お葬式では喪主が努めなければいけないことがたくさんあります。
そのうちの一つが、お葬式に参加してくださった方へのお礼のあいさつです。
一般的にお礼のあいさつは、葬儀・告別式が終わり霊柩車に喪主が乗り込む直前に行います。
それだけに喪主が行うお礼のあいさつはとても重要です。
でもお礼のあいさつは喪主が行わなければならないということではありません。
喪主の代わりに息子が挨拶をするケースはよく見かけます。
さらに故人の孫が挨拶をするケースもあります。
ただ孫が喪主の代わりに挨拶をする場合には、注意しておきたいポイントがあります。
今回はその注意ポイントと併せて「喪主の代理で挨拶をする場合の注意点」もわかりやすく解説します。
お葬式の挨拶を孫が喪主の代わりにする時のポイントと注意点
・故人との関係をきちんと伝えること
故人の孫が挨拶をするということは、亡くなったのは祖父または祖母ということになります。
となれば本来の喪主は父または母ですよね?
もしも90歳の祖父のお葬式で喪主である娘(この場合はあなたの母となります)の代わりに孫であるあなたが挨拶をするのであれば、周りから見ても「喪主の母親の代わりに息子が挨拶をしているんだな?」ということは予測できます。
でもまだあなたの父親が喪主を務めているのであれば、周りから見れば「どうして喪主えでゃなく孫が挨拶をするんだ?」となります。
ましてあなたと故人との関係が分からない参加者であれば、「いったいこの人は故人とどういう関係なの?」と素朴な疑問を持つはずです。
ですからまず挨拶の冒頭であなたが故人の孫であることをきちんと伝えましょう。
この一言によってあなたのことを知らない会葬者も「孫が挨拶をしているんだな」ということがわかります。
・なぜ喪主の代理で挨拶をするのか理由を述べる
会葬者へのお礼のあいさつは、お葬式の施主である喪主が本来行うものです。
もちろん孫であるあなたが挨拶をしたとしても問題はないのですが、本式ではないということは一言お詫びしておく必要が和えります。
一般的には「本来であれば喪主である父(母)が皆様に挨拶を申し述べるところではございますが、心労もあって挨拶が出来る状況にございません」などでOKです。
ポイントは「喪主が挨拶をすべきところではあるのですが、事情があって挨拶が出来ません(申し訳ありません)」というお詫びの気持ちが簡潔に伝わるようにすることです。
・「足を運んでいただきありがとう」という言葉を伝える
お葬式のあいさつでは、冒頭と文末に必ず「ありがとうございます」というお礼の言葉が入ります。
冒頭でのお礼の言葉には、「わざわざ忙しい中、お葬式に参加してくださってありがとう」という感謝の意味があります。
ですからこのお礼のあいさつを外すことはできません。
・最後は「本日は誠にありがとうございました」
最後のお礼の言葉は、挨拶の基本としての言葉としてイメージしてください。
ただしあくまでも謝辞として挨拶をしているわけですから、最後の挨拶「本日は誠にありがとうございました」のあとには会葬者に向かって深々と一礼するのがマナーです。
最後の一文と深いお辞儀はセットと考えておきましょう。
実際に聞いてみて印象がよかった孫の挨拶のポイント
・祖父(祖母)とのエピソードに感動
故人とのエピソードを挨拶文の中に盛り込むのがお葬式のあいさつの定番ですが、なかなか孫が喪主代理として挨拶をすることはありません。
ただ親子としての関係と祖父(祖母)と孫の関係はやはり違います。
特に仕事一筋で家庭のことはすべて妻に任せきりだった男性の場合、孫にそそぐ愛情は現役時代にできなかった子育てを疑似体験するような感覚があります。
それだけに親子の関係であれば「厳しい父(母)」という一面が強い場合でも、孫から見れば「いつでもそばにいてくれる優しい祖父(祖母)」という印象が強いこともよくあります。
こうした晩年のプライベートな姿は、家族や近い親族でない限りあまり知られていません。
お葬式という最後の場で会葬者の知らなかった意外な故人の一面を知ることはとても新鮮な感動です。
実際の現場でもこうしたエピソードが含まれた挨拶の場合は、じっと耳を傾ける会葬者が多いです。
・喪主を支えていく決意を加えるとグッとくる
本来であれば喪主が挨拶をするわけですが、事情があって孫であるあなたが挨拶をするのですよね?
つまり「それなりの事情がある」ということを理解してもらうということが大事なのです。
そのことを含めて最後にこんな一言付け加えると、かなり印象が変わります。
「今後は母(父)を支えながら祖父(祖母)の遺志を受け継ぎ、家族一丸となって頑張ってまいります」
これだと挨拶をきいている側からみれば「若いのに親御さんのことまで気遣いが出来る良いお孫さんだ」となります。
こういう一言は、難しい言葉で挨拶をするよりもずっと聴く人の心に響きます。
お葬式のあいさつで使われる難しい言葉の意味と使い方
お葬式で喪主が行うお礼のあいさつは「謝辞」とも言います。
葬儀社ではお礼のあいさつの例文が準備されていますが、どの挨拶文を見ても難しい言い回しが多く読むだけでも大変です。
でもその難しい言葉の中にはちゃんとした意味があります。
日常生活の中ではほぼ使うことがない言葉なので読み方や意味が分からないことも多いですが、その意味を知ってみると「なるほど」と思うこともあります。
そんなお葬式特有の言葉の表現をちょっと紹介してみましょう。
・懇篤(こんとく)
「心がこもった」という意味になります。
「御懇篤(ごこんとく)なる御弔詞(ごちょうし)」といった使い方をします。
するのが一般的です。
・弔詞(ちょうし)
わかりやすく言うと「お悔やみの言葉」となるでしょうか?
使い方の例として代表的なのは「御懇篤なる御弔詞を賜り、誠にありがとうございます」ですが、意味としては「心のこもったお悔やみの言葉をいただきまして、本当にありがとうございます」となります。
・厚情(こうじょう)
「思いやり」と訳すのが一般的です。
お葬式のあいさつの中では「生前中は皆様より格別なご厚情を賜り」と使ったりします。
意味としては「何かと故人のことを気にかけてくださってありがとうございます」となります。
・懇切(こんせつ)
「丁寧な心遣い」とか「親切」という意味があります。
例えば病気で入院が長かった場合などに「ご懇切なお見舞いを賜り…」と使います。
この場合は「お忙しい合間にわざわざお見舞いのために足を運んでくださってありがとうございます」という気持ちを伝えたいときなどに使います。
・一期(いちご)
一般的にお葬式では「○○歳を一期として永眠いたしました」と使います。
単純にこれをわかりやすい言葉に直すと「○○歳で亡くなりました」となります。
・鞭撻(べんたつ)
一般的には「ご指導ご鞭撻」という使い方をします。
あいさつの中では「故人同様のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」と使うことが多いです。
言葉の意味としては2つの意味があるのですが、ザックリいうと「故人と変わらないお付き合いをこれからもよろしくお願いします」という意味で使っていると理解してください。
まとめ
孫であっても喪主の代わりに挨拶はできます。もちろんマナー違反ではありません。
ただ本来であれば喪主が挨拶をするのが本式であり、孫が挨拶をするというのはやはり珍しいことです。
でも若い孫だからこそ、緊張する場面で一生懸命に挨拶をする姿に人は感動します。
ですから無理に難しい言葉を使うのではなく、心からの感謝の気持ちが素直に伝わるような挨拶文にするのがおすすめですよ。