亡くなった人と直接付き合いのある人だけでお葬式をすることが出来る家族葬は、今人気があるお葬式のスタイルです。
でも初めてのお葬式となれば、お葬式に何をすればよいのか、どんなことをするとマナー違反となるのかさえ分からないものです。
そうはいっても普通のお葬式を行うなら、祭壇は必ず必要になります。
しかもあなたが特別宗教にこだわりがないのであれば、一般的には仏教式のお葬式となります。
でも仏教式のお葬式の祭壇というと、なんとなく仰々しい感じがするあの「白木祭壇」を使わないといけないのかと思うのではありませんか?
さらに白木祭壇と花祭壇の違いも、見た目の印象が違う以外にはあまりよくわからないはずです。
ただしあなたが家族葬でお葬式をしようと考えているのであれば、家族が納得する祭壇であることが最も賢い祭壇の選び方となります。
そこで今回は、家族葬での祭壇選びのポイントを、花祭壇と白木祭壇のメリット・デメリットなどを挙げながらわかりやすく説明していきましょう。
家族葬の祭壇選びはどんなお葬式をしたいのかによって決める
家族葬といっても「家族だけで行うお葬式」もあれば、「家族と一部の親族のみで行うお葬式」もあります。
さらに家族葬であっても、亡くなった人と生前親しく付き合いがあった友人が参列することもあります。
そのため一般的なお葬式と比べると比較的小規模なお葬式であることを、ザックリとまとめて「家族葬」といいます。
家族葬の場合は、どのくらいの人がお葬式に参加するのかによって祭壇や式場選びも変わってきます。
もちろん「家族だけで行うお葬式」であれば、わざわざ式場の正面に祭壇を置かなくても問題はありません。
亡くなった人との別れの時間を最大限に重視することが出来るのが「家族のみの家族葬」ですから、棺そのものを祭壇と考えて生花で取り囲むタイプの生花祭壇も可能です。
この場合は家族も棺を取り囲むようにして座るので、どの位置からでも顔を見てお別れが出来るのがメリットにあります。
でも家族以外に親族や一般弔問客が訪れる場合は、その方々へのおもてなしと感謝の気持ちを込めてやはり式場正面に祭壇を設置する必要があります。
もちろんこのようなスタイルが、家族葬であってもお葬式の定番スタイルといえます。
白木祭壇とは仏教式のお葬式に特化した祭壇
お葬式で祭壇を準備する意味は、お葬式に必要な供物や写真、遺骨(骨壺)や位牌などを置くための台としての意味が強いです。
そのためこれらのものがすべてきちんと置くことが出来るのであれば、どのようなタイプであっても「お葬式の祭壇」となります。
では昔から仏教式のお葬式で定番の白木祭壇には、どんな意味があるのでしょうか?
結論から説明すると、「仏教式のために作られた祭壇=白木祭壇」といえます。
白木祭壇には仏教におけるお葬式の考え方が強く反映されています。
そのため一つひとつのパーツに、仏教の考え方が深く関係しています。
★輿(こし)
白木祭壇の一番上にあるのが、「輿」と呼ばれる部分です。
かつては実際に輿に棺が納められるような大きなものでした。
なぜならお葬式が終わった後は遺体が納められた棺を輿に納め、そのまま担いで野辺送り(墓地)に向かっていたからです。
ただ昭和中期頃になると火葬が主流となり、式場からの移動距離も長くなりました。
そのため棺を移動するために霊柩車が使われるようになります。
このような事情があったため、現在の白木祭壇の輿は「半輿」と呼ばれるものが主流です。
半輿に変わったことによって祭壇を設置するためのスペースがかなり節約できるようになりました。
輿に関しては仏教としての考えよりも、日本の葬送文化と深い関係があると考えた方が良いでしょう。
★六灯(ろくちょう)
白木祭壇の両脇に、各3こずつ灯りがつけられています。
これが六灯です。
六灯の由来には諸説あるのですが、仏教としての意味としてはインド仏教の死生観が関係しているといわれています。
インド仏教では六道輪廻という考えがあります。
この考えを表したものが「六灯」だといいます。
★行灯(あんどん)
お寺に行くと、本堂だけでなく境内の様々なところで行灯を見かけます。
これを真似しているのが白木祭壇における行灯です。
白木祭壇の行灯の上の部分を見てみると、玉ねぎのような形をした飾りがあることが分かります。
実はこの玉ねぎ型をした飾りは「宝珠」と呼ばれています。
宝珠という言葉も、実は仏教用語です。
★四華花(しかばな)
仏教の神様で最も偉いのがお釈迦様です。
