お葬式にかかるお金は高いということは、きっと誰もが分かっていることでしょう。
ニュースやメディアなどでも高額な葬儀費用について何度も特集を組んで取り上げていますし、年齢を重ねていくうちに同年代の人の中にはすでに喪主を経験したという人も出て来るでしょう。
そうはいってもお葬式の話ですから、お酒の席などで和気あいあいと話して盛り上がるというネタでもありません。
それに「いつかは自分も喪主になる日が来る」と思っていたとしても、元気な親の様子を見ているとまだまだ先のようにも思えてきます。
とはいえ金額が高いお葬式というイメージが強い分、いざとなった時のお金を準備しておかなければいけないという気持ちになるのは当然です。
でも実際にお葬式屋さんに行って見積もりを出してもらうことには、みなさんも抵抗があるのではないでしょうか?
そんな時には、お葬式にかかる費用の計算方法を知っておくと便利です。
今回はお葬式にかかる費用と、無駄のないお葬式費用の算出方法についてわかりやすく解説していきます。
お葬式にかかるお金の話
【お葬式にかかる費用】というキーワードで検索すると、「葬儀社に支払うお金」「戒名料の相場」「お墓や納骨に関する費用」の3つのテーマに関する記事がピックアップされます。
でも実際に家族が負担しなければいけない費用はこれだけではありません。
人の死の前後に関わる費用は、すべてお葬式後に支払います。
そのため家族が負担するお金のことを考える時には、「病気が分かってから亡くなるまでにかかる費用」と「亡くなってからお葬式が終わるまでにかかる費用」の2つを考えておかなければいけません。
もちろんどちらにおいても、家族に費用を軽減するための制度やサービスがあります。
とはいえ「いざその時を迎えるまで」も「その時が来た後のこと」も、一番そばで立ち会わなければいけない家族にとっては費用だけでなく精神的にも非常に大きな負担になります。
そのため元気なうちにお葬式に関することを考えるのであれば、両方にかかる費用について考えておく必要があります。
病気が分かったからかかるお金で利用が出来る制度
病気が分かり入院や手術が必要になった時に大きな負担になるのが、入院や治療に関する費用です。
病状によっては入院期間も長期にわたることもあり、月々に支払う医療費も家族の負担になります。
そのため保険に加入している場合は、一度に支払う医療費が高額にならないようにする便利な制度があります。
それが「限度額認定証」と「高額医療費の控除」です。
★限度額認定証とは
限度額認定証は、「医療費が高額になりそうな場合に申請する制度」です。
限度額認定証は「支払いを済ませる前に提示すること」によって、病院の窓口で支払う金額が自己負担限度額の範囲内となります。
自己負担限度額は世帯の収入状況などによって異なりますが、保険の適用範囲内であれば自己負担限度額以上に支払う必要が無くなります。
そのため一度に支払う医療費のことで不安になる必要が無くなります。
ただしこの制度を利用するためには、「支払いを済ませる前に認定証を提示する必要がある」ということを覚えておいてください。
さらに差額ベッド代や食事代などは対象外となります。
★高額医療費の控除とは
高額医療費の控除は、限度額認定証を提示せずに支払いを済ませた場合に利用できる制度です。
ただしこの場合は領収書などの提示が必要になるだけでなく、審査に時間がかかるという問題があります。
また払い戻しまでにかかる時間が平均1~3か月と長いため、その分家族の負担が大きくなります。
お葬式にかかるお金で利用できる制度
お葬式にかかった費用に対しても、払い戻しを受けることが出来る制度があります。
これは「故人が加入していた保険」によって払い戻される金額にも違いがあります。
基本的には火葬料金に相当する金額が目安になりますが、領収書や必要書類をもって申請すると払い戻しを受けることが出来ます。
★お葬式のためにかかった費用は税金の控除対象になる
2016年の相続税に関する法改正によって、一般的な世帯であっても相続税の課税対象となる対象が広がりました。
ただし相続税には「控除の対象となる項目」があります。
その一つが「お葬式にかかった費用」です。
お葬式にかかる費用には様々なものがありますが、支払いが証明できる書類(領収書など)があれば控除となります。
