香典を準備する場合、まず知っておくべきなのは「基本的なマナー」です。
香典は本来「お葬式の足しになるように現金を準備する」という意味で準備するものではありません。
お供え物という意味があります。
ですから香典を準備するということは、お供え物としてふさわしいマナーを守ることが大事です。
そこで今回は「香典の基本的なマナー」をポイント解説!
香典袋の選び方から書き方、お札の準備の仕方など基本的に知っておくべきマナーを分かりやすく紹介します。
香典のマナーはたくさんある
・香典という言葉は仏教式のお葬式でしか使うことはできない
お葬式に現金を準備することを「香典を準備する」と言いますが、正しくは「不祝儀を準備する」です。
その理由は香典という言葉が仏教用語だからです。
お葬式では宗教儀式を行うことが一般的です。
そのため仏教であれば仏式、神道であれば神式、キリスト教系であればキリスト教式となります。
もちろんどのお葬式においても参加者であれば現金を準備するのが基本なのですが、仏式以外のお葬式では「香典」を名目にした現金を贈ることはできません。
仏教では仏さまや死者の霊に香を供えるということはとても大事なことです。
でも神道やキリスト教では死者の霊に香を供えるという考え方はありません。
もちろん死者の霊を慰めるために品物を供える(贈る)ということはあります。
ただしそれはお香ではないです。
神道の場合は榊や玉串になり、キリスト教系では生花となります。
そのため現金を贈る場合の名目も「御榊料」「御玉串料」「御花料」となります。
・香典袋の表書きは「御霊前」が無難
香典袋の表書きには品物を表す言葉のほかにも「御霊前」「御仏前」「御神前」などの言葉があります。
こうした言葉にも宗教や宗派によって使ってよいもの・悪いものがあります。
一般的に香典袋の表書きとしてよく見かけるのは「御霊前」と「御仏前」ですよね?
この2つは仏教式であれば基本的に問題はありませんが、神道やキリスト教系の場合はNGです。
そもそも「仏」という言葉を使うのは仏教しかありません。
「御仏前」という言葉には「仏さまの前にお供えするもの」という意味があります。
ですから仏という考え方がない神道やキリスト教系のお葬式で「御仏前」と書かれた香典袋を使うことはできません。
では「仏教式ではどちらを使ってもよいのか」という疑問が出てきますよね?
この答えはNOです。
仏教といっても様々な宗派があります。
でも死後の世界の考え方だけに注目すると2つに分かれます。
1つは「死者は死後49日目に仏の世界に生まれ変わる」という考え方です。
この考え方だとお葬式のタイミングでは死者の霊はまだ仏の世界にはいないということになります。
ですからお供え物をする時には「死者の霊の前にお供えするもの」となるので「御霊前」となります。
ただし宗派によっては「死者の霊は死後すぐに仏の世界に行く」という考え方をします。
この考え方を基にするとお葬式のタイミングですでに死者の霊は仏の世界に行っていることになります。
ですからこうした考えを持つ仏教の宗派の場合は「御霊前」ではなく「御仏前」を使います。
でもお葬式の参加者があらかじめどんな宗教宗派で行われるお葬式なのかを知ることは難しいですよね?
そこでオールマイティに使うことができるのが「御霊前」です。
御霊前は前述でも触れましたが「死者の霊の前にお供えするもの」という意味があります。
「死者の霊」という考え方は仏教だけでなく神道やキリスト教系にも通じます。
ですからどのような宗教のお葬式でも使うことができます。
ですから「香典袋の表書きにどんな言葉を使えばいいのか?」と悩んだ場合は「御霊前」を使うようにすると良いですよ。
・不祝儀だからこそ縁起が悪いことは避けるのがマナー
香典を準備するということは「不祝儀を準備する」ということになります。
不祝儀には様々なタブーがありますが、その一つひとつには理由があります。
基本的にこうしたタブーといわれる事柄の理由には「縁起が悪い」という言葉が出てきます。
たとえば「香典として現金を準備する時にはお札の枚数を奇数にする」というものがありますよね?
