仏式のお葬式に参加する場合は、一般会葬客でも数珠を準備するのがマナーです。
ただしお葬式の現場に立ち会っていると、焼香のときだけバッグから数珠を取り出している人の姿を見かけることがあります。
でもこれって本当にマナーとして大丈夫なのでしょうか?
そこで今回はお葬式での数珠の使い方の基本をわかりやすく解説!
お葬式で数珠が必要な理由や数珠の形の意味、選ぶときのポイントや保管方法についても併せて説明します。
お葬式での数珠の使い方の基本
数珠は仏教における仏具にあたります。
ですから仏式でお葬式をする場合には数珠をもって参加するのが一般的です。
ちなみに日本では仏式のお葬式が多いので「お葬式には数珠をもっていく」というのが常識のようになっていますが、仏教以外の宗教でお葬式をする場合に数珠は必要ありません。
むしろ持っていくと失礼になります。
・数珠の玉の数
数珠には「本連数珠」といって宗派が定める正式なお数珠があります。
信者であれば個人用に本連数珠を持っているはずですが、宗派にこだわりがないという人はわざわざ本連数珠を持つ必要はありません。
本連数珠の形は宗派によって違いますが、珠の数は108が基本です。
珠の数を108とするのは「百八煩悩」といわれていますが、「金剛界百八尊」をあらわしているとも言われています。
浄土真宗では行いませんがその他の宗派では珠の数を爪繰って念仏の回数を数えることもありますし、数珠を擦り鳴らして使うこともあります。
でもこれはあくまでも僧侶・信者が行う念仏の仕方なので、宗派にこだわりがない場合には同じような作法で念仏を唱える必要はありません。
・基本的な数珠の持ち方
数珠は仏に念じる時に使います。
ですからお葬式では焼香をする時や死者と対面をする時に使います。
数珠は左手で持ちます。
仏教では左手が「仏の世界」、右手が「俗世」と考えています。
仏の世界は穢れのない清らかな世界ですが、俗世はこの世のことを意味しますので様々な苦しみや煩悩のあるとされています。
そのため仏に念じるための数珠は清らかな左手に持つとされています。
・焼香のときの使い方
まず左手に数珠を持ち焼香所に進みます。
焼香をする際には左手の親指と人差し指の間に数珠をかけて持ちます。
抹香での焼香が終わったら合掌をしますが、この時に右手も左手同様数珠をかけて使います。
退席する場合は最初のときと同じように、左手に数珠をもって移動をします。
・数珠を持つときの注意点
数珠は仏様に念じるための大切な道具です。
たとえ休憩のために一時的に数珠を外すにしても、直接テーブルの上に数珠を置くことはNGです。
必ず数珠袋または袱紗の上に数珠を置くようにしましょう。
・お葬式のためだけに準備するのであれば略式数珠でよい
宗派によってそれぞれ本式数珠がありますが、一般会葬者のマナーとして準備するのであれば宗派を問わず使うことが出来る「略式数珠」がよいです。
略式数珠には珠の数が「54」「42」「27」「21」「14」があります。
珠の数にはそれぞれ意味があり「54個=五十四位」「42個=四十二位」「27個=十八学人と九無学または二十七聖賢」「21個=二十一位」「14個=観音十四無畏」を表すといいます。
略式数珠では「親珠」と呼ばれるものが1珠だけあります。
この親玉は房の間の「菩薩(ぼさ)」という部分にあります。
そのほかの珠は「主珠」と呼ばれ親珠と比べると小ぶりのサイズになっています。
・珠の形にも違いがある
一般的な略式数珠の珠は「丸珠」が使われています。
ところが珠の形には丸珠のほかにも「みかん珠」「平珠(そろばん珠)」があります。
みかん珠は丸珠よりもさらに大きな珠になっています。
珠を爪繰って念仏する真言宗の本念誦ではよく見かけますが、真言宗であれば必ずしもみかん珠を使わなければいけないということではありません。
ちなみに平珠は、平たい形をしているのが特徴です。
まるでそろばんの珠のような形をしていることから「そろばん珠」とも言われます。
主に天台宗の本連数珠として使われるのですが、その他の宗派でも使うことはあります。
ただし日蓮宗では平珠は使いません。
・値段はどの程度のものが無難?
