お葬式の服装のマナーは、喪服以外にもあります。
男性の場合は女性と比べて小物が少ないのですが、だからこそ注意が必要なのが「靴」です。
基本的にお葬式では小物も含めて黒い色を身に着けるのが基本です。
ただお葬式は結婚式のようにあらかじめ準備をする時間がないのも事実です。
喪服であればどうしても準備が出来ない場合は黒いスーツで代用することもできますが、靴はさすがに難しい…。
さらに普段から革靴を履くことがない場合は、黒い革靴がないことも…。
このような場合、茶色い革靴はNGなのでしょうか?
それとも状況によっては許容範囲内として見てもらえるのでしょうか?
今回はその判断のポイントについて分かりやすく説明します。
お葬式に男性がはいていく靴のマナーは!?
お葬式に参加する人の立場はそれぞれ違います。
故人と血縁関係がある遺族や親族の場合もありますが、友人やビジネス上で付き合いがある人(またはその人の家族が亡くなった場合)もお葬式には参加します。
もしもあなたが遺族としてお葬式に参加するのであれば、どんなに時間がなくても黒い靴を準備するのがマナーです。
なぜならば遺族は「喪に服す」という意味があるため、黒い色を身に着けるのが慣例だからです。
ですからあなたが遺族でありながら黒以外の靴を履いていたとすれば、マナー違反であるだけでなく参列してくださるお客様に対しても大変失礼な態度をとっているということになります。
では親族の場合はどうでしょうか?
親族の場合も「三親等以内の親族」であれば遺族同様の服装をするのがマナーです。
三親等となれば「孫」も含まれます。もしもあなたが故人の孫ですでに成人しているのであれば、遺族と同じように正装でお葬式に挑むのがマナーになります。
ただし、実際のお葬式の現場では孫の服装のマナー違反が良く見られます。
例えば「色は黒だけれど結婚式用のネクタイをしている」「シャツのボタンに色がついている」「タイピンをつけている」などがあります。
これは全てマナー違反です。
そもそもどれもオシャレとしての要素があるので「喪に服す立場にある人の服装」としては適していません。
たださすがにこうしたマナー違反はほんの一部です。
それよりも多いのが「靴のマナー違反」です。
孫はお葬式のセレモニーでは遺族席に座ります。
同じ世代の親族の場合はお葬式の係を頼まれることが多いので、孫よりも目立ちません。
しかも男性の場合は駐車場係や受付を頼まれるので、多少色が違う程度であればそれほど問題になりません。
その代り返礼品係を頼まれた場合はNGです。
返礼品係は、会葬者の帰り口で返礼品を渡す係です。
これは単に品物を手渡すのではなく、遺族の代わりに会葬者にお礼のあいさつをする大事な役目になります。
ですから相手に失礼にならない服装をする必要があります。
そんな大事な意味が含まれているのに返礼品係を頼まれたあなたの足元が茶色い靴であったならば、お客様に対して失礼になるだけでなく遺族に恥をかかせることにもなります。
このように遺族・親族の服装には、正しい服装をすることそのものに意味があります。
ですから遺族・親族としてお葬式に参加するのであれば、「どうせ足元は見られないはずだから」などと思わずきちんとマナー通りの靴を準備するようにしましょうね。
お葬式に男性がはく靴で茶色が許容範囲内とみなされるケース
・一般弔問客の場合
最近は遺族やごく限られた親族だけで行う小規模のお葬式「家族葬」が主流になりつつあります。
そして家族葬の場合は、訃報連絡をする範囲の決定も遺族が行います。
そのため親族であっても訃報連絡をしないケースも最近は増えています。
ただし家族葬であっても一般の弔問客が参加をしてはいけないということではありません。
もともと日本のお葬式は地域が一体となって行うことが一般的でした。
遺族・親族はもちろんですが、近所の人たちが集まって祭壇や棺づくりや食事の支度などをしました。
地域によっては畑仕事も遺族の代わりに近所の人が行っていたこともあります。
そのためお葬式はとても多くの人が集まり、地域が協力して行うものだったのです。
もちろんこの当時のお葬式はとても大変でした。
でもお葬式の準備や運営に関することを全て地域の人が肩代わりしてくれたことで、遺族は故人との別れの時間に集中することが出来ました。
ここで登場したのが「葬儀社」です。
葬儀社が登場することによって、それまで地域の人が行ってきたお葬式の準備や手配は全て葬儀社が代行してくれるようになります。
そのため地域がお葬式に関わることがなくなっていきます。
ただし葬儀社は「サービス業」としてお葬式の施工を請け負うのですから、喪主や遺族は葬儀社に依頼する内容を事細かく打ち合わせをしなければならなくなります。
そのため喪主や遺族は、大切な人との別れの時間に集中することが出来なくなっていきます。
この状態が一般的になってきた頃から、お葬式に対する日本人の考え方や価値観は大きく変わります。
そして「最後のお別れは個人と直接つながりがある人だけでしたい」と考える人が増えてきます。
そのためお葬式の規模はどんどん小規模化し、現在の家族葬の形になりました。
でも家族や親族でなくても、故人と直接縁のある人はいます。そういう人が訃報を知り「今であればまだ最後のお別れに間に合う」と分かれば、取り急ぎ式場に足を向けるのが普通の行動ですよね?
