家族葬の場合、お葬式に呼ぶ人の範囲を家族が決めることが出来るというのが一番のメリットです。
規模が小さなお葬式であれば、周りに気を配る必要もなくお別れの時間に専念できます。
そうはいってもそれは「家族の希望」であり、実際に故人と付き合いのある人に対しては訃報連絡を入れなければいけません。
でもその際にきちんと弔問を断らなければ、結局家族の希望もかないません。
では弔問を断るにしても、相手を不快に思わせないような上手な断り方はあるのでしょうか?
家族葬で弔問を断ることのデメリットも理解しておこう
「家族だけでゆっくりと送りたい」という家族の気持ちはよくわかります。
弔問客が来れば、どうしてもその対応は避けることが出来ません。
精神的にも肉体的にも疲労のピークに達している状態できちんとした対応をすることは、並大抵のことではありません。
でも弔問を断れば、限られた時間を精一杯お別れの時間として使うことが出来ます。
これは大きなメリットといえます。
また費用の面でもメリットはあります。
弔問に訪れる人は必ず香典を持参します。
ですからいただくお香典のお礼を兼ねて返礼品を準備しなければいけなくなります。
準備するものが増えればその分費用が掛かりますから、できるだけ費用をかけずにお葬式をしたいと思うなら弔問客を断るというのも一つの方法です。
でも弔問を断るということにはデメリットもあります。
・葬儀終了後個別に自宅へ弔問に訪れてくる
お葬式への参列は辞退したとはいえ、故人と生前交友があった人は何とかして弔意を表したいという思いになるのは当然です。
またお葬式での別れの場がないわけですから、訃報を知ったとしてもそれを現実のものとして受け止めることが出来ない状態にもあります。
人の心は不思議なもので、たとえ訃報を知ったとしてもその現実を目で見て体験しなければ本当の意味で受け入れることはできません。
不思議に思うかもしれませんが、「遺影写真を見て線香を立て、手を合わせる」という動作が死を現実のものとして受け入れる最もわかりやすい体験なのです。
悲しみは乗り越えることはできませんが、死を受け入れるということは悲しみを癒すのに必要になります。
そのためにも葬儀後に自宅へ弔問に訪れます。
弔問をしたいという人の気持ちを否定するということは、たとえ遺族であってもできません。
ただお葬式とは違い個別に対応していかなければいけないのですから、やはり負担は大きくなります。
特に週末は弔問客が増えるため、お葬式が終わってからもしばらくは外出が出来ない状態が続くこともあります。
・相手に不快感を与えることがある
弔問を断るということは、弔意を表したいという相手の思いを否定することでもあります。
もちろん事情があって弔問を断るのですが、その真意が相手にきちんと伝わらず誤解されたままになってしまうことがあります。
そのため弔問を断ったことをきっかけに疎遠になってしまうということもよくあります。
特に親族の弔問を断った場合は、その後の親戚づきあいにも大きな影響を与えます。
・その都度弔問客の対応しなければならなくなる
お葬式での弔問を断るからには、きちんとその理由も述べなければいけません。
理由を伝えてもらえば弔問客も家族の意向に理解を示してくれます。
でも中には弔問を辞退する代わりに供花や弔電・お供え物などで弔意を表そうとします。
この場合、「供花・お供え物も辞退する」とあらかじめ伝えていればよいですが、それが伝わっていない方からいただいた場合は素直に受け取るのがマナーです。
そして受け取った方に対してはやはり何らかのお礼をする必要があります。
お礼の品物選ぶときには、いただいた品物の金額の1/3~半分程度を目安にするのが基本です。
供花の場合は1.5~2万円が相場ですから、お返しをするときは5000円前後を目安に準備します。
弔電の場合は3000~5000円が目安になりますから、お返しをするときは2000円前後が目安になります。
これらの品物をその都度手配していくとなると、かなりの手間がかかります。
もちろんこのような品物は全て郵送となりますから、費用だけを見てもかなり割高になります。
家族葬で弔問を断る上手な方法
家族葬で弔問を断る場合、どのようにすれば一番すっきりするかというと「ストレートに辞退すると宣言すること」です。
「辞退してほしい」という気持ちをオブラートに包んで表現すると、かえって何が言いたいのか分からず相手を混乱させてしまいます。
それよりも「家族葬で行いますので、弔問・香典は固辞いたします」とした方が、伝えられた相手としても対応がしやすいものです。
また遠い親戚の場合には、訃報連絡の際に「今回は近親者のみで執り行う予定です」と一言付け加えておくことでその後のトラブルを回避することが出来ます。
・職場に対する対応は?
お葬式に参列するために休みをもらう場合は、休みの理由を職場に告げなければいけません。
企業によっては忌引き休暇として処理することも検討しなければいけないので、故人との続柄について聞かれます。
続柄によって職場の対応も変わります。
代表者を弔問に伺わせる場合もありますし、供花や弔電を贈ることもあります。
これはあくまでも企業の規定に沿って行われるものなので、もしも辞退するのであれば休みの相談をする際にきちんとそのことを伝えておかなければいけません。
この場合もストレートに辞退することを伝えるのが一番です。
もう少し言葉を変えて伝えたいのであれば、「この度の葬儀は家族葬で執り行うため、葬儀・告別式は非公開とさせていただきます。なにとぞご了承ください」という表現も良いでしょう。
弔問の辞退をお願いしたはずなのに弔問客が来た場合は?
弔問客としても、家族葬で執り行うということが分かった時点で「一般弔問客の参列は遠慮すべき」ということは理解しています。
それでもわざわざ駆け付けるということは、どうしてもその場で弔意を表したいという強い気持ちがあるのでしょう。
この場合はその申し出を頑なに拒否することはマナー違反です。
あくまでも善意で行っていることですから、その気持ちには素直に感謝する必要があります。
ただし気持ちとしては戸惑いもあるはずです。
そんな時は「今回は家族でのお別れの時間をゆっくりと取らせていただきたくて家族葬とさせていただきましたが、ご厚意はありがたく思っております」と対応してみてください。
相手もその一言で、「これ以上は家族に負担をかけさせてはいけない」と気持ちにブレーキがかかります。
ストレートに「お断りします」というと角が立ちますが、「家族の思いがあってのことなのでどうぞご配慮ください」という想いが伝われば簡潔にお別れを済ませて席を外してくれるはずです。
まとめ
弔問をお断りするということは、何も悪いことではありません。
限られた時間を家族としてゆっくりと過ごすためには、できるだけ余計な仕事で席を離れないようにすることも大切です。
ただし弔問に訪れる人は故人との別れの場として足を運びます。
生前付き合いのあった人に対して別れの場を提供するということも、喪主・遺族であれば考えなければいけません。
もしもお葬式で弔問を拒否するのであれば、後日自宅での弔問に応じるなど別の対応が求められます。
どのような方法を選ぶかは家族の気持ち次第です。
ただどちらを選ぶにしてもメリット・デメリットはあります。そのことに十分注意しておくことが大切です。