お葬式の服装は「故人に対して敬意を払う」という意味と「喪に服す」という2つの意味があるので、細かな点においてもマナーがあります。
確かにマナー違反の服装であっても、よほどのことがない限りその場で注意を受けることはありません。
ただしお葬式はあなただけではなく、周りの方への配慮も必要になります。
そのことを考えるとやはりきちんとした服装で参加することが大切です。
ただあまりにもいろいろな部分にマナーがあるので、「これくらいなら大丈夫なのでは?」と思うこともありますよね?
その代表が「靴」です。
ところがこの靴のマナー違反はあなたが思っている以上に目立ちます。
そこで今回は、お葬式に履いていく靴に関する質問でよくある「スェードの靴はマナー違反になる?ならない?」について葬儀社スタッフが分かりやすく解説!
靴が原因で「あの人はマナーを知らない人ね」といわれないためのポイントについても説明していきます。
お葬式に履いていく靴がスェードでも大丈夫!?
スェードの靴には光沢はありません。
ですから「光沢があるものは身につけない」というお葬式のマナーからいえばOKのように思われがちです。
でもスェードの靴というとどちらかというとカジュアルな服装に合わせて履くものではないでしょうか?
そもそも子羊の皮を使っていますので、一般的な革靴よりも丈夫な素材です。
またなめした革の内側の毛を立たせているので、独特の温かみがあるのもスェードの靴の特徴ですよね?
つまりスェードの靴は「オシャレ靴」なのです。
お葬式ではオシャレをする必要はありません。
むしろオシャレな要素がある服装はマナー違反になります。
また丈夫な素材であるスェードの靴はショートブーツなどにもよく使われますよね?
ブーツもお葬式用の靴としてはNGです。
そもそもブーツは防寒用としても使われますが、オシャレアイテムとしても使われますよね?
この「オシャレ」という部分がお葬式ではNGになります。
・黒いスェードでもお葬式場ではとても目立つ
スェードの靴にはカラーバリエーションも豊富です。
これは一般的な革靴とは違う特徴とも言えます。
ですから茶色のスェード靴が多いのですが、黒い色のスェード靴もあります。
ただしいくら黒い色でも、スェード靴は革靴とは違う独特な光沢感があります。
ですから「黒い色であれば目立たないのでは?」と思うかもしれませんが、実はすぐにバレてしまいます。
もちろんお葬式が行われる式場の照明はやや落としてあるので、式場で焼香をする時にはそれほど目立つことはないかもしれません。
でもお葬式場となるホールでは、祭壇に近い場所(棺や遺影・遺骨が安置されている場所)にはスポットライトが当たります。
また出棺の見送りの際は参加者も全員屋外に出て立ち会います。
こうした場所ではスェードが持つ独特の光沢がはっきりと見えてしまいます。
ですから「黒い色であればバレないはず」という考え方はやめておきましょう。
思いもよらないところでスェード靴だということがバレてしまいますよ!
お葬式に履いていく靴のマナーは!?
お葬式の服装の基本は「黒い色を身に着ける」「光沢がない物を身に着ける」「露出を避ける」の3つになります。
・なぜ黒い色を身に着けるのか?
黒い色には「喪に服す」という意味があります。
ですから遺族・親族であれば真っ黒な喪服を見つけますし、男女問わず小物は黒い色で統一します。
では一般弔問客の場合はどうなのでしょうか?
