生きているうちにお葬式を行う生前葬は、さまざまある葬儀スタイルのうちの一つです。
でも葬儀といえば亡くなってから行うことが一般的なので、生前葬は数ある葬儀スタイルの中でも非常に珍しいお葬式といえます。
そんな珍しいお葬式だからこそ、いざ招待されるとどのように対応すればよいのか戸惑う人の方が多いです。
そこで今回は生前葬に招待された時に知っておきたいマナーや流れ、注意点について分かりやすく解説していきます。
生前葬は参加する方にもメリットがある
・そもそも生前葬とはどんなお葬式なのか?
生前葬は、数ある葬儀スタイルの一つです。
一般的なお葬式と違うのは「お葬式の主役が喪主を務める」ということです。
一般的なお葬式は、「訃報連絡を受ける→弔問に伺う」という流れになりますよね?
つまり「お葬式の主役となる人の死」が前提にあります。
亡くなった人が喪主を務めることはできませんので、喪主は遺族の代表者が務めます。
また挨拶をする時も「この度はご愁傷さまです」が基本です。
ところが生前葬ではお葬式の主役がホスト役を務めます。
もちろん生きているわけですから、「ご愁傷様」という言葉は適切ではありません。
とはいえ生前葬もお葬式であることに変わりはありません。
生前葬を行う人の最も大きな目的は、「縁のあった人と直接会ってお別れをすること」にあります。
ただしそのお別れの意味も人によって様々です。
著名人の場合は「社会的な役割に終止符を打つ」という意味で行うことが多いですので、この場合は「引退式」のようなイメージに近いでしょう。
最近では高齢となったことを理由にけじめとして生前葬を行うということも増えています。
この場合は誕生日や古希・米寿のお祝いを兼ねて行う人が多いです。
そのほかにも余命宣告を受けたことで生前葬を行う人もいます。
この場合は「最後に会いたい人がいる」「直接会って感謝の気持ちを伝えたい」「残すことになる家族(または仕事など)のことを託したい」などが考えられます。
いずれにしても生前葬を行う人の多くは、「自分の残された時間をどのように過ごしたいか」がはっきりと決まっています。
・「生前葬に招待される」という意味は?
生前葬に招待されるということは、あなたに対して特別な感情を持っているということが考えられます。
生前葬は一般的なお葬式のようにお付き合いで参加するのではなく、招待する側も招待される側も「積極的に参加する」ということが前提にあります。
もちろん特殊なスタイルのお葬式ですから招待をされたあなたとしては複雑な気落ちを抱いているはずです。
でも生前葬は基本的に明るく終始和やかな雰囲気で行われます。
ホストもゲストも一緒にその場を楽しみながら、改めてこれまで築き上げてきた関係を振り返るのです。
ですから生前葬は、ゲストとして参加するあなたにとっても大きな意味があります。
・生前葬ではどんなことをするのか?
生前葬でどんなことをするのかは、主催する人次第です。
お葬式の主役となる人が様々な趣向を凝らした企画でゲストを楽しませます。
基本的に宗教的な儀式というものは行わず、「お別れ会」というよりは「感謝祭」のようなイメージに近いです。
食事が用意されていることも多いですが、式の内容によって食事のスタイルも変わります。
食事をメインにする場合はコース料理や会席料理が用意されることもありますし、スライドショーや生演奏、カラオケ大会やビンゴゲームなどが企画されている場合は立食パーティースタイルで行われることもあります。
ただし一般的なお葬式で行う焼香や献花などのお別れの儀式はありません。
その代り直接本人と会って話をするということが、生前葬のお別れのスタイルです。
・生前葬は「結婚披露宴」に近い
生前葬そのものが特殊なお葬式であるだけでなく、式の内容も全て主役である本人次第ということもあって「これが生前葬の流れ」というものがありません。
こう説明すると余計に混乱するかもしれませんが、「何をしてはいけない」というものがないうえに「何をしなければいけない」というものもないのです。
その上であえてわかりやすく説明をするとすれば「結婚式の披露宴のようなもの」といえるでしょうか?
生前葬では開式と閉式の挨拶は、主催者であり生前葬の主役である本人が行います。
その後、招待客からのスピーチなどが続き、乾杯の挨拶を合図に会食がスタートします。
そのあとは主催者が企画したプログラムに基づいて式は進行していきます。
感謝の言葉を含む喪主の挨拶の後、式場の出口で主催者本人がゲストに記念品を渡しながら一人ひとり見送ります。
これが一般的な生前葬の流れです。
つまり生前葬は「涙を流してお別れをする日」というのではなく、「表舞台に立つことに対するけじめの日」または「関係を築けたことに対して直接感謝の気持ちを伝える日」なのです。
生前葬に参加するときの服装は?
生前葬の場合は、行われる日の概ね1か月前までに招待状が届きます。
招待状には生前葬が行われる場所や日時だけでなく、当日のドレスコードについての指定も書かれています。
どちらかというとお祝いのようなイメージの会なので、ドレスコードの指定がなかった場合でも喪服を着ていくのはNGです。
また宗教的な別れの儀式などもありませんので、数珠を持参する必要もありません。
・ドレスコードの指定がない場合は?
招待状にドレスコードの指定がない場合は、会場に合わせるのがおすすめです。
お葬式の一種ではありますが生前葬なので、葬儀会場よりもホテルや料亭などで行われることが多いです。
ですから会場の雰囲気に合わせてスーツやジャケットを選ぶようにすると良いでしょう。
どうしても不安が残る場合は、主催者に直接確認するという方法もあります。
また本人の連絡先が分からない場合は、会場として指定された場所に確認をしてみるという方法もあります。
生前葬でお香典はどうする?
生前葬の場合は、「香典を受け取る」「香典を辞退する」「会費制にする」の3タイプあります。
「香典を辞退する」または「会費制にする」の場合は、あらかじめ招待状にその旨が記載されています。
ただ香典に関する記述がない場合は、香典を準備するのがマナーです。
ただし香典というのは仏教用語なので使いません。不祝儀袋で準備する場合の表書きは「書かない」または「お花料」のどちらかが良いでしょう。
不祝儀袋を使うことに抵抗がある場合は、白い無地の封筒に名前だけ記入して準備するのが無難です。
また誕生日などと併せて行う場合は「お祝い」という意味を込めて祝儀袋で準備することもあります。
金額の目安としては1~2万円が相場になります。
お葬式では新札は縁起が悪いといわれていますが、生前葬の場合はすでに日程を告知しているわけですから新札で準備してもマナー違反とはなりません。
まとめ
生前葬はまだまだ認知が低い特殊なスタイルのお葬式なので、招待状が届くと戸惑いを感じる人の方が多いはずです。
でも生前葬に招待している人の本音は「別れの場」ではなく「感謝の場」としてあなたに招待状を送っています。
ですから参加する側としてもできるだけ積極的に参加することが、主催者の気持ちを理解することになります。