これには「偶数は割り切れる=縁が切れる」や「偶数=陰陽道で縁起が悪い数字(凶を表す数字)」という意味があります。
また「香典を準備する時には4と9の数字を避ける」というのも、4と9の数字は縁起が悪いといわれていることが由来にあります。
そして日本は神道の国ですから、死を穢れと考える風習があります。
汚れを祓うという意味があるからこそお葬式では清め塩が準備されているわけですし、死の穢れをできるだけ避けるためにも縁起が悪いものは使わないようにしてきました。
こうした日本古来の風習は現在のお葬式でもしっかりと引き継がれています。
そしてこうした風習は現在のお葬式のマナーの原点となっているのです。
お金を準備する時は相場やお札の枚数にも気を付ける
・お札の枚数は奇数にする
お葬式では縁起が悪いとされる偶数は避けます。
偶数を縁起が悪いとする理由は諸説あります。
古くから日本で吉凶占いとして重要視されてきた陰陽道の考え方では【偶数=陰=凶】【奇数=陽=吉】とあります。
また偶数は2つに分けることができる数字なので「縁が切れる」という意味にもなります。
そのためお葬式に限らす結婚式のような祝儀においても偶数は縁起が悪いとして避けるのがマナーです。
・相場は故人との付き合いや関係によって異なる
香典の金額相場は故人との付き合いや関係によって変わります。
世間では「気持ちの分を包めばよい」という言葉を耳にしますが、このセリフを言葉のままに解釈すると「金額はいくらでもよい」ともいえます。
でもそれは違います。
このセリフを正しく解釈するならば「金額の相場を目安にするのが基本だけど、あなたの気持ち(弔意)として多めに金額を包んでもよい」となります。
ですから基本的には相場にあった現金を準備することが基本となります。
ただし「気持ちの分多めに包んでもよい」という言葉には「過ぎるではいけない」という意味も含まれています。
例えば一般会葬者としてお葬式に参加するのに香典に3万円包んだとします。
この場合遺族としては「ありがたい」という気持ちよりも「恐縮する」という気持ちの方が強いです。
そもそもこのケースであれば香典の金額は3,000~5,000円が相場です。
それと比べて3万円の香典は明らかに金額が多すぎます。
相場の約10倍の香典を包んできたあなたに対して遺族は「これだけの金額を包むということは、生前一体故人とどんな付き合いがあったのだろう?」と逆に不審に思います。
もちろん故人とあなたの付き合いを家族が十分理解しているのであれば問題ありません。
でも家族が直接あなたと付き合いがないのであれば、こうした疑問を持つのは当然ですよね?
つまり「過ぎるではいけない」というのはそういうことなのです。
あくまでも香典の相場を参考にするということが大事なポイントであり、それ以上に弔意を表すのであれば香典とは別の形をとるがマナーなのです。
香典袋の書き方にも基本的なマナーがある
・文字を書くときには筆文字が基本
香典袋や中袋に文字を書き入れる時には筆文字とします。
これは香典が「単なる現金」ではなく「死者の霊に供える大切な品物」だからです。
例えばお中元やお歳暮の品物にのし紙をつける場合、あなたはボールペンを使って名前を書き入れますか?
それはないですよね?ではその理由は何でしょうか?
「相手に対して失礼になるから」
そうですよね?ではなぜお中元やお歳暮を贈る相手に失礼になるのでしょうか?
答えは「目上の人(立場が上の人)に対して贈る品物だから」ですよね?
だからこそ日本のしきたりにならって筆文字で名前を書き入れるわけです。
香典も同じです。
死者の霊は生きているあなたよりも立場は上です。
立場が上の人に対して供える品物なのですから、相手に失礼のないように筆文字を使う必要があるのです。
もちろん筆文字の場合には縦書きが基本ですので、香典の文字も縦書きとなります。
・薄墨を使う
お葬式の香典では墨の色は黒墨ではなく薄墨を使います。
これは「悲しみのあまりに涙で墨が薄くなってしまった」という意味があります。
つまりあなたの悲しみの深さを表すのです。
ですからお葬式に香典を準備する場合には薄墨を使うと覚えておいてくださいね。
香典の基本マナーまとめ
香典の準備の仕方には様々なマナーがあります。
でもそのマナーの一つひとつにはきちんと意味があり、お葬式のスタイルが変化した現代でもしきたりとして受け継がれています。
また香典のマナーには香典を送る人の悲しみを表すという意味も含まれています。
ですから細かいように思えるかもしれませんが、香典を準備する以上きちんと守るということが大事なのです。