お葬式の服装も、時代の変化とともにかなり許容範囲が広がっていました。
20年以上前であれば「女性がお葬式でズボンを履くなんて非常識」といわれていましたが、最近では「ズボンスタイルでもマナー違反じゃない」と考える人も増えています。
ただしお葬式でズボンを選ぶときには、十分に注意しなければならないこともあります。
そこで今回は、女性がお葬式でズボンを着る時に知っておくべきマナーについて葬儀社スタッフが分かりやすく解説!
お葬式だからこそズボンを選ぶときのポイントや注意点などもまとめて紹介します。
お葬式の服装として女性のズボンは基本的にNG
・お葬式での女性の正しい服装は「スカート」
お葬式に参加する時には「喪服」が基本です。
これは女性に限らず男性でも同じです。
喪服といっても、実はランクが3つに分かれています。
ランクの上から順に「正喪服」「準喪服」「略喪服」となります。
正喪服は最も格式の高い喪服となり、喪主や遺族、近い親族が身につけます。
それゆえに一般弔問客が正喪服を着るとマナー違反になります。
準喪服は「一般的な喪服」と言えます。最近では正喪服を着る立場にある喪主や遺族であっても準喪服で対応していることも多いです。
またそれに対してマナー違反といわれることはほとんどありません。
もちろん「一般的な喪服」ですので、一般弔問客としてお葬式に参加する場合も準喪服を着るのが基本です。
ここまで紹介してきた正喪服と準喪服は、基本的にスカートを合わせます。
そのため「正喪服でズボンスタイル」というものはありませんし、準喪服であってもズボンスタイルは非常に少ないです。
なぜならば女性がズボンスタイルを喪服とする場合は「略喪服」と呼ばれるからです。
略喪服はあくまでも平服に準ずる扱いになります。
ですからお葬式の式場に略喪服で出掛ける場合は「急な弔問だった」「取り急ぎ対面の為に足を運んだ」のような特別な事情の場合か、「通夜に参加する」の場合に限られます。
・ズボンでお葬式に参加するのは本当にNGなの?
「ズボンでお葬式に参加することがNGか?それともOKか?」については、「ケースバイケース」としか答えられません。
最近ではお葬式の喪服のスタイルも時代やファッションに対する考え方の変化などもあって、昔よりもかなりルールが緩くなりました。
ですからデパートのフォーマルウェアコーナーを覗いてみても、数は少ないですがズボンタイプの喪服も見られるようになっています。
ただし喪服をつけるタイミングはお葬式だけとは限りません。
お葬式が終わった後も四十九日法要や納骨式、年忌法要などの時には喪服をつけます。
特に年忌法要では「三回忌以降は近親者のみで行う」というのが現在主流の考え方になっていますので、三回忌以降は正式な喪服ではなく略喪服でもマナー違反になりません。
こうしたことも考えるとデパートのフォーマルウェアコーナーにズボンスタイルの喪服が展示されていたとしても、特におかしなことではありません。
もちろんお葬式でズボンスタイルの喪服を見かけることも増えてきました。
実際に現場で式場の誘導を担当している私が見ても、スカートとズボンの割合は8:2です。
数は少ないですがズボンスタイルの喪服で参列する人の姿も年々増えてきていますし、見た目にも上品な印象を受けるズボンスタイルの女性の姿も見かけます。
また高齢の参列者の場合は、「足元に不安がある」「スカートに慣れていないから体に負担がある」などの理由でズボンタイプの喪服を着ているケースも多いです。
ただやはり現場に立っていると女性の服装で圧倒的に多いのは「スカート」であり、ズボンタイプとなると式場の中でも目立つ存在であることは間違いありません。
ですから「ズボンがNG」というよりも「スカートの方が圧倒的に多い」というのが正しい答えといえるかもしれません。
・地域によっては「女性はスカート着用がマナー」のこともある
お葬式は時代によってそのスタイルも大きく変わってきました。
昔はお葬式といえば遺族・親族だけでなくご近所さんが総動員してみんなで手伝いながら行ったものです。