このような場合は「やむを得ない事情」として茶色の靴であっても許容範囲内として考えます。
ただしこのような状況でお葬式に参加する場合は、参加する側としても「失礼なのは承知で最後のお別れをさせてほしい」ということを遺族に伝え、了解を得ることが大事です。
また対面が出来たならば式場内で長居はせず、できるだけ迷惑にならない場所で見送りに立ち会うという心構えは必要です。
・子どもの場合
子どもの場合は、「子供の年齢に応じた服装であればよい」というのがお葬式の考え方です。
ですから革靴を準備する必要はありません。
普段履いている運動靴でも大丈夫です。
お葬式の為に靴を準備するのであれば白が望ましいですが、黒やグレーでも構いません。
また靴のデザインがシンプルで黒っぽい茶色であれば、それでもマナー違反にはなりません。
ただし明るい色の茶色は避けた方が無難です。
お葬式に男性がはく靴の正しい選び方は!?
・素材は本革または合成皮革
正式なフォーマルシューズで選ぶのであれば、やはり本革のブラックシューズです。
ただし本革の場合は値段も高いですし、手入れも大変です。
そのため合皮(合成皮革)の部落シューズでも問題ありません。
・デザインはストレートチップ
男性用シューズにも様々なデザインがありますが、お葬式のようなフォーマルなシーンでは紐をほどいても内羽が表に見えてこない「ストレートチップ」が最もスタンダードです。
ストレートチップの見た目の特徴は「つま先部分に横一文字のラインがある」という点です。
ですからシューズショップでストレートチップを探す時には、つま先部分のラインをチェックすると見つけやすいです。
ストレートチップと同じくフォーマルなお葬式用のメンズシューズとして適しているのが「プレーントゥ」です。
プレーントゥもシンプルなデザインかつ清潔な印象に見えるので、お葬式だけでなく結婚式な度でも使うことが出来るオールマイティーなメンズシューズとして人気があります。
見た目の特徴は「つま先にラインがないこと」です。
ちなみにストレートチップは10代後半から30代男性に人気があるデザインです。
・色はブラック
色は喪服と同じブラックを選びます。
意味としては「喪に服す」という意味があるのですが、「普段スーツをつける時の靴選びの考え方と同じ」と思えばわかりやすいはずです。
だって全身黒い装いなのに、足元だけ茶色や黒以外の靴を合わせればどう考えてもおかしいですよね?
ですから難しく考えず、「黒いスーツに合う靴=黒い靴」と考えればよいだけですよ。
まとめ
男性用のお葬式の靴は、「黒い革靴」が基本です。遺族や親族であれば、デザインも清潔感があるストレートチップまたはプレーントゥにした方が良いでしょう。
ただし成人した男性がお葬式に茶色の靴を履くのは、やむを得ない事情がない限りマナー違反です。
女性ほど小物が多くない男性だからこそ靴のマナー違反はとても目立ちます。
ですからよほどの事情がない限り、茶色の靴でお葬式に出かけることは避けてくださいね。