男性の場合、お葬式の服装として「スーツ」を選ぶ人がいます。
確かにスーツはビジネス用として数着持っている男性の方が多いですし、その中にはブラック系のスーツも含まれているはずです。
でもお葬式の服装としてスーツを選ぶ場合には、「ブラック系のスーツ」というだけではマナー違反になることもあります。
そこで今回は、意外と判断がしにくいお葬式の男性用スーツの基本について葬儀社のスタッフが分かりやすくポイントを解説!
スーツでお葬式に行くときの注意点やスーツ選びのポイントなども併せて紹介していきます。
お葬式の服装で男性の正式な喪服はブラックスーツ
仕事の関係で「普段からスーツ着用」の人が勘違いしやすいのが、「黒い色のスーツ=ブラックスーツ」です。
確かに「ブラック=黒い色」ですから言葉だけで見てみればなにも問題はなさそうにみえますよね?
でも本来のブラックスーツは、ビジネスで使う「一般的な黒い色のスーツ」とは違います。
・ブラックスーツは黒の色が濃い
一般的な黒い色のスーツを着た人とブラックスーツを着た人が隣に並ぶと、その色の違いがすぐに分かります。
それぞれを個別で見た時にはその違いがあまりわからないのですが、並んでみるとブラックスーツの色の方が格段に濃いのがわかります。
もちろんブラックスーツと呼ばれるものであっても、素材によって色の濃さが変わります。
この場合は「濃い色のブラックスーツの方が格上」となります。
・喪服には3つのランクがある
ブラックスーツも喪服の一種ですが、正式には「準喪服」に分類されます。
実は喪服には「正喪服」「準喪服」「略喪服」の3つにランクが分かれています。
そしてそれぞれに身に着ける対象者が決まっています。
まず最もランクが高いとされるのが「正喪服」です。
正喪服は喪主や遺族、三親等以内の親族が身に着けます。一般の弔問客は正喪服をつけることはできません。
次が「準喪服」ですが、ここにブラックスーツは分類されます。
準喪服は一般弔問客が身に着ける正式な喪服で、遠戚に当たる親族も準喪服で対応するのが一般的です。
最近のお葬式は家族を含めたごく親しい親族たちで行う家族葬が主流になってきたこともあり、喪主や遺族でも準喪服を身に着けることが一般的になっています。
そのため現在では「男性用の喪服=ブラックスーツ」といわれるようになっています。
ちなみに最もランクが下とされているのが「略喪服」です。
ビジネスなどでも使う黒い色のスーツは略喪服に当たり、身内が喪服として身に着けることは基本的にNGです。
また一般弔問客も基本的には準喪服を身に着けるのがマナーですので、黒い色のスーツを喪服代わりとして着るのはあまりおすすめしません。
・男性の正喪服は「モーニングコート」
モーニングコートはフロックコートから誕生したものです。
フロックコートというのは、その名の通りコートのように見える丈の長いジャケット(コート)にベストとスラックスを着用することを言います。
これは主な移動手段に馬車を用いていた1800年代初頭の正式な外出着で、ヨーロッパでよく見られたスタイルです。
ところがこのスタイルは丈が長いことが原因で、馬に乗るにはとても不便でした。
そのため馬にまたがりやすくするように前裾に大きく斜めのカットを入れたのがモーニングコートです。
ですから男性の正喪服は、前裾が大きくカットされているモーニングコートとスラックス、さらにベストを合わせるのが基本です。
このスタイルは「男性の礼服」の中でも最も格上とされており、お葬式ではシャツ以外のアイテムを全て黒で統一します。
・男性のアクセサリーで使っても良いのはパールのみ
正式な装いをするとなると、アクセサリーも必要になります。
この場合も決まりがあります。
お葬式でアクセサリーとして使うことが出来るのは「涙の象徴」と呼ばれているパールのみです。
特にカフリンクスは男性で唯一認められている正式なアクセサリーです。
結婚式は正式なパーティーではパールまたは白蝶貝となるのですが、お葬式の場合は「悲しみを表現するアイテム」として使うため白蝶貝は使えません。
もちろんホワイトパールはOKなのですが、ブラックパールもOKです。
ですからカフリンクスをつけるのであれば「白または黒のパールのみOK」と覚えておきましょう。
・もっともスタンダードな男性の喪服「ブラックスーツ」
最近では喪主であっても正喪服であるモーニングコートでお葬式に参加する人はほぼいません。
20年以上前のお葬式の現場では喪主が紋付き袴をつけるのが一般的でしたし、その洋風バージョンとしてモーニングコートで参加する人もいました。
でも今のお葬式の現場では、喪主であってもモーニングコートをつけている人はいません。