お葬式のために数珠を準備するならば略式数珠で問題ありません。
略式数珠であれば2000円台から購入が出来ます。
数珠の値段は珠の大きさやデザインではなく、珠に使われる材質によって変わります。
高級なものはたくさんありますが、仏教では昔から「七宝が最も良い」とされています。
七宝は「ラピスラズリ(瑠璃)」「本水晶(玻璃)」「硨磲(シャコガイ)」「珊瑚」「オニキス・メノウ(瑪瑙)」「真珠」「金・銀」です。
金と銀は「天珠」として使われることが多いので一般的な数珠の材料としてはめったに使われません。
一般的な材料としては「水晶」「トルマリン」「虎目石」「琥珀」「マラカイト」「象牙」などの宝石・鉱石のほか「黒檀「紫檀」「白檀」「檜」などの木材も使われます。
珍しいところでは菩提樹や梅壇、じゅずだま、むくろじなどがあります。
値段が安い数珠の場合はガラスやセルロイドなどの人口素材が使われていることが多いです。
お葬式での数珠選びのポイントは!?
社会人のマナーとして数珠を準備するのであれば、略式数珠を選ぶのがポイントです。
ただし略式数珠には「男性用」「女性用」があります。
珠の大きさが違うため、女性が男性用を身につければ「大きすぎる」となりますし、男性が女性用を身に着けると「小さすぎてみっともない」となります。
・素材によって扱い方に注意が必要
珠の素材によって保管するときの注意点が違います。
セルロイドやガラスなどの人口素材の場合は落としたときに割れてしまうことがあるので注意が必要ですが、保管するときの注意は特にありません。
マラカイト、ラピスラズリ、珊瑚、真珠は汗に弱い材質です。
ですから夏のお葬式に参加した後などは、柔らかい布などで丁寧に珠をふき取り桐箱に入れて保管すると良いです。
管理が難しいのは「天然木」です。
高級数珠になるので滅多に見かけることはありませんが、天然木の数珠は虫害にあう場合があります。
使用した後にはやわらかい布などで表面の汚れをきれいにふき取り、防虫香(防虫剤でもよいのですがにおいが気になるのであまりおすすめしません)を入れて専用の箱に入れて保管します。
・房の取り扱いにも注意が必要
数珠には必ず房が付いています。
房の種類は「頭付房」「切房」「新松房」「四ツ目紐房」「菊房(梵天房ともいう)」「利休房(手毬房ともいう)」があります。
いずれの場合も使用した後にきちんと房を整え、専用の切箱に収めて保管すれば問題ありません。
もちろん数珠袋に入れて保管するのもOKですが、この時には房が折れ曲がらない様に気を付けて保管することが大切です。
お葬式でNGな数珠の使い方
・首にかける
本連数珠だと珠の数が108個もあるので、略式数珠と比べても長いです。
だからと言って首にかけるのはNGです。
これは「縁起が悪い」とわれています。
かつて日本に切腹というしきたりがあった時代、腹を切るのと併せて介錯人が首を刀で切り落としました。
その時に首にかけていたのが数珠だったといいます。
そのことから数珠を首にかけるのは縁起が悪いといわれるようになりました。
・焼香をする時にだけ数珠をつける
焼香をする直前になってカバンから数珠を取り出す人を見かけますが、これはお葬式のマナーとしてはNGです。
数珠を持っているのであれば式場に入るときから数珠を手に持ち、焼香の際には正しいお作法で数珠を使い合掌します。
もちろん式場を出るまで数珠は左手に持つのが基本ですので、焼香のときだけ数珠を持つのはNGです。
まとめ
数珠にはいろいろな種類がありますが、仏教においては仏具の一つとして重要な意味を持っています。
ですから仏式のお葬式に参加する場合は、社会人のマナーとして数珠を持つのが一般的です。
ただしお葬式用として数珠を準備するのであれば、オールラウンドに使うことが出来る略式数珠で十分です。
でもお葬式から帰ってきた後にはきちんと手入れをし正しく保管することも忘れないようにしてくださいね。