お葬式ではいろいろな場面でマナーがあります。
特に言葉にして直接伝える「挨拶」においては「相手に失礼にならないこと」を第一に考えるのでマナーもちゃんとあります。
でも実際にお葬式の現場にいると、マナー以上に大事なことがあることがわかります。
そこで今回はお葬式の受付での挨拶の基本をまずはおさらい!
挨拶のマナーの基本を踏まえたうえで、実際のお葬式の現場で見かけるちょっと心温まる挨拶の実例を紹介してみます。
お葬式の受付の挨拶は5つのポイントが出来ていればOK
お葬式の受付は、式場に入る前に立ち寄る場所です。
受付には親族など故人の関係者が対応しているので、単に記帳をして香典を渡すだけの場ということではありません。
マナーもあります。
でもマナーといっても難しいことはありません。
対応する側にしても弔問する側にしても、共通する5つのポイントをしっかりと意識すれば問題ないのです。
ポイントその① 何事もお辞儀から始める
受付での挨拶に限ることではありませんが、お葬式は正装をして参加するフォーマルなセレモニーです。
しかもカラーフォーマルとは違いブラックフォーマルであるお葬式は「人の死を悼む場」ですから、マナーも大事です。
そして日本人にとってマナーといえば欠かせないのが「お辞儀」です。
お辞儀の仕方の美しい人は、すべての所作が上品に見えます。
また相手に対する印象もよく、フォーマルなシーンにおいては何よりも大事にされます。
お辞儀には角度によって3つのタイプがあります。
まず最も角度が浅いお辞儀のことを「会釈(えしゃく)と言います。
腰を折る角度は概ね15度です。
朝夕の挨拶などで行うお辞儀が会釈にあたりますが、初対面の相手に初めて会ったときにするお辞儀の基本でもあります。
次に腰の角度が概ね30度になるお辞儀を「敬礼」と言います。
これは会釈とは違い、相手に対する敬意をこめたお辞儀になります。
お葬式では特に焼香をする時のお辞儀がこれにあたります。
最後が最も角度の深い「最敬礼」です。
腰の角度は概ね45度ですから、非常に深いお辞儀といえます。
お葬式では喪主の挨拶のお辞儀がこれにあたります。
ではお葬式の受付でのお辞儀ですが、これは「会釈」と「敬礼」のミックスになります。
受付に並び自分の番が来た時、記帳台に進む前にまず行うのが「会釈」です。
この時に初めて受付係と弔問客が顔を合わせて対面するわけですから、お互いの存在を確かに確認したということを表すために会釈をします。
記帳を済ませ香典を盆の上に香典を置いたら、お悔やみの言葉を述べ深いお辞儀(敬礼)をします。
これに対して受付係は挨拶の言葉を述べ、深いお辞儀(敬礼)をして感謝の気持ちを表します。
ポイントその② 相手に不快な思いをさせない表情
受付の際には表情も大事なポイントです。
お迎えする側は「わざわざ来ていただいてありがとうございます」という気持ちが伝わる表情を心がけます。
また弔問する側は、「お辛い気持ち、お察しします」という思いやりの気持ちを持つことが大事です。
ですから表情においてもその気持ちが伝わるように意識します。
ポイントその③ 聞き取りやすい言葉と声
挨拶ですからお辞儀だけでは成り立ちません。
やはり何らかの声掛けは必要です。
でもこの時に何を言っているのかわからないようでは、相手に不快な想いをさせてしまいます。
声の大きさにも注意が必要ですが、聞き取りやすいように話すことも大事です。
ポイントその④ 身だしなみはきちんと!
受付は式場の外に設置されていますが、実際にはすでに受付をする時点でお葬式は始まっています。
ですから迎える側も弔問する側も、正しい服装でその場に立つことが最低限求められるマナーです。
ポイントその⑤ 言葉遣いは正しく!