紋付き羽織袴姿の喪主はごくたまに見かけますが、結婚式の披露宴会場以外でモーニングコート姿の男性を見かけることはなくなりました。
ですから男性の喪服は「ブラックスーツ」と考えておけばまず間違いありません。
そのため喪主や遺族・親族だけでなく一般弔問客もブラックスーツを着るのが今の常識になっています。
・ブラックスーツはシングルよりもダブルの方が格上
スーツのジャケットのスタイルは「シングル」と「ダブル」の2つがあります。
ビジネスなどで一般的なのは「シングルスーツ」の方ですが、ブラックスーツでは「ダブル」の方が格上になります。
ですから喪主や遺族としてブラックスーツを選ぶのであれば、同じブラックスーツの中でも各が上になるダブルを選ぶのがポイントです。
・ベスト着用が最近は主流
ブラックスーツの基本は「ジャケット」「スラックス」なのですが、よりフォーマル感を出すのであればこれに「ベスト」を合わせるのがポイントです。
ベストももちろん色は黒です。
ただしお祝いではありませんので、素材はスーツと同じ素材の物を選びます。
光沢があるものや装飾用の金具がついているものは、お葬式のベストとしてはNGです。
夏のお葬式では、休憩中や移動中にジャケットを脱ぐこともあります。
この時にシャツだけでいるよりもベストをつけていた方がフォーマルな印象を受けます。
最近は若い男性の方がベストをセットにしていることを多く見かけますが、体型が気になる中年男性こそベストがおすすめです。
気になるウエストラインを上手く隠してくれる効果があるので、新しくブラックスーツを購入するのであればぜひベストもセットで選んでみてくださいね。
お葬式の服装で黒いスーツを喪服として使う場合のポイント
事情があってどうしてもブラックスーツが準備できない場合は、黒いスーツをブラックスーツの代用とする方法があります。
でもこの時は次のポイントを十分注意してください。
・光沢がある素材はNG
一般的な黒いスーツの場合、光沢があるスーツもあります。
これは結婚式ではOKなのですが、お葬式では「光沢があるものはNG」というルールがあるのでダメです。
・できるだけ色の濃いスーツを選ぶ
ブラックスーツにできるだけ見せたいのであれば、黒いスーツの中でも最も色の濃いものを選ぶようにしてください。
ブラックスーツと一般的な黒いスーツでは、デザインが同じでも色の濃さですぐに違いが分かってしまいます。
お葬式の服装で男性のブラックスーツ選びのポイント
・スラックスにアジャスターが付いているものを選ぶ
男性であっても年齢によって体型に変化が出てきます。
特に30代後半から40代になるとウエストのサイズが大きく変わることがあります。
こうしたときでもアジャスター付きのスラックスであれば、多少サイズの変化があっても調整が出来ます。
ブラックスーツは毎年買い替えるものではありませんし、お葬式に参加する機会も頻繁にあるわけではありません。
ですから今から新しく買うのであれば、将来のことも考えて体系体型の変化にも対応できるタイプを選ぶのがおすすめです。
・オールシーズン用を選ぶ
女性の場合はジャケットの下に合わせるワンピースの袖の長さを調整することで、夏は涼しく冬は暖かく過ごすことが出来るようになっています。
ところが男性の場合は、シーズン問わずジャケットの下に合わせるシャツの長さは長袖です。
もしもあなたが「夏用」と「冬用」の2着を準備するのであればよいのですが、一般的には1着で対応する人の方が多いです。
そのためフォーマルウェアコーナーでも、男性用喪服ではオールシーズン用のブラックスーツの方が種類は多いです。
一度購入したとしても体型が変化すれば買い替えをしなければならなくなります。
種類が多いということは、それだけ価格のバリエーションも多いです。
ですから選ぶ目的やポイントに合わせて選ぶことが出来るのオールシーズン用の特徴です。
まとめ
男性の喪服は「ブラックスーツ」と覚えておくとまず間違いありません。
ただし黒いリクルートスーツを着ているだけでは「ブラックスーツを着ている」とは言えません。
「どうせわからないだろう」と思っている人も多いようですが、リクルートスーツとブラックスーツは明らかに違います。
この違いがわからないうちは「常識のある男性」とは言えません。
まずはこの違いを実感してみることが大事です。
何しろ言葉で説明するよりも実際に見比べてみた方が違いはわかります。
きちんとした常識ある男性として見られたいのであれば、一度紳士服売り場に足を運んでみてください。
そうすれば「ブラックスーツ以外は喪服として見てもらえない」という私の話も理解が出来るはずです。