「出来るだけ安いお葬式」の解釈に葬儀社のスタッフは困らされる!

出来るだけ 安い お葬式,出来るだけ 安い お葬式 葬儀社,出来るだけ 安い お葬式 困らせる 葬儀関係者の裏話

お葬式の打ち合わせを担当していると、「このセリフが一番厄介なんだよな」と思う遺族からの注文があります。

それが「出来るだけ安いお葬式でお願いします」という一言。

お葬式の費用の全国平均が約200万円という話を聞けば、確かに誰だって「そんな高いお葬式の費用を出せるはずがない」と思うはずです。

それは葬儀業界で働いている私だって同じです。

でもいろいろなお葬式の現場に立ち会ってきた経験があるからこそ、この依頼の仕方こそが葬儀スタッフにとっても依頼者である家族にとっても一番誤解を招く方法だと思うのです。

そもそも「出来るだけ安いお葬式」という言葉からはいろいろな解釈が出来ます。

同じ言葉を使っても、依頼する家族の心境や考え方、経済状況によって全く違う解釈もできます。

つまりこの依頼の仕方だと「本当はどんなお葬式にしたいのか」が葬儀スタッフには伝わってこないのです。

とはいえ今の段階ではあなた自身も「それは言葉の通りに解釈すべきところなのでは?」と思いますよね?

そこで今回は「出来るだけ安いお葬式」という言葉に含まれている様々な解釈について、実際の現場での話を元にわかりやすく説明してみます。

スポンサーリンク

出来るだけ安いお葬式って!?

終活がブームになってからは、テレビや雑誌などメディアでもお葬式に関する話題を積極的に取り上げられるようになってきました。

そのこともあってかつては完全にベールに包まれていたお葬式業界も、今ではかなりオープンになってきました。

 

でも肝心なところについては未だに分厚いベールに包まれているのがお葬式業界の現状です。

その背景にあるのは、お葬式には人の死が関係するからなのだと思います。

人の死は「別れ」も意味します。

「別れ」といってもお葬式の現場では2つの意味があります。

亡くなった人の体が火葬されるわけですから、この点に注目すると「物理的な別れの場」と言えます。

 

ただお葬式には「心」という形のない別れの場でもあります。

「心」は言葉や形で表現することがとても難しいです。

たとえ形として表現したとしても、その形をどのように解釈するかは人それぞれ違います。

だから同じ費用・同じ内容でお葬式をしたとしても、受け取り方によって全く違ったイメージになります。

 

これがお葬式の実態です。その代表的な例が、打ち合わせの時に家族の口からよく聞かされる「出来るだけ安きお葬式」というセリフです。

打ち合わせ担当者として私が何度も泣かされ続けてきた「出来るだけ安いお葬式」の解釈について、ここから実際の体験談をもとに解説していきます。

 

・本当にお金がない人は「できるだけ」という言葉は使わない

「できるだけ安いお葬式」という解釈は、「お金をかけないお葬式」という解釈もできます。

確かにこの言葉に使われている「安い」にスポットを当てると、「できるだけ安いお葬式=お金をかけないお葬式」ともとれます。

でも打ち合わせ担当者もある程度の経験を積んでいくと、「安いお葬式」の前にあえて付けた「できるだけ」という部分が付いていることに癖があるということがすぐわかります。

 

今でこそ私もこの程度の内容であれば依頼者の本心を見抜けるようになりましたが、打ち合わせ担当として現場デビューをしたばかりの頃は「できるだけ」をあえて付ける意味が分からず何度も痛い目(言葉は悪いかもしれませんが個人的には「騙された」に近いですが…)に遭いました。

 

その経験をもとにこの際ぶっちゃけた話をしますと、本当にお金がない人は「できるだけ」という言葉は絶対に使いません。

打ち合わせでも、料金プラン表を見ることはありません。

生活費にも困る状態なのに、高額なお葬式の費用を請求されても支払うことが出来ません。

そもそも手元にあるお金がわずかしかないのですから、どうにかしてその金額の中で納められるようにしてほしいと懇願してきます。

 

もちろんこれは生活保護を受けている人も同じです。

「生活保護を受けているから、支給される金額の範囲で納めてください」とお葬式の依頼の電話ですぐに申し出てくる人もいます。

つまり本当にお金に困ってお葬式を安く抑えたい人は「できるだけ」というあいまいな言葉は絶対に使わないのです。

 

・「できるだけ」という言葉には「地域の平均レベルのお葬式」という意味もある

あえて「できるだけ」という言葉をつける依頼者の半数は「地域の平均レベルのお葬式をしたい」と考えています。

つまり「低価格のお葬式をしたい」ではなく「世間一般的なレベルのお葬式をしたい」と考えています。

 

ただ「世間一般的なレベル」といっても、ご近所さん同士の会話の中で「この地域の平均的なお葬式費用の相場は○○万円よ」という話が出てくることなんてありませんよね?