でも今は家族と一部の親族のみで行う家族葬が主流になっていますし、葬儀の手伝いなどは葬儀社がほとんどすべて行います。
それでもお葬式は「家族の意向」だけでは済まないのが現実です。
なぜならお葬式は地域の慣習やしきたりと深く根付いており、未だにこれに関しては厳しく守り続けている地域も多いのです。
このようにしきたりの厳しい地域では今でも「女性のお葬式の服装は喪服(正喪服または準喪服)」と考えている人が多く、こうした地域であなたがズボンスタイルの喪服を着ていれば「なんて非常識な人だ!」と周囲から顰蹙を買います。
つまり「ズボンがOK」というのは「全国的にズボンでもOKと考える地域が増えてきた」というだけであって、正式な喪服として全国的に認知されているスタイルとは言えないのです。
・一般弔問客としてズボンスタイルの喪服を選ぶのはOK
一般弔問客にはいろいろな事情でお葬式に参加します。ですから事情によっては「略喪服でも失礼に当たらない」というのが現状です。
主に一般弔問客で略喪服(パンツスーツ)を着るといえば、「ビジネスの関係で急遽弔問に訪れた」とか「仕事の都合でどうしても喪服に着替える時間がなかった」などがあります。
また自宅でお葬式をする場合は、ご近所さんも弔問に訪れやすいですのでズボンスタイルの人も多いです。
しかも「喪服用ズボン」ではなく「黒ぽいズボンに黒のシャツまたはジャケット」という略喪服に近いケースが多いです。
ちなみにお葬式の現場でスタッフとして焼香所の誘導をしていると、思わずびっくりするような服装のケースもあります。
よくあるのは「作業服姿」「職場のユニホーム」なのですが、中には「少年野球チームのユニホームのままで参列(実際にはチームの試合の合間に抜け出して弔問に来ていたのですが…)」という人もいます。
確かにこれは略喪服とも言えませんが、事情があることはその姿を見てもよくわかります。
それでも時間を作って弔問に訪れているのですから、遺族や親族にもその人の弔意は十分伝わります。
一般弔問客の場合はこのようなケースがたくさん考えられます。
そのため女性がズボンを履いていても問題がないケースもありますし、事情が分かる場合は黒以外の服で参加していてもマナー違反と考えないこともあります。
お葬式の服装で女性の喪主や遺族・親族がズボンを履くのはマナー違反
お葬式の服装についてのルールは緩やかになっているとは言いましたが、喪主や遺族・親族についてはやはりまだまだこれまでのしきたりを重視するのが一般的です。
喪服をつけるということは「喪に服す」というだけの意味ではありません。
亡くなった故人への敬意を表す意味もありますし、わざわざ足を運んでいただく弔問客に対するマナーでもあります。
一般弔問客ですら喪服で弔問に訪れるのですから、その方々をお迎えするホスト役の喪主や遺族・親族が略喪服で対応するのは失礼に当たります。
ですから喪主・遺族・親族としてお葬式に参加するのであれば、従来通りきちんとスカートの喪服を身につける必要があります。
お葬式の服装で女性がズボンを履くときの注意点
・靴はパンプスまたはヒール
ズボンでお葬式に参加する場合でも、女性であれば靴はパンプスまたはヒールです。
運動靴やサンダルなどはNGです。
・ストッキングは履きましょう
ズボンであってもストッキング着用は基本です。
最近のお葬式はイス席のホールで行われることが多いので靴を脱ぐということは少ないのですが、家族葬のような小さなお葬式では和室で行われることも少なくありません。
この時に素足のままで式場(焼香所)に上がるのは失礼です。
少なくともショート丈のストッキングは履いてくるようにしましょう。
まとめ
お葬式の女性の服装も、時代や考え方と共に変わってきているのは事実です。
でもお葬式は厳粛なセレモニーでもあります。また地域のしきたりなども未だに深く関係していますので、「正しいマナーを守る」ということが遺族だけでなく一般弔問客に対しても求められることがあります。
ですからよほどの事情がない限り、女性の場合は「きちんとスカートの喪服を着用する」と覚えておいた方が無難ですよ。