お葬式では様々な場面で喪主が参加者に対して挨拶をすることがあります。
こまごまとしたことも含めるとたくさんあるのですが、代表的なものをあげるとすればお葬式の最後に行う「お礼の挨拶」です。
ただお葬式を無事滞りなく済ませるだけでも喪主としては大変なのに、最後の最後にたくさんの人の前で挨拶をすることはとても大変です。
まして喪主が高齢の場合などは「あえて喪主が挨拶をしなくても…」と思うこともあるでしょう。
では喪主の挨拶を故人の息子や孫が代わりに行うのはありなのでしょうか?
それともどんな事情があったとしても喪主が挨拶を務めることが、来ていただいた人に対するマナーなのでしょうか?
喪主の挨拶は代わりに行っても構わない
お葬式の最後に喪主が行う挨拶は「謝辞」といういい方もします。
この言葉からも分かるように「お礼の言葉」として挨拶をするのが喪主の挨拶になります。
もちろん無事にお葬式を最後まで行うことが出来たことに喪主が感謝の気持ちを持っていることは確かです。
でもお葬式の挨拶で行う「お礼の挨拶」は、単に感謝を述べるだけではありません。
・お葬式の挨拶は「ありがとう」と「よろしく」の2つの意味がある
お葬式の挨拶文には定型文があります。
ほとんどの場合葬儀社にお願いをするとこのひな形を準備してくれるので、実際にはその文面を読み上げるだけという人の方が多いです。
何しろお葬式を無事に終わらせることが出来るようにするだけでも大変なのですから、それに加えてオリジナルの挨拶文を作る余裕などないのが現実です。
でも用意されたひな形の文章を見てみると、とんでもなく難しい言葉が冒頭から文末までズラリと並んでいます。
では初めてひな形の文章を見るという人のために、最もオーソドックスな喪主の挨拶例文をここで紹介してみます。
『本日はお忙しい中、故○○○○のためにお集まりいただき誠にありがとうございます。
故人の生前中には皆様には一方ならぬご厚情を賜りましたことを、故人に代わり厚く御礼申し上げます。
葬儀に際しては多くのご芳志、お供物、ご供花を賜り、また丁重なる弔事を頂戴しましたことを、故人に代わり深く御礼申し上げます。
今後は残されました遺族一同にも故人同様のご指導ご厚情を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
はなはだ簡単ではございますがお礼の挨拶とかえさせていただきます。
本日は誠にありがとうございました。』
こうやって文章にしてみると言いたいことは何となく伝わってくるのですが、普段使うことのない言葉が使われている上に実際に読むとなるとなかなか難しいです。
それは当然です。
葬儀社が準備するひな形の挨拶文は、どのような立場の人が読んだとしても失礼に当たらない様に難しい言葉を並べているだけなのです。
そのため文章を見ながら挨拶をしても、聞いている人の心にはほとんど響くことはありません。
また実際に読んでいる姿は「書かれた文章を読んでいるだけ」としか見えず、本来の感謝の気持ちはその姿をみただけでは全然伝わりません。
でもこんなに難しい文章の挨拶文ですが、本当に伝えたことは「ありがとう」と「よろしく」の2つしかありません。
この2つの気持ちを難しい表現を使って伝えているだけなのです。
・素直に感謝とお願いの言葉が伝わる方が挨拶としては良い
喪主の挨拶では冒頭に「来ていただいてありがとうございます」というお礼の言葉と、文末に「今後も変わらぬお付き合いをしてください」というお願いの言葉が必ず入ります。
これはオリジナルの文章を作るとしても必ず入れなければいけません。
ですからオリジナルの文章を作るのであれば、必ず必要なこの2つの文章の間にアレンジした文章を差し入れるだけでよいのです。
では先ほどの基本の例文にアレンジを加えてみましょう。
『本日はお忙しい中、父のためにお集まりいただきありがとうございます。父は仕事一筋な一面もありましたが、家庭での父は家族を大事にする子煩悩な人でした。
どんなに疲れているときでも休日には私たち家族のことを一番に考え、家族と過ごす時間を大切にしてくれました。
そんな父には感謝の気持ちしかありません。
これまで大きな病気などしたことのない父でしたが、昨年冬に体調を壊してからは入退院を繰り返すようになり、○月〇日に家族が見守る中○○歳で他界いたしました。
このように多くの皆様方にお見送りいただいたことは、父が何よりも喜んでいることと思います。
また皆様方のお力添えをいただきまして、無事に父の葬儀も済ませることが出来ました。
遺族を代表し心からお礼申し上げます。本当にありがとうございました。
これからは家族が一丸となって父の想いを引き継ぎ歩んでまいりますので、今後も変わらぬご指導を宜しくお願い申し上げます。
本日は誠にありがとうございました。』
冒頭と文末は表現をほんの少し変えただけなのですが、文中に故人のエピソードが加わるだけで一気に心に響く文章になりますよね?
