夫と死別してしばらくすると、残された子供の姓を変更すべきか悩むことがあります。
妻であるあなた自身の姓を変更することは比較的簡単なのですが、子どもの姓を変更するとなるといろいろな問題が出てきます。
そこで今回は夫の死別によって子どもの姓を変更する方法や、変更をする際の注意点について紹介していきます。
夫と死別した子供の姓を変える方法は!?
あなたと子供では手続きの方法に違いがあります。
それは、子供には死亡した夫と血縁関係があるからです。
夫とあなたの子どもであれば、あなたの子どもは夫の直系血族となります。
つまり夫が死亡したとしても、その関係に変化が起きるわけではないのです。
ただしあなた自身も姓を変更しただけでは本当の意味で夫の家族との縁が切れるわけではありません。
そもそも復氏届で変更が出来るのは「あなたの姓」と「あなたの戸籍」です。
ただしこの変更をしたとしても夫側の姻族関係が終了したことにはなりません。
つまりこの段階のままでは、あなたは亡くなった夫の両親の扶養義務があります。
さらに言えば義理の兄弟姉妹の扶養義務もあります。
ですから何か問題が起きれば、死んだ夫の家族の扶養をあなたがしなければならなくなります。
・あなたの戸籍を作る
結婚前の戸籍には戻らず、新たにあなたの戸籍を作る方法があります。
それが「分籍届」です。
分籍をするケースには主に2つがあります。
1つは「結婚を機に新しい戸籍を作る」です。
これは婚姻届けの提出と同時に行うことが出来るので、わざわざ別の手続きをする必要はありません。
もう1つが「満20歳以上で本人が希望している場合」です。
これが今回のあなたのケースに当てはまります。
復氏届を提出すると、旧姓に戻ることが出来ます。
それと同時にあなたの戸籍は結婚前の戸籍に戻ります。
ただし分籍届を出すと、戸籍に関することが変わってきます。
分籍届をすると、あなたは新たな戸籍を作ることが出来ます。
ですから復氏届を出したうえで分籍届を出せば、あなたは結婚前の姓に戻りながらもあなたが筆頭者となる新しい戸籍が出来ます。
ただし新しい戸籍が出来たなら、その後実家の戸籍に戻るということは出来ません。
その代りあなたが戸籍の筆頭者になることが出来ます。
・あなたの戸籍に子どもを入籍させる
分籍届によってあなたが筆頭者となった新たな戸籍に、あなたの子どもの戸籍を入籍させます。
これによってあなたの子どもはあなたと同じ姓を名乗ることが出来ますし、戸籍上もあなたの子どもとなります。
・実家の戸籍に親を入籍させることはできない
実家の戸籍にあなたが入るのなら「子供も一緒に実家の戸籍に入れればいい」と考えるかもしれません。
ただしこれは出来ません。
正しい言い方をすると「籍を入れることはできるけれど、あなたの子どもとしては入籍できない」ということです。
もしも実家の戸籍に子どもを入籍させるのであれば、あなたの子どもは祖父母と養子縁組をしなければいけません。
つまり「あなたの実の子ども」ではありますが、戸籍上では「あなたのきょうだい」となるのです。
これだとあなたが望む形とはちょっと違ってくるはずです。
だからこそ子どもの戸籍をあなたと一緒にしたいのであれば、あなた自身が筆頭者となる戸籍を新たに作る必要があるのです。
夫と死別した妻と子供では手続きが違う!