かといって葬儀社に同じ質問をすれば、地域の平均相場よりもやや高めの金額を提示されるに決まっています。

何しろ葬儀社の営業担当者だって売り上げノルマがありますので、少しでも高い葬儀プランで契約したいのです。

しかも「出来るだけ安いお葬式で…」という言い方をする依頼者の場合は、平均相場よりもやや低めのプランを選ぶ傾向があることもわかっています。

だからその差額分を上乗せした金額を「地域の平均相場」として答えるのは常套手段なのです。

 

つまり「正確な(誤差のない)地域の平均的なお葬式の費用相場」を知っているのは、実際に打ち合わせをする葬儀担当者だけなのです。

しかも葬儀が終わってから利用者が「本当の地域の平均相場はいくらなのか?」と思っても、それを自分で調べたりご近所さんから情報を聞き出すことはまずできません。

要するに「真相は藪の中」ということです。

 

さすがに現在ではお葬式に関する情報も広く世間に出回っていますから、お葬式を依頼する側としても「世間一般的な」という言葉を使うと予算をオーバーする可能性が高いということはうっすら感づいています。

そこで「世間一般的な」という言葉の代わりとして「出来るだけ安い」という言い方をする人が増えているのです。

だからこの事情を分からずに言葉通りに安いお葬式を提案すると、実際にお葬式の準備が進んで行く段階でいろいろなクレームが出来ます。

 

例を挙げるとキリがないですが、よくあるクレームには「パンフレットの写真よりも祭壇の花が少ない(祭壇が小さい)」「葬儀ホール・安置室が狭い」「仕出し料理の見た目が品祖」等があります。

さらに「費用が掛かってもいいからもう1つランクが上の物に変えてくれ」となることもよくあります。

もちろんすぐに差し替えられるものであれば問題はありませんが、商品を外注に回しているもの(仕出し料理など)の場合は変更が出来ないこともあります。

 

変更が出来ないとなると「イメージしていた通りのお葬式にならない」となるので、その怒りは打ち合わせ担当者に向かいます。

もちろんそれは当然の流れ。

打ち合わせ担当者が依頼者の本音を見抜いてさえいれば、イメージに合ったプランを提案していたはずですしクレームが起こることもありません。

ただしこれを見分けられるには、それなりの経験を積まなければいけません。

 

あいまいな表現を使ってなんとか安く抑えたい場合の「できるだけ」と、ぼったくられずに世間一般的なお葬式費用を提示してもらいたい場合の「できるだけ」は、似ているようで全く違います。

それでも使われている言葉としては同じなので、勘違いしやすいのです。

スポンサーリンク

生活保護受給者を装って安く見積もりを出してもらおうとしても無駄

生活保護を受けている人が喪主を務める場合、「葬祭扶助」と言って葬儀社に支払うお金を支給してもらうことが出来ます。

ただし支給額には上限があらかじめ決まっているので、お葬式の打ち合わせをする時には支給の上限の範囲内におさまるように見積もりを作ります。

 

ただし生活保護で支給されるお金では、世間一般的に考えているようなお葬式は出来ません。

通夜式・葬儀・告別式をすることはできませんし、お坊さんを呼ぶこともできません。

自治体によっては祭壇を置くことも認められていませんし、会葬者への返礼品も認められません。

つまり「遺体を火葬するためだけのお葬式」と考えるのが、もっともイメージに近いといえます。

 

とはいえ最大20万1000円以内までは支給されますので、見積もりも支給額の上限が目安になります。

もしも生活保護を受けていない人でもこの金額でお葬式が出来るのだとすれば、お葬式の費用で悩むことはありませんよね?

