配偶者が死亡すると、残された遺族には遺族年金が支払われます。
ところがこの遺族年金は「妻が受け取る」の場合には大きなメリットがあるのですが、「夫が受け取る」の場合は条件がかなり厳しいのです。
そこで今回は妻と死別した夫がもらえる遺族年金について詳しく解説!
「どうして遺族年金の受給対象者が夫だと支給されにくいのか?」についてもわかりやすく説明します。
夫が遺族年金を受け取れる資格やもらえる金額って!?
遺族年金は、死亡した人が本来受け取るはずだった年金を遺族が受け取る制度のことを言います。
死亡した人が加入していた年金の種類によっても異なりますが、国民年金に加入の場合は「遺族基礎年金」、厚生年金に加入の場合は「遺族厚生年金」といいます。
この二つはどちらも受給対象者の条件があります。
もちろん受け取るにはその条件を満たしていることが重要なのですが、比較的受け取りやすいのが「遺族基礎年金」です。
・遺族基礎年金の受給対象者
遺族基礎年金はかつて「母子年金」といわれていました。
そのため2014年の法改正以前は、「死亡した人の妻で18歳未満の子どもがいる場合」となっていました。
つまり母子家庭に限って遺族年金は支給されていたのです。
2014年の法改正では「男女差を無くす」という目的から、死亡した人の夫であっても対象となるようになりました。
つまり「父子家庭でも遺族基礎年金は受け取れる」ということです。
・遺族基礎年金は18歳未満の子どもがいないと受け取れない
遺族基礎年金は、配偶者の死亡によって残された子どもがお金に困らないように支援することが目的として作られた制度です。
そのため「夫婦2人のみの家族」または「すでに子どもが全員18歳以上になっている」という場合は、遺族基礎年金を受け取ることはできません。
・遺族厚生年金は子どもの有無は関係ない
遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた妻が死亡した場合に受け取ることが出来る遺族年金です。
厚生年金は自営業者や専業主婦では加入できませんから、原則として妻が会社員または公務員だった場合が対象として考えられます。
遺族厚生年金の受給対象者は「子どもがいない(18歳未満の子どもがいない)夫」でも受け取ることが出来ます。
ですから子どもがいることが条件となる遺族基礎年金よりも、妻と死別した夫にとってはかなり有利な制度といえます。
・遺族厚生年金を夫が受け取ることが出来る年齢
遺族厚生年金を夫が受け取ることが出来るのは、夫の年齢が「55歳以上」であることが条件として付きます。
つまり遺族厚生年金を受給する資格があっても、夫であるあなたが40代であれば受け取ることが出来ません。
ちなみに妻の場合は基本的に年齢に関係なく支給されます(条件によっては給付期間及び給付金額が変わります)。
・遺族基礎年金は遺族厚生年金と一緒に受け取ることもできる
遺族厚生年金の支給額は、年金加入期間や納付額によっても変わります。
ですから一概に「○○万円支給されます」とは説明できません。
ただし遺族厚生年金が受け取れる夫に18歳未満の子どもがいる場合は、遺族基礎年金も一緒に受け取ることが出来ます。
遺族基礎年金は子どもの人数によって加算額が変わります。
しかも第2子までは子ども1人当たり年間22万4300円支給されます。
ですから遺族基礎年金だけで考えても子どもが2人の父子家庭だと、年間122万7900円(内訳には夫への遺族年金として77万9300円がふくまれる)が支給されます。
これに遺族厚生年金が受け取れますので、妻と死別した時点で18歳未満の子どもがいた方が支給される遺族年金は増えるといえます。
夫の生命保険より妻の保険の見直しを。
遺族年金はあくまでも「夫と死別した妻」の生活を支えるための支援制度と考えた方が良いです。
もちろん子どもがいればその分生活費や教育費の負担は出てきますが、それでも「夫を亡くした妻」の方が遺族年金の支給額も多いです。
こうなると問題は「妻と死別した夫の老後」です。
夫婦2人とも共働きをしている場合、夫が亡くなった場合に残された妻の老後の生活費のことを考えて死亡保険金が大きな生命保険に加入していることが多いですよね?