これが大事なポイントなのです。
なにしろ喪主の挨拶で会葬者が本当に聞きたいのは「どんな人生だったのか?」「どんな晩年だったのか?」「家族はどんな人なのか?」「最期はどのように迎えたのか?」なのです。
だから聞きたいことをわかりやすい言葉で伝えてもらった方が、聞く側としても「無理してでもお葬式に足を運んでよかった」と心から思うことが出来るのです。
・挨拶は誰がやってもよい
喪主はお葬式の責任者でもありますから、参加者に対する挨拶などは喪主が務めるのが基本です。
でも必ずしも喪主が挨拶をしなければいけないというわけではありません。
故人の長男・長女、故人の孫であってもかまいません。
さらに言えば親族が喪主の代わりとして挨拶をすることもできます。
喪主の代理で故人の息子が挨拶をする時の注意点
喪主の代わりに息子が挨拶をする場合、「喪主=妻、息子=故人の長男」が多いです。
この場合は「長男である」という点が大きなポイントになります。
故人が父親であるということは、家族の代表が父から息子であるあなたに代わった(家督を継ぐ)ということを意味します。
ですから今後、家族の代表となることの宣言も含めて挨拶をする必要があります。
もちろん挨拶においてもこのことを意識することが大事なポイントになります。
挨拶文の内容も大事なことですが、それよりは服装や礼儀礼節を正しく行うことが重要です。
まして挨拶は表情や態度も総合的に評価されるものですから、すべてにおいて注意が必要になります。
もちろん服装は喪服でなければいけません。
髪型も清潔感のあるスタイルでなければいけません。
姿勢や声の大きさも重要です。
姿勢を正した姿は誠実さにつながりますし、聞き取りやすい言葉と声の大きさは相手に対する配慮になります。
さらに挨拶の最初と最後に行うお辞儀も、相手に対して失礼のないよう深く一礼をすることを心がけます。
このポイントがきちんと守れていれば、葬儀社が準備した挨拶文を読むだけでも十分「丁寧な挨拶」になります。
喪主の代理で孫が挨拶をする時の注意点
孫が喪主の代理で挨拶をする時には、まずあなたが何者であるかをきちんと最初に説明する必要があります。
お葬式に参加する人全員があなたの家族構成を知っているわけではありません。
突然あなたが喪主の代わりに挨拶をし始めたとしても、故人との関係性が分からない人から見れば「なぜこんな若い人が喪主の代わりに挨拶をするのかしら?」となります。
ですから「本日はお忙しいところお集まりいただきありがとうございます。
私は喪主の長男の○○○○です。
この度は喪主の代わりに皆様方に一言挨拶申し上げます」のように、あなたと故人の関係が分かる自己紹介をします。
もっと短く説明をするのであれば、「故人の孫の○○○○と申します。
この度は○○家を代表いたしまして一言ご挨拶申し上げます」でもよいです。
このようにあなたが何者であるかということを冒頭に伝えることによって、聞く側は「故人の孫が喪主の代わりに挨拶をしている」ということがわかります。
これはとても大事なポイントなので、雛形文を読む場合でもオリジナルの挨拶文を作る場合でも忘れずに冒頭に加えるようにしてくださいね。
まとめ
喪主の挨拶は難しい言葉で話さなければならないということではありません。
「感謝の気持ち」と「今後のお付き合いのお願い」がきちんと相手に伝われば、喪主の挨拶になります。
また喪主以外の遺族が挨拶をしてもマナー違反ではありません。
その場合は今回紹介したポイントを意識することで、相手に失礼とならずに喪主の代理として挨拶をすることが出来ます。