だからそのことを悪用して生活保護を受けていないのに「生活保護の範囲内でお葬式をお願いしたい」という依頼者もいます。

ただし本当に生活保護を受けている人かどうかはすぐにわかります。

 

何しろ生活保護でお葬式費用の扶助を受けたいのであれば、お葬式をする前に「葬祭扶助の申請」をしなければいけないのです。

また申請者が生活保護を受給している場合が対象となるので、故人の家族・親族に葬儀費用の支払い能力があるのであれば支給されることはありません。

 

また受給するにはケースワーカーへの連絡も必要になります。

葬儀社に依頼をする前にケースワーカーへ死亡したことを連絡することによって窓口に直接手続きをしなくても申請が出来ますが、この時に申請が認められるかどうかの確認をしなければいけません。

認められることが分かれば「申請→葬儀終了→手続き→支給」となりますが、認められなければ申請しても支給されません。

 

また支給されるまでは葬儀社への支払いができません。

もちろん葬儀社もその点の事情を理解したうえで依頼を引き受けるのですから、支給されることが確実なのだということがわからなければ依頼を引き受けることはできません。

つまり一般の人が生活保護受給者を装って生活保護者用の葬儀プランを利用することはできないのです。

それどころか生活保護のお葬式は一般的なお葬式のイメージとは程遠いので、費用は抑えられますが確実に後悔します。

「出来るだけ安いお葬式」を頼む場合は内容を確認しないとダメ

お葬式を依頼する人には、様々な事情を抱えている人もたくさんいます。

特に生活状況などの理由でどうしてもお葬式の費用を抑えなければいけない人もいるため、どの葬儀社であっても低価格のお葬式プランを準備しています。

ただし問題なのは「お葬式の内容」の方です。

 

「出来るだけ安いお葬式をしたい」といっても、お葬式に参加する人数が多いのであれば規模も大きくなります。

規模が大きくなれば費用だって高くなります。

もちろん式場の広さなども関係しますが、お葬式を行うために必要になるスタッフの人数も関係してきます。

ですから参加する人数が多くなるほど、見積金額は高くなります。

 

逆に言えば「規模が小さい」「お葬式に立ち会うスタッフの人数が少ない」の2つの条件があえば低料金でお葬式をすることもできます。

 

ただし低料金のお葬式では、プランの内容まできちんと確認しなければいけないです。

低料金のお葬式プランには「直葬」がありますが、これは特に注意が必要です。

直葬は「火葬をするためだけのお葬式」と考えた方がよく、通夜や告別式などは行いません。

お別れも火葬場の炉前で簡単に行う程度で、一般的なお葬式のイメージとは全く違います。

 

でも一般の人は「直葬=低料金のお葬式」とイメージしかなく、どのような内容なのか知らずに契約する人の方が多いです。

だから内容を理解せずに直葬を依頼した人の中には、直前になって「なんで家族なのにお通夜が出来ないのか?」「どうして火葬場でしか顔を見ることが出来ないのか?」と怒り出す人もいます。

こうしたクレームが出た場合の対応は葬儀社によっても違います。

 

比較的良心的な葬儀社の場合は「本来ならお断りしているのですが…」と一言付け加えたうえで、出来る範囲で希望に沿うように対応します。

ただこうした対応はあくまでも例外的なもので、一般的には「プラン内容のご説明の時点で確認させていただいていることですので」と要望を却下します。

 

現場で直接遺族の対応をするスタッフの気持ちとしては複雑なのですが、あくまでも会社の方針に従わないといけないのも社員である限り現実問題としてあります。

だから何とかしてあげたいという気持ちがあったとしても、対応できないこともたくさんあるのです。

こうなるとお互いにとって何も得になりません。

清算の時も何となくモヤモヤとした気持ちのまま支払いをすることになるはずです。

はっきり言ってこれはお葬式のクローズ場面としては最悪のパターンです。

だからお互いに嫌な想いをしないで済むためにも、安いお葬式プランを選ぶときには必ず内容を確認し納得したうえで契約してほしいのです。

まとめ

今回はお葬しいの打ち合わせ担当者としての本音も踏まえて、利用者サイドの素朴な疑問に対して答えてみましたが参考になったでしょうか?

お葬式の現場では確かにいろいろなことがあります。

特に費用の計算をする打ち合わせの時には、葬儀社と依頼者の心理戦といってもいいかもしれません。

 

ただ私自身が打ち合わせ担当者として現場に出ているからこそ思うのは、「あいまいな表現を使って葬儀の依頼をすると、家族にとってもあまり良いことはない」ということです。

「何をお葬式で最優先したいのか」をあいまいな表現で担当者に伝えても結果として得をするのは葬儀社の方で、依頼者であるあなたの得にはなりません。

せめてあなたがお葬式で最優先したいと考えていることだけは、打ち合わせ担当者に本音でぶつけることが大事だと思います。

スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました