お葬式の服装は「礼服着用」がマナーです。
お葬式用の礼服といえば「喪服」になりますが、その特徴といえば「全身黒い色の服」とも言えます。
そのため「黒い色のスーツであれば問題はないのでは?」という意見も多いです。
ところがこれは大きな間違いです。特に女性の場合は服装に関するマナーがたくさんあります。
その中には「スーツはマナー違反」というものも含まれます。
ではどうして女性はお葬式の礼服としてスーツを着るのがマナー違反になるのでしょうか?
その理由を「お葬式と礼服の関係」を例に挙げながら、わかりやすく説明していきます。
お葬式では「黒い礼服」を着ることに意味がある
お葬式の服装の特徴といえば「黒い服」ですよね?
この考え方は間違いではありません。
でも黒い服であればなんでもお葬式用の礼服として着ることが出来るというわけではありません。
そもそも「礼服」は「正装」ともいいます。
正装をする必要がある場所といえばフォーマルなセレモニーが行われる場所ですよね?
フォーマルなセレモニーといっても、大きく分けると慶事と弔事の2パターンあります。
ちなみに結婚式のようなお祝いのセレモニーは「カラーフォーマル」が礼服になります。
これに対してお葬式のような弔事のセレモニーでは「ブラックフォーマル」が礼服になります。
カラーフォーマルもブラックフォーマルも、服装のマナーには決まりがあります。
たとえば結婚式に出席するとなった場合、カラーフォーマルを準備しますよね?
でもこの場合も結婚式が行われる時間によってカラーフォーマルのドレスコードが変わります。
もちろんドレスコードが変わるということは、小物のドレスコードも変わります。
例えば女性の場合、フォーマルドレスをつける時には必ずフォーマルバッグを準備しますよね?
このフォーマルバッグも昼と夜では種類を変える必要があります。
昼の結婚式では、光物の装飾が付いているバッグはNGです。
もちろんスカートの丈も長すぎるものはマナー違反となります。
そのため結婚式に持っていくバッグであっても、ドレスとのバランスに合わせてレースなどの装飾が付いたものを選びます。
これに対して夜の結婚式では、ドレススタイルも華やかさが求められます。
そのためドレスに合わせるバッグも光沢があるものを合わせます。
ではお葬式のようなブラックフォーマルではどうなのでしょうか?
ブラックフォーマルでは服だけでなくバッグや靴などの小物も全て黒で統一します。
アクセサリーも「涙の象徴」とされるパール(ブラックオニキスや黒珊瑚も涙の象徴とされるのでOK)のみとされています。
光を反射するようなものは一切つけてはいけませんし、化粧やヘアスタイルも華やかな印象になってはいけません。
その理由は「喪に服す」という意味があるからです。
お葬式は人の死が関係します。
「死は穢れ」という考え方もありますが、これは神道の考え方に由来します。
もともと日本は神道の国でしたので、神様が最も嫌う穢れを避けるという意味がお葬式にまつわる様々な事柄に関係しています。
もちろん現在では宗教に関してもそれぞれの価値観があります。
ですから「宗教に由来するマナーであれば無視しても良いのでは?」と思うかもしれません。
ただし日本のお葬式には古くからのしきたりや風習が未だに強く根付いています。
そのためこうしたしきたりや風習はお葬式におけるマナーと深く関係しています。
喪服は「喪に服すための礼服」
喪服は礼服の一種です。
礼服には「正礼服」「準礼服」「略礼服」「平服」と4つのタイプに分かれますが、喪服はこのうちの「略礼服」にあたります。
そもそも礼服には和装礼服と洋装礼服がありますが、日本は着物文化が基本にありますから正礼服は和装になります。
ちなみにお葬式で洋装礼服が一般的になったのは昭和になってからのことで、それ以前は正式な喪服は着物でした。
ただし洋装礼服が一般的となってからも、お葬式の礼服の色は「黒い色」とされてきました。
これは単に「お葬式だから目立たないようにする」という意味で黒い色を着ているわけではありません。
お葬式で黒い色の服を身に着けるのには「喪に服する」という意味があります。
つまり喪服という呼び方は「喪に服すための礼服」というところからきているのです。
そのためお葬式に参加する場合は喪服を身に着けるということがマナーとなっています。
礼服としてお葬式に女性がスーツを着ることがマナー違反となる理由
お葬式で黒い色の礼服を着るのは「喪に服する」という意味があるということがわかりました。
その意味だけで考えるのであれば、特に喪に服す必要がない一般の弔問客であれば黒いスーツを着ていても良いのではないかと思いませんか?
でもこれも正しい解釈ではありません。
遺族や親族が喪に服するのは当然のことです。
でもお葬式には遺族や親族以外の人も参加します。
それは故人や遺族との付き合いがあるから参加するはずです。
でもこうした立場でお葬式に参加する人まで喪に服する必要はありません。
ところがこうした立場の人もお葬式に参加する場合は喪服着用がマナーです。
それならばどうして喪に服する礼服である喪服を、一般の弔問客が着なければいけないのでしょうか?
それは「遺族や親族の悲しみに寄り添う」という意味があるからです。
一般の弔問客も遺族や親族と同じように喪服を身に着けることによって、別れの悲しみを共有しその心に寄り添う気持ちを表します。
つまり黒い服を着ることは弔意を表すという意味でもあるのです。
・黒いスーツには喪服が持つ深い意味は含まれていない
黒いスーツも見た目は喪服と同じです。
でも黒いスーツに喪服のような意味はありません。
考えてもみてください。
子供の入学式や卒業式、結婚式に黒いスーツを着ていく場合、その黒いスーツには「喪に服す」という意味が込められていますか?
これは絶対にないですよね?
どちらかというとお葬式を連想させないように配慮する必要があるわけで、いずれのセレモニーにおいてもお葬式のような別れの悲しみはありません。
しかも一般的なスーツは礼服では「平服」に分類されます。
もちろん私的なパーティーなどであればスーツでも問題ありませんが、お葬式はフォーマルなセレモニーです。
お葬式の規模の違いはあったとしても、そこで行われる内容に違いはありません。
ですから参加するためにはお葬式にあった正装をする必要があります。
・男性のブラックスーツは「黒いスーツ」という意味ではない
男性の場合は「お葬式にではブラックスーツが基本」といいます。
この言葉をそのまま直訳して解釈すると、「男性は黒いスーツであればお葬式の服装として問題ない」となります。
ところがこれは大きな間違いです。
ブラックスーツは、正式な喪服です。
黒い色のスーツをブラックスーツと呼んでいるのではありません。
ブラックスーツは男性の準喪服のことを言い、正式な喪服として認められています。
色もデザインも一般的な黒いビジネススーツとは違いますので、男性であってもただの黒いスーツを着ていればマナー違反になります。
つまり「女性だからスーツはNG」ということではなく、お葬式では喪服でなければマナー違反になるということなのです。
礼服としてお葬式に女性が着ていく正しい服装は!?
「女性は全てのスーツがNG」ということではありません。
あくまでも「黒い色のスーツ」というだけではマナーに反するというだけです。
女性の場合、男性のブラックスーツに当たるのがブラックフォーマルです。
ブラックフォーマルの中には「ブラックフォーマルスーツ」もあります。
そもそも女性用のブラックフォーマルには様々な種類があり、デザインも豊富です。
スカート一つとっても、「スカートの丈」「スカートのデザイン」で見た目の印象は違います。
またジャケットも一般的なリクルートジャケットタイプもありますが、それよりはボレロジャケットやロングジャケットの方が主流です。
このようにいろいろな種類やデザインがあるので、女性の場合はブラックフォーマルスーツを含むすべての喪服の総称として「ブラックフォーマル」と言っているのです。
ですからブラックフォーマルとしてのスーツであれば、女性であってもマナー違反ではないのです。
まとめ
「スーツ」というとビジネスシーンなどで着ることが出来るリクルートスーツやビジネススーツの印象が強いです。
そのため一般論として「スーツはNG」と言われています。
ただしブラックフォーマルスーツは、女性用の正しい喪服です。
ですから同じスーツといっても「ブラックフォーマル」であれば、それはマナー違反となりません。
とはいえ黒い色の服のことをブラックフォーマルというわけではありません。
このことがきちんと理解できていれば、服装でマナー違反といわれることはありませんよ。