確かに死亡保険金は、夫・妻に先立たれた場合残された配偶者の老後の生活費となる大事なお金です。
でも夫と死別した妻には遺族年金があります。
特に遺族厚生年金の場合は、夫と死別した妻は死ぬまで夫の遺族年金を支給してもらうことが出来ます。
ところが夫の場合は条件が厳しくなるので、給付金額も妻と比べると低いです。
・日本人の平均寿命は男女ともに80代
日本人の平均寿命を男女別に比べてみると、男性よりも女性の方が長いのがわかります。
ちなみに2016年に公表された厚生労働省の調査によると男性の平均寿命は80.98歳に対して、女性の平均寿命は87.14歳です。
しかもこの平均寿命はここ数年連続で更新しています。
でも医療費の負担が増えるタイミングを見てみると、男女ともに70代となっています。
つまり70代になると男女ともに何らかの病気を抱える人が増えるということです。
医療費の負担は年金生活をする高齢者にとって大きな負担になります。
さらに医療費の見直しは毎年行われますので、高齢者であっても現役世代並みの所得があれば医療費の負担はほぼ変わりません。
ですから年金生活をするにしても、医療費が一気に増える70代以降の生活をどのように計画するのかはとても大事なポイントなのです。
・妻の生命保険を見直してみよう
日本人の平均寿命を見てみると「夫が死亡したときに妻が受取人となる生命保険を重視した方がいい」と思うでしょう。
でも遺族年金の支給額などを考えてみると、妻が先に死亡した場合の対策をしておいた方が、夫の老後生活は安定します。
しかも「仕事一筋の人生を送ってきた」という夫の妻が突然亡くなったとなれば、家事が一切できない夫が一人残されることになります。
生活費を節約するには自炊が大前提となりますが、家事をしたことがない夫となればこれも外食・中食に頼るしかありません。
もちろんこうなれば、夫一人暮らしの生活費は妻が一人暮らしとなった時よりもはるかに負担が大きくなります。
なにしろ一人暮らしをするには1か月に15万円は確保する必要があります。
ここでいう「生活費15万円」のうちわけは、食費や光熱水費のような消費額以外にも税金や保険料などの日消費額もあります。
ただし家事が出来ない夫の一人暮らしとなると食費にかかる費用が大きくなりますので、高齢者の一人暮らしの平均生活費といわれている15万円よりも上乗せして計算しておく必要があります。
そこで見直しておきたいのが「妻の生命保険」です。
妻が加入している生命保険のうち死亡保険金が支給される内容を見直してみましょう。
夫が一人暮らしをすることになった時、毎月支給される年金と生命保険の死亡保険金だけで80歳までゆとりをもって生活が出来る金額であれば問題はありません。
でもこの時に死亡保険金だけでは厳しいと感じるのであれば、保険の見直しをするのがおすすめです。
夫の終活には妻の協力が必要!
「万が一の為に」と考え準備をすることを男性は苦手に思っています。
特に「仕事一筋で家庭のことはすべて妻任せ」という夫ほど、いざ妻に先立たれた時に何もできなくなってしまいます。
ですから最近ブームになっている終活ですが、子どもがいない(すでに子どもが独立している)夫婦の場合は妻の役割が重要です。
何しろ仕事一筋の夫が一人暮らしをするなんてことは想像できますか?
たぶん買い物の仕方から洗濯物の整理まで何もわかっていないはずです。
そんな夫が決められた生活費を節約しながらやりくりして生活できるでしょうか?
もしもこの質問に自信をもって「うちの夫なら大丈夫!」と言えないのであれば、妻であるあなたが率先して夫の終活に関わるようにしてください。
その中であなたがもし先に死んだときのためのお金の計画も一緒に考えてあげてくださいね。
まとめ
妻と死別した夫がもらうことが出来る遺族年金は、夫と死別した妻がもらえる金額よりも少ないです。
また大きなお金を動かすことに対しての判断力は男性の方が高いですが、細かなお金の判断をすることは苦手です。
だからこそいざとなった時に慌ててしまうのが、妻に先立たれた夫です。
今現実問題としておひとりさまとなってしまった夫の場合は、早い段階で周りに今後の老後の生活について相談してみてください。
また夫婦の終活の一環として考えているのであれば、妻が夫の終活の主導権を握ってください。
老後の生活では大きなお金を動かすことはほとんどありません。
だからこそ主婦として夫を支えてきた経験が夫の終活には大いに役立ちます。