夫の死別によって姓を変更するには、「妻=あなた」と「夫とあなたの子ども=子ども」とで違います。
・妻であるあなたの姓の変更は比較的簡単にできる
妻であるあなたの姓の変更は、子供の姓の変更よりも簡単にできます。
まず現実的な問題から説明しましょう。
死別してしまった夫とあなたの間には、すでに婚姻関係がありません。
これは夫の死をまだ受け止め切れていない時期に説明するとショックな話題だと思うのですが、法的な解釈としては「夫の死=婚姻関係の終了」なのです。
ただし夫との婚姻関係が終了したからといって、一般的な離婚のように「離婚届」を提出する必要はありません。
夫が生きていた時と変わらず夫の姓を名乗ることもできますし、妻として請求できる権利もあります。
さらに姓を変更する時には「復氏届」というものを提出することによって、夫の姓からあなたの旧姓に変更することが出来ます。
もちろん姓の変更をする・しないは、あなたの意思次第です。
ですからあなたが一生夫の姓を名乗ることもできますし、夫の死から数年たってからでも姓を変更することは出来ます。
・復氏届は妻であるあなたの姓の変更しかできない
復氏届で姓を変更することが出来るのは、申請者であるあなたのみです。
あなたの子どもの姓も一緒に変更したい場合は、復氏届とは別の手続きが必要になります。
もちろん復氏届を提出すれば、あなたは夫の戸籍から抜けることが出来ます。
旧姓に戻るのであればあなたの戸籍は、実家の戸籍(結婚前の戸籍)に戻ることになります。
ちなみに子どもの戸籍についても、姓の変更と同じです。
つまり復氏届で変更が出来るのは「妻=あなた」だけです。
この点を勘違いしてしまうと、あなただけが夫の戸籍から抜け、あなたの子どもは夫の戸籍に残ったままとなってしまいます。
・子供の姓を変更するためには家庭裁判所の許可が必要
子供の姓を変更するためには、家庭裁判所に子どもの姓を変更する申し立てをしなければいけません。
これを「子の氏の変更許可申立書」といいます。
この書類を家庭裁判所に提出し内容が認められれば、子どもの姓を変更することが出来ます。
ただしこの時点では「子どもの姓が変わっただけ」です。
ですから戸籍は亡くなった夫の戸籍に残ったままになります。
夫との姻戚関係は姓と戸籍を変えても終了しない
あなたが夫の戸籍から外れ姓も旧姓に戻したとしても、夫の両親やきょうだいとの関係がまったくなくなるということではありません。
この関係を解消するには「婚姻関係終了届」を提出する必要があります。
婚姻関係終了届は、文字通り「婚姻によって背負うべき義務などをすべて終了させるための手続き」です。
結婚をすると本人だけでなく夫側の家族・親族と妻側の家族・親族の付き合いもうまれます。
これは慣習としての付き合いだけではなく、民法上の義務にも関係してきます。
・姓と戸籍を変えても義理の親子関係・親戚関係は変わらない
姓と戸籍を変えても、亡くなった夫の親や親戚との関係は継続されます。
つまりここまで手続きをしたとしても、このままでは義理の親子・義理のきょうだいのままなのです。
もちろん夫側の親族との関係も変わりません。
もちろんあなたが死別した夫とは別の人と再婚をするのであれば違います。
その代り今度は再婚相手の親やきょうだいと姻族関係となります。
もしも夫との思い出は大事にしつつも夫側の親族との付き合いをきっぱりと切りたいのであれば、婚姻関係終了届を提出し姻族関係を終了させる必要があるのです。
・あなたが新たな戸籍を作った場合も実家の親子関係・親戚関係は変わらない
夫側の親族との関係を断つには婚姻関係終了届を提出すれば問題はありません。
これによってあなたが負うべき夫側の親族の扶養義務がなくなります。
ただしあなたが新しい戸籍を作ったからと言って、あなたの親や親族との関係が終了することにはなりません。
分籍届はあくまでも新しい戸籍を作るだけであって、子として負わなければいけない親や兄弟の扶養義務までなくなるというわけではないのです。
まとめ
夫の死別後、子どもの姓や戸籍を変えることはできます。
ただし妻であるあなたの姓や戸籍の変更とは手続きの方法などが違います。
さらに子どもは夫との血縁関係があるので、特に男のこの場合は跡取りとして互いの両親が姓や戸籍の変更に反対する場合があります。
いずれにしてもあなたと子どもの将来のためのことですので、慌てて結論を出さずゆっくりとみんなが納得できる方法を模索するようにしてくださいね。