ここで考えてほしいのは「お葬式の主役は誰なのか?」ということです。
どんなセレモニーにも主役は必ずいます。
結婚式の場合は新郎新婦が主役ですし、学校の入学式や卒業式の場合は学生である子供たちが主役です。
そのことから考えれば、お葬式の主役が亡くなった人(故人)であることはすぐにわかるはずです。
そしてここで問題になるのですが、フォーマルなセレモニーでは主役を引き立てるようにするのが参加する側のマナーということです。
特にお葬式の場合は「主役である故人に対して敬意を表する」ということが参加者には求められます。
もちろんお葬式会場で手を合わせるということも敬意を表すことになりますが、黒い色の服を身に着けてセレモニーに参加するということも同じ意味になります。
そのためお葬式では遺族・親族だけでなく、一般弔問客であっても黒い色のものを身に着けるのがマナーとされています。
・光沢がない物を身に着ける
光沢がない物を身に着けるのは、「主役よりも目立たない」という意味もありますし「喪に服しているから」という意味もあります。
そもそもお葬式にまつわる一連の儀式は、全て故人が中心となります。
もちろんいくら主役とはいえすでに亡くなっている人が自ら言葉を発することはできません。
当然亡くなった本人が弔問客に対してお礼の言葉を伝えることもできません。
そのため故人の代わりとして様々な対応をするのが「喪主」です。
喪主は確かにお葬式の施主であり責任者ではありますが、本来の意味である「故人の代理人」という立場から考えればお葬式の主役とは言えません。
その上故人から見て最も近い人物であるわけですから、「これから喪に服します」ということを宣言する意味も込めて濃い黒い色の喪服を身につけます。
これは喪主だけでなく遺族や親族にも同じことが言えます。
そのため喪に服している意味を表すために、喪服だけでなく小物においても光沢のない物を選ぶのが最低限のマナーです。
一般弔問客においても、基本的な考え方は同じです。弔意を表すとともに故人に対して最大限の敬意を払うという意味があります。
そのためにも光沢のある物は身につけません。
・肌の露出は避ける
お葬式の服装ですから、結婚式のように肌の露出はNGです。
ですから夏のお葬式でもジャケットを身に着けるのがマナーですし、女性の場合も肌の露出を抑えるためにスカートの丈はひざ下より長くするのがマナーです。
・光沢がないのであればスェードの靴でもOKなのでは?
お葬式の3大基本の1つである「光沢がない物を身に着ける」という点から見れば、光沢のないスェードの靴はマナー違反にはならないといえるのかもしれません。
でもこれは大きな間違いです。
スェードはなめした子羊の皮の内側を起毛させた素材です。
そのため革製品といっても表面には毛足が見えており、触った時も革製品とは全く違った手触りになります。
ただしスェードの靴は男性・女性問わずマナー違反となります。
これは「光沢のある・なし」とは関係ありません。
もっと大事な「お葬式のマナー」と関係しています。
お葬式で履く靴で最も格が上といわれるのは「布」
喪服にも「正喪服」「準喪服」「略喪服」の3つのランクがあり、最も格上となるのが「正喪服」です。
使われている素材も高級ですし、何よりも漆黒といわれるような深い黒い色をしているのが正喪服の特徴です。
ただし正喪服を身に着けることが許されているのは「喪主」「遺族」「三親等以内の親族」に限られます。つまりそれ以外の人は正喪服を着てはいけないのです。
では靴にもランクはあるのでしょうか?
答えは「〇」です。
男性の場合は光沢のない黒い革靴が格上となります。
女性の場合は「布製のパンプス」が格上となります。
布製であればもちろん光沢はありません。
またパンプスはかかとに高さのないデザインのものをいいます。
そのため正喪服の場合はヒールではなくパンプスを履きます。
ただ女性の場合に問題となるのは「ヒール」です。
ヒールにもかかとの高さによって「ローヒール」「中ヒール」「ハイヒール」に分かれます。
遺族・親族の場合はパンプスまたはローヒールであれば正式な服装となります。
ただしハイヒールはかかとの高さが7cm以上となるので、遺族・親族だけでなく一般弔問客であってもNGです。
ちなみに略喪服の場合はハイヒールをつけても、一応許容範囲内となります。
ただし略喪服は一般的な喪服とは異なりますので、三回忌以降の年忌法要ややむを得ない事情がある場合を除き喪服として着用することはできません。
ですから布製であってもハイヒールの場合はお葬式にあった靴とは言えません。
まとめ
お葬式の場合、靴を含めた小物についても細かなマナーがあります。
もちろんこうしたマナーはあくまでも慣習に基づくものですし、お葬式の服装についても時代や地域によって考え方も随分と変わってきました。
ただしあくまでもお葬式はフォーマルなセレモニーになります。
そのためTPOに合わせた服装で参加することが重要になります。
そのことから考えれば、カジュアルな印象のあるスェードの靴はフォーマルなお葬式の服装として合わせる靴としてはNGなのです。