もちろん葬儀社に支払うお金や宗教者に支払うお金もこれらに含まれます。
ただしお葬式当日に初七日や四十九日などの繰り上げ法要を行う場合は、控除対象となりません。
あくまでも「お葬式にかかった費用」となります。
葬儀社に支払うお金の算出方法
お葬式に関わるお金には様々なものがあります。
そのため支払う金額の方ばかりに気が回りがちですが、お葬式では収入もあります。
それが「香典」です。
香典としていただいたお金は「税金」の考え方では「収入」として扱いません。
でもお葬式の費用を支払う家族にとっては、「お葬式にかかる費用に充てるお金」として計算することが出来ます。
お葬式屋さんの価格表示は、一般的に「セット販売」となります。
最も多いのが「祭壇のランク=プラン名」となっているため、式場で利用する祭壇のランクを決めると自動的にお葬式の費用が計算されるようになっています。
もちろん葬儀屋さんに支払う費用には、「変動費用」と呼ばれる項目もあります。
これは一般会葬者へ渡す返礼品や飲食代・飲み物代などのことを言います。
実際に使ったもの対して費用を請求するため、あらかじめ見積もりを出した時点と実際に請求を受ける金額が変動します。
そのため「変動費用」といいます。
さすがに変動費用については実際にお葬式が終わってみなければ金額が分からないため、事前に金額を予想して準備するのは難しいです。
とはいえ返礼品も「香典金額の半額程度(半返し)」が基本となっていますので、ある程度予想することもできます。
基本的なお葬式の費用の算出方法
変動費用以外の葬儀社へ支払う金額は、費用の算出方法をうまく活用すればあらかじめ準備することもできます。
またお葬式のプランを決める際の判断基準にもなります。
★費用の算出をする前にあらかじめ考えておかなければいけないこと
費用を予測するための計算式には、「お葬式に呼ぶ人の人数」が関係してきます。
これは単純に人数だけでなく、「どのような関係を持った人をお葬式に呼ぶのか」ということも大切になります。
【例1】親族10名と一般会葬者20名のお葬式の場合
親族の場合の香典費用の相場は10000~30000円です。
平均をとって20000円と計算すると、【20,000円×10名=200,000円】が香典による収入と考えます。
一般会葬者の場合、香典費用の相場は3000~5000円です。
付き合いの深さによって金額が異なるのですが、仕事上の付き合いなどが主な場合は3000円が相場です。
そのため算出する場合は【3000円×20名=60,000円】が香典による収入と考えます。
ですから親族・一般会葬者からの香典だけでも26万円は、お葬式の費用として充当することが出来ます。
【例2】家族・親族のみで20名のお葬式の場合
この場合遺族は香典を出しません。そのため収入として考えられるのは、親族の香典のみとなります。
ですから費用を算出する場合は【お葬式に呼ぶ親族の人数×20000円】が香典で賄うことが出来る費用となります。
お葬式で儲かったとならないようにするのが費用を決める際のポイント
お葬式にかかる費用は、これまでの貯金から全額準備しなければならないというわけではありません。
参列者からいただく香典も、お葬式の費用を賄うことが出来る収入として考えます。
ただし「お葬式で儲かった」ということにならないようにするのが、施主となる遺族としての最低限のマナーです。
いくら費用を節約したいと思っても、お客様に対してきちんとしたおもてなしや対応をすることが大切です。
とはいえお返しの品物も、「香典金額の半額程度」が商品決定の目安となります。
そのためあまり高額な品物を準備すれば赤字になりますし、あまりにも安すぎる品物を準備するとお客様に対して失礼になります。
まとめ
お葬式の費用の準備というと、どうしても亡くなった後にかかる費用のことばかりに意識が向きがちです。
でも実際に家族が負担するのは、亡くなる前の治療費からお葬式が終わった後の納骨・お墓の費用までかかります。
「死」は人間として生まれた限り避けて通ることが出来ない出来事です。
だからこそ行政サービスも家族に負担がかからないようにするために、様々な制度やサービスを提供しています。
こうした制度をうまく活用しつつも、お葬式費用の算出方法を参考にどの程度(規模や金額)のお葬式をすればよいのかを考えていくのが正しいお金の準備の仕方といえます。