お葬式に参列するとお礼状とともに渡されるのが清め塩です。
宗教によっても必要・不要がありますが、参列する側としては「お清めをしないと気になる」という人もいるはずです。
ではどうしてお葬式では清め塩を準備していることが多いのでしょうか?
今回はお葬式で準備されている清め塩の意味や使い方、マナーについて分かりやすく紹介します。
お葬式の清め塩にはどんな意味や由来があるの!?
お葬式の後に配られる事のある、お清めの塩。
この清めの塩に、どんな意味や由来があるのかからお話していきます。
清め塩の意味や由来は?
清め塩というと「お葬式が終わった後に配られるもの」というイメージがありますが、そもそもの由来としては神道における考え方にあるといわれています。
神道では様々な神様がいます。
なにしろ「八百万の神」と呼ばれているくらいですから、ありとあらゆるところに神様が存在するというのが神道の考え方です。
神道における神様には不思議な力があると考えられています。
人間が神様に対して善い行いを行えば豊作や豊漁など幸運をもたらしてくれます。
ところがひとたび神様を怒らせてしまうと天災に病気、飢餓など人間に対して災いをもたらします。
つまり不幸や災いを避けるためには「神様を怒らせないこと」が大前提と考えるのが神道です。
そんな神道の神様が嫌うのが「穢れ」(けがれ)です。
中でも「死」は神様が最も嫌う穢れでもあります。
ただし神様が嫌う「死の穢れ」は、死者の魂のことではありません。
死は「邪気」によってもたらされる出来事であると考えているので、邪気を払うことが身を清めるという意味になります。
そのため「邪気払い」の意味がある塩が使われるようになったといいます。
盛り塩と清め塩は意味が違う?
塩を使う慣習といえば、お葬式の清め塩のほかにも「盛り塩」があります。
飲食店などの入口に盛り塩が置かれている様子を見たことがある人も多いとは思いますが、こちらはお葬式の清め塩とは別の意味で使われています。
盛り塩にも清め塩と同じように魔除けの意味があります。
でも盛り塩には魔よけというよりも「集客」としての縁起担ぎの意味が強いです。
その由来は定かではありませんが、「西晋の初代皇帝であった武帝にまつわるに話が由来」という説が有力です。
武帝が後宮巡りをする時、その日訪問する女性の部屋を決める時に車を引く牛が止まった場所で決めていたといいます。
ある日、武帝の車を引く牛が数日同じ部屋の前で止まります。
実はこの部屋に使える使用人の中に大変頭の良い女性がいました。
その女性は牛が塩をなめる習性があることを知っていたので、その習性を利用して部屋の前の通路に盛り塩を置いていたのです。
案の定、部屋の前を通った牛は盛り塩に気が付き、舐めるために足を止めます。
そのことを知らずにいつものように牛が止まるのを合図にしていた武帝は、連日同じ女性の部屋を訪れることになったというわけです。
この話はあっという間に庶民の間に広がり、「入口に盛り塩を置くと客が集まる縁起担ぎの慣習」となります。
いつしかこの慣習が日本にも広まり、同じく商売の縁起担ぎの慣習として定着しました。
この話からも分かるように、店の入り口に置かれてある盛り塩とお葬式の清め塩は同じものでは無ないことが分かります。
もちろん「魔除け」としての効果は共通しているのですが、根本的な効果としては全く別の意味で使われているのです。
仏教の宗派によっては清め塩をしない宗派もある
神道においては「死=穢れ」ととらえることから身を清める方法として清め塩が行われてきました。
ところが仏教では本来「死=穢れ」ではありません。
仏教では、「死んだらいつかは仏様になる」が根本的な考えにあります。
「この世もあの世も同じひとつの世界」と考えているので、死は穢れとはとらえていません。
つまりこの考え方からすれば仏教で清め塩を行うのは間違っているのです。
ただしお葬式は古くからの日本(または地域)の慣習が根強くあります。
そのためかつて一般的だった神道のお作法である「清め塩」が日本のお葬式の慣習として残っているのです。
そのため仏教式のお葬式であっても清め塩が使われるのは「古くからの慣習」として行われているだけで、宗派によっては「本来の仏教の教えに基づいて清め塩をしない」ということもあります。
清め塩は「食塩」ではない
清め塩は、あくまでも身を清めるための塩として準備されています。
そのため食品としての基準を満たしていませんから、余った清め塩を料理用に使うことはおすすめしません。
余った清め塩は「そのまま処分する」が一番ですが、もったいないと感じる場合は「殺菌のために庭に撒く」など食用以外の方法で再利用すると良いでしょう。
正しい清め塩の使い方
正しい清め塩の使い方は次のようになります。
・手を洗う
葬儀場を出ると水が入れられた手桶がありますので、柄杓で水をすくって手を洗います。
塗れた手は手桶とともに準備されているタオルで手を拭いても良いですし、手持ちのハンカチなどで手を拭いても良いです。
・胸→背中→足の順に塩をかける
清め塩をかける順番は「胸→背中→足」です。
準備された塩をひとつまみし、順番に塩を振りかけます。
すべての個所に塩を振りかけたら、最後に手で軽く振り払います。
・式場の出口に撒かれている塩を踏む
大きな葬儀の場合は、式場の出口に塩がまかれています。
これは最後に足元の邪気を払う意味がありますので、必ず踏んでから式場を出ます。
清め塩に関するQ&A
Q、清め塩は玄関に入ってからやっても良い?
A、玄関に入る前に行いましょう。
お葬式の清め塩には、「邪気を払う」という意味があります。
そのため清め塩をせずに玄関に入れば、家の中に邪気が入ってくるということになります。
ですから清め塩をする場合は、必ず玄関に入る前に行いましょう。
Q、清め塩が準備されていない場合はどうすればいい?
A、あらかじめ自分で準備するのが無難です。
宗教によっては「死を穢れと考えない宗教」もあります。
そのためお葬式で清め塩を準備しない場合もあります。
「予め清め塩があるか確認する」という方法もありますが、あまり現実的ではありません。
葬儀に関する考え方は人それぞれですので、清め塩が準備されていなかったとしてもそのことがマナー違反にはなりません。
ですからどうしても清め塩がないと気になる場合は「自分で準備する」が無難でしょう。
Q、肩に清め塩を振るだけでも問題はない?
A、自分一人で行う場合は問題ありません。
清め塩をかける時には、塩を一つまみし左右交互の肩越しに背中に向けて塩をかけます。
Q、清め塩をし忘れて家に入ってしまった場合はどうする?
A、玄関に戻ってから清め塩をします。
本来であれば玄関に入る前に清め塩をしなければいけないのですが、うっかりし忘れて家の中に入ってしまった場合は玄関の外に出て清め塩をしてから家の中に戻れば問題ありません。
そもそも清め塩は神道においてのお葬式のお作法なので、仏教式の場合はそれほど気にする必要はありません。
お葬式における清め塩は古くからの日本の慣習ですから、気にならないのであればわざわざ清め塩をしなくても問題はありません。
まとめ
お葬式の清め塩も、その意味や由来を知ると必ずしも必要なものではないとも言えます。
ただし日本のお葬式は、宗教としての教えよりも古くからの風習や慣習が色濃くあるともいえます。
その一つが「お葬式の清め塩」とも言えます。
ただし清め塩は「死=穢れ」とするところからきているので、遺族や宗教者によってはそのことを否定的にとらえることもあります。
そのためあえて式場に清め塩を準備しないこともあります。
とはいえ清め塩は古くからの日本の慣習ですから、「どうしても清め塩がないと気になる」という人はあらかじめ自分で準備してから参列すると良いでしょう。