お釈迦様がこの世の世界から仏の世界へと旅立っていった(死ぬ)ことを、仏教では釈迦入滅といいます。
釈迦入滅の際には、お釈迦様の周りにはたくさんの弟子たちが取り囲んでいたといいます。
お釈迦様は息を引き取る直前まで、弟子たちに説法を続けていました。
そしてその時が近づく直前にお釈迦様は体を横にし、そのまま息を引き取ったそうです。
ところが驚いたことに、その後お釈迦様の前にお釈迦様のお母さんがたくさんの仏教の神さまを引き連れて現れます。
するとすでに息を引き取ったはずのお釈迦様がムクッと起き上がり、迎えに来てくれたお母さんやたくさんの神さまに手を合わせます。
その瞬間、沙羅双樹の花が一斉に咲き、その花びらが手を合わせるお釈迦様の体を包み込んだといいます。
この話から仏教のお葬式では、必ず四華花を使うようになったといわれています。
★須弥壇(しゅみだん・すみだん)
須弥壇はインド仏教の世界観を表す意表的なものです。
須弥壇は、輿の下に置かれている3段のひな壇のように見えるもののことを言います。
もともと須弥壇は、スメール山(須弥山)を表しているといいます。
スメール山はインド仏教の世界観を象徴するもので、とんでもない高さの山だといわれています。
登ることはおろか頂上に立つことも難しいほどの高さを誇っていると考えられています。
そのためこれから仏の世界へと旅立つ故人の遺骨や遺影写真、さらに故人を仏の世界へ導いてくれる本尊などは須弥壇に安置されます。
白木祭壇と花祭壇のメリット・デメリット
・白木祭壇のメリット
仏教に特化した祭壇です。
圧倒的な存在感があるので、男性的な印象になります。
昔は白木祭壇でのお葬式が一般的でしたから、伝統的な仏教のお葬式をしたい人におすすめです。
・白木祭壇のデメリット
白木祭壇は値段が不透明という点がデメリットにあります。
祭壇の大きさによって料金が変わるのはわかるのですが、その料金が本当に適正価格であるのかがわからないのが白木祭壇のデメリットといえます。
・花祭壇のメリット
宗教や宗派にこだわらず、どのようなお葬式にも対応が出来ます。
生花で作る祭壇なので女性的な柔らかさと華やかさが演出できます。
・花祭壇のデメリット
花祭壇にも定番のデザインというものがあります。
定番のデザインを選べば白木祭壇よりも安く利用が出来ますが、デザインにこだわりがあったり祭壇全体のサイズが大きくなれば、追加料金が発生します。
また依頼する葬儀社が提携している花屋の技術によって、花祭壇の仕上がり具合も変わります。
せっかくデザインにこだわっても、提携している花屋の技術が伴わない場合は対応できないこともあります。
家族葬の祭壇選びのポイントは?
家族葬でお葬式をする場合、祭壇選びは「あなたがどんなお葬式にしたいのか」に全てかかってきます。
・普通のお葬式を希望するなら白木祭壇
日本のお葬式の大半が、仏教式によるお葬式です。
そのため「特別なことはしなくてもいい」というのであれば、仏教のお葬式に特化した白木祭壇がおすすめです。
ただし白木祭壇の値段は祭壇の大きさによって異なりますから、会場の規模に応じて決めるのがポイントです。
・少しでも華やかさを演出したいのなら白木祭壇+花祭壇
「普通のお葬式がしたいけれど、せめて最後ぐらいきれいな花で送ってあげたい」という場合は、白木祭壇+花祭壇の組み合わせがおすすめです。
ベースは白木祭壇ですが、須弥壇の上に生花祭壇を置いていくので華やかさと柔らかさが演出できます。
ただしこの場合は、花祭壇に使う生花の量によって料金が変わります。
もちろん祭壇の大きさによっても変わりますので、「祭壇のサイズを決める→生花の量を決める」の方法がおすすめです。
・自分たちらしいお葬式をしたいのなら花祭壇
宗教や宗派にこだわらずオールマイティに対応できるのが花祭壇です。
アレンジやデザインも希望に応じて対応してくれるので、お葬式にこだわりがある人にはおすすめです。
ただし特殊なデザインや使用する花の種類を限定する場合などは、追加料金が発生します。
また白木祭壇と同じように、花祭壇も大きさによって料金が変わります。
これは使用する生花の量が関係することが原因です。
まとめ
家族葬のお葬式でも、祭壇選びは「家族の希望」が重要になります。
昔ながらの白木祭壇も最近人気の花祭壇も、それぞれにメリットとデメリットがあります。
この2つの違いを十分理解しておくことが、賢い家族葬の祭壇選びのポイントです。