お葬式は確かにフォーマルな場面ですが、使い慣れない難しい言葉を使わなければならないということではありません。
もちろん目上の人に対しての挨拶では、相手に対して失礼のない言葉を選ぶことも大事なことです。
でもそれよりも「正しい日本語で対応する」ということの方が大事です。
例えば「受付はここでいいですか?」といういい方は普段使いとしてはよく口にしますが、正しくは「受け付けはこちらでよろしいですか?」になります。
また記帳が終わった弔問客を式場に案内する場合に「式場はあっちです」とジェスチャーを交えて案内する若い係の肩を見かけますが、これもマナーとしては大変失礼です。
ジェスチャーを交えて案内するところはとても良いのですが、「あっち」という使い方は正しくありません。
正しく対応するのであれば、「式場はあちらです」と声をかけ式場の方向に手をかざして指し示すべきです。
確かにこうしたことはちょっとしたことかもしれません。
また受付に滞在する時間はほんのわずかですから「そこまで気にしなくても…」と思うかもしれません。
相手に対して不快な想いをさせることはNGですし、迎える側は「感謝の心」弔問客は「思いやりの心」が伝わるようにしなければ意味がありません。
だからこそ「たかが」ではなく「されど言葉遣い」なのです。
お葬式の受付での挨拶の仕方
・受付係の場合
記帳台の前に弔問客の姿が見えたら、会釈をしてお迎えします。
この時には姿勢にも注意してください。
弔問客が記帳台の前まで歩み寄ってきたら、いったん足を止めて一礼します。
それに合わせるようにあなたも一礼します。
この時の手の位置ですが女性は前、男性は真横にまっすぐにおろすのが正式です。
なお女性の場合は手を合わせますが、男性は軽く握りこぶしを作ります。
弔問客がお悔やみの言葉を述べますので、それに対して「お忙しいところありがとうございます」または「ご丁寧に恐れ入ります」と答えます。
香典を受け取ったら深く一礼をし、式場に誘導をします。
この時にはお辞儀と誘導を同時にしないようにします。
あくまでもお辞儀はきちんとするのがマナーです。
・弔問客の場合
式場がある敷地内に入る前にまずは身だしなみをチェックしてください。
移動中に髪が乱れてしまうこともよくあるので、鏡などを見てきちんと整っているか確認します。
その後受付に進みます。
受付係の顔が認識できる位置まで来たら、軽く一礼(会釈)をします。
そして記帳台の一歩前まで進んだら「この度はご愁傷さまです」と挨拶をし受付を済ませます。
この時あまりにも長い挨拶をするのはNGです。
受付を済ませたら、もう一度深くお辞儀(敬礼)します。
そして「お参りさせていただいてよろしいでしょうか?」と一言声を掛けます。
特に問題がなければ受付係の案内に従い式場へ向かいます。
お葬式の現場で見かけた心温まる挨拶の実例
・感情が落ち着くのを待ってから式に参加する
この時の故人は若くして事故で亡くなりました。
突然の訃報で駆け付けた男性の弔問客が、受付に飾られていた故人の写真を見た瞬間感極まって号泣してしまいました。
でもその男性は「このままではいけない」と受付の列から外れ、気持ちが収まるのを待ってから改めて受付に向かいました。
これはとても大事なことだと思います。
もしも号泣した状態のまま受付をしていれば係の人も困ってしまうでしょうし、周りの方も「何事か?」とびっくりしてしまいます。
この男性が受付まで戻ってくるまでにはしばらく時間がかかりましたが、戻ってきた男性に対して受付係の女性が「ありがとうございます。きっと○○も喜んでいると思います」と答えていました。
このやり取りは、そばで見ていてもとても心に響きました。
・何も言わずに黙って手を握る
家族葬の現場では式場の入口に受付があるので、故人と近い遺族が受付の対応をすることがよくあります。
この時の現場は本当に家族と数人の親族だけの小さなお葬式だったのでわざわざ受付を作らず、喪主が弔問客を直接迎え対応していました。
この時の喪主は確か50代くらいの女性(故人の妻)で、弔問に訪れたのは女性の最も親しい友人だったようです。
ただし周りには親族がいますので、喪主の友人は簡単なお悔やみの言葉を述べた後、黙って喪主の手を両手で握りました。
そのことに対して喪主は何か言葉を返すわけでもなく、ただ涙を流しながら何度もうなずいていました。
この行為そのものがマナーに合っているのかといわれると判断が難しいのですが、この場面においてこの2人の関係性の中では最も良い挨拶の仕方だと思いました。
まとめ
お葬式の受付は、すでにお葬式に参加するのと同じです。
ですから迎える側も参加する側も式場でお別れの作法をするのと同じような気持ちで挑むのが正しい姿です。
でも一番大事なことは「相手に対して感謝と思いやりの気持ちが伝わること」に限ります。
これをなくしてマナーだけを意識した挨拶は冷たい印象を受けますし、場合によっては相手に対して大変失礼な態度となります。