遺骨の埋葬方法は、今や1つだけではありません。
お墓そのものに対する考え方も時代とともに変わってきたこともあり、それに合わせて様々な埋葬スタイルが生まれました。
その中でも根強い人気があるのが「散骨」です。
ところが散骨というスタイルは、それほど新しいスタイルではありません。
とはいえやはりスタンダードなスタイルとまではいかず、よくわからないこともたくさんあります。
そこで今回は「散骨」という埋葬のスタイルについて、様々な角度から紹介していきたいと思います。
散骨のやり方って!?
「散骨」という言葉は知っていても、実際にどのようにするのかまで詳しく知っている人はあまりいないのではないでしょうか?
一般的な納骨とは違い、散骨は人の目に触れるような場所では行われません。
だから、「最近、散骨しているところを見たよ!」なんていう人もいないはずです。
つまり「知っているようでよくわからない=散骨」となります。
遺骨をそのままの状態で散骨するわけではない
言葉の通りに解釈すると「遺骨を墓地以外の場所に撒く」となるのですが、実際には遺骨をそのままの状態で撒くことはありません。
代表的な散骨場所は「海」になるのですが、必ずしも海に遺骨を撒くことが「散骨」ということでもありません。
ただしどのような場所で散骨をするのであっても、遺骨は必ずパウダー状にしてから撒きます。
つまり「骨壺から遺骨を取り出して海にそのまま撒く」なんてことは絶対にありません。
故人の遺言であっても散骨が行われないことはよくある
生前に自分の死後のことを整理しておくことを「終活」といいます。
終活には様々な項目がありますが、やはり一番メインになるのが「死んだ後のこと」になります。
もちろん死んだ後に起こることといえば「お葬式」があります。
ただお葬式が終わった後は、「遺骨をどこに埋葬するのか」という問題が起こります。
最近では子供に自分の供養で迷惑をかけたくないという人も増えているため、事前に永代供養墓を購入する人もいます。
でも実際に終活をしている人でも、ここまできちんと手配している人は少ないです。
どちらかというと、エンディングノートなどを使って「自分が死んだら、墓に入れずに海に散骨して欲しい」というメッセージを残す程度にすぎません。
では「故人の遺言があった場合、みんなは必ず散骨しているのか」というと、ほとんどの場合がNOと答えます。
なぜなら散骨は言葉としての認知度は高いとしても、まだまだ散骨という供養のスタイルが日本人の価値観としては定着していないからです。
そもそも日本は「遺骨」に対して特別な感情を持っています。
「遺骨には亡くなった人の魂が宿る」と考えるため、遺骨を安置している墓は特別な場所を意味します。
また供養に対する考え方も、「墓」とセットで考えることが多いのも特徴にあります。
ところが海に散骨をしてしまうと、「魂の居場所が定まらない」ということになります。
海に向かって手を合わせればよいと素直に考えるかもしれませんが、墓の前で手を合わせるのと違って海は広く大きいです。
ですから故人に対してピンポイントに想いを寄せることがなかなか出来ません。
「墓を買うより安い」はウソ!?
