なことなのだと思いますよ!