自分の遺骨を散骨して欲しいという人の中には、「高額な墓を買うよりも散骨の方が安上がりだ」という人もいます。
たしかに墓を購入するといっても、現在の法律では「墓地」は売買できません。
新たに墓を建てるのにしても墓地は購入できませんから、実際には「土地の使用権を得る」となります。
もちろん使用権を得るだけでは墓にはなりませんから、墓石を購入し墓を建てる必要があります。
これだけのことを考えれば、たしかに墓を購入するよりは散骨した方が良いとも言えます。
ただし墓はローンで購入することもできます。
また生前に墓の購入費用をすべて支払い終わった場合は、節税にもなります。
ところが散骨の場合は、亡くなってからでなければ準備することは出来ません。
しかもいくら故人の希望であっても、家族が反対すれば散骨してもらえないこともよくあります。
つまりよくよく考えてみると計画的に墓を購入する方が、散骨をするよりも家族の負担はグッと抑えられるとも言えます。
海に散骨するにしても場合によっては罪になることもある
現在のところ日本の法律に散骨に関するものはありません。
そもそも埋葬に関する法律を作った時点では「散骨」というスタイルが後にできるということなど想定していませんでした。
ですから法律だけを見れば「どのような方法でやったとしても違法にはならない」とも言えます。
ところがこれは正しい解釈ではありません。
あくまでも散骨は「節度をわきまえて行う事」が大前提にあります。
ただしこれも「何をもって“節度をわきまえる”というのか」という法律上の解釈がないとも言えます。
つまり現在の散骨は、事実上「グレーゾーン」にあるといえます。
ただし過去にスーパーのトイレに遺骨を捨てたことで「死体遺棄罪」及び「器物損壊罪」の罪で逮捕されたという例があります。
この事件では
①遺骨を粉砕せずにトイレに捨てた(見方を変えれば「トイレに散骨した」ともいえるが)
②無断で他人の私有地に遺骨を撒いた の2点が「節度をわきまえない散骨にあたる」とされました。
たしかにこれはいくら何でも酷い散骨だといえますが、散骨に関する法律がないということは散骨に関する許可や申請などもないということです。
ですからこの方法でももう少しやり方を変えれば、もしかしたら違法ではない「散骨」となったかもしれません。
散骨するために必要な手続きなどはあるの?
散骨に関する法律がない以上、散骨を取り扱く行政機関もありません。
もちろん散骨をするために法的に必要となる手続きや申請などもありません。
さらに散骨の場合すでに遺骨は海や別の場所に撒かれていますので、墓の移転なども一切関係ありません。
そもそも散骨の場合は「遺骨を移転する」ということ自体が当てはまらないわけですから、わざわざ改葬許可書を役所に申請することもありません。
ですから社会的に見ても「節度ある散骨」であれば、特別な手続きをしなくても散骨は出来るのです。
骨壺から遺骨を出して自宅の庭に散骨するのはOK?
他人の所有地であれば問題となりますが、自宅の庭となれば「個人の私有地」になります。
ということはその権利をあなたが持っていれば、「節度をわきまえた散骨であれば自宅の庭に撒いても良いのか?」と思ってしまうのでは?
でもこれは立派な違法です。
散骨に関する法律はないものの、遺骨を埋葬することに関する法律はちゃんとあります。
これは「墓地・埋葬に関する法律(略して「墓埋法」といいます)」というもので、その中では遺骨は各都道府県で認可された墓地のみ埋葬を許可するとされています。
ですからいくら自宅の庭であったとしても、遺骨を庭に撒くということは違法なのです。
散骨の基本的なやり方
散骨をする場合の基本的な流れを最後に紹介しておきましょう。
①散骨業者に依頼する
②散骨場所に向かうための船を業者がチャーターする
③遺骨を業者に渡す
④業者が遺骨をパウダー状にする
⑤海に散骨する
金額の相場は業者によって違うだけではありません。
散骨現場に立ち会いを希望する場合は、立ち合いなしの散骨よりも高くなります。
また散骨に立ち会う人数が多くなるほど、金額も高くなります。
ちなみに
①散骨場所を指定しない
②散骨に立ち会わない
③特別なセレモニーを必要としない場合は、30万前後が相場になります。
まとめ
散骨は未だにそれに関する法律が整備されていないだけに、グレーゾーンが多いです。
これは「遺骨を魂の拠り所」と考える日本の宗教にも深く関係してくるので、なかなか法律上の整備が出来ないという事情もあります。
いずれにしても安易に散骨をすれば、何らかの法律に違反する可能性もあります。
正しい方法が決まっていないとはいっても、やはり社会的に許容される範囲であるということが散骨のポイントになります。