お葬式の場面では、弔問に訪れた人に対して喪主から挨拶をするのがマナーです。
でもお葬式の挨拶には「タブー」と呼ばれるものもあり、それらのことを考えるとどのように挨拶をすればよいのかわからなくなることがあります。
そこで今回は、喪主の挨拶をシーン別に紹介します。
喪主の挨拶もお葬式のシーンによって内容は変わる
喪主の挨拶というと、思い浮かぶのは告別式での挨拶なのではないでしょうか?
確かに一番重要な挨拶であることは間違いありませんが、それ以外の場面でも喪主の挨拶を求められることがあります。
弔問に訪れた人からのお悔やみの言葉に対する挨拶
訃報を受けて駆け付けた弔問客は、故人との対面の際にお悔やみの言葉を述べてきます。
この場合も、喪主としてお礼の言葉を述べる必要があります。
ただし故人との対面における挨拶は、「簡潔な内容」がマナーです。
お悔やみの言葉もできるだけ喪主や遺族の負担にならないように簡潔に述べます。
ですからそれに対する挨拶も、できるだけ簡潔に済ませるようにします。
挨拶で使う言葉は、弔問客と故人および喪主との関係によっても変わります。
基本としては「わざわざ忙しいのに対面のために足を運んでくれてありがとう」という感謝の気持ちが伝わる内容であれば問題ありません。
お通夜での喪主の挨拶
お通夜でも弔問客に対して喪主がお礼の挨拶を行います。
お通夜での挨拶のポイントは3つあります。
1つ目は「わざわざお越しいただいたことに対する感謝の言葉」です。
忙しい時間を割いて通夜式場に駆けつけてくれているのですから、そのことに対して素直に「ありがとうございます」という言葉が必要です。
2つ目は「翌日の葬儀・告別式の日程の案内」です。
お通夜も大事なセレモニーですが、翌日に行われる葬儀・告別式をもって本当のお別れとなります。
ですからお通夜の場を借りて翌日のスケジュールの案内をすることも大切です。
3つ目は「通夜ぶるまいの案内」です。
通夜ぶるまいの内容は地域によっても異なりますが、別室にて料理を準備しているのであれば、そのことを案内することも必要です。
告別式での喪主の挨拶
葬儀・告別式の閉式前に行います。(地域によっては告別式開式前に行うこともあります)
告別式での喪主の挨拶は「謝辞」と呼ばれており、挨拶で伝えなければならないことが決まっています。
そのため特にオリジナルの文章を準備しなくても、希望があれば葬儀社側が挨拶文を準備してくれます。
告別式の挨拶にも、3つのポイントがあります。
1つ目は「参列してくださったことに対するお礼の言葉」です。
お葬式に参列することを「会葬(かいそう)」といいますが、お礼の言葉は冒頭に置きますので、一般的には「本日は御多忙のところ、ご会葬いただき誠にありがとうございます」などが使われます。
2つ目は「故人と親しくしてくださったことに対するお礼の言葉」です。
当然のことですが亡くなった人が自分の言葉でお礼の言葉を伝えることはできません。
「故人の代わりにお礼を申し上げる」というのが2つ目のポイントです。
3つ目は「今後もこれまで同様のお付き合いをお願いする言葉」です。
お葬式に参列する人は、故人と直接付き合いのあった人だけとは限りません。
またどのような付き合いがあったのかということをその都度確認することもできません。
ですが「亡くなったことをきっかけにこれまでのご縁が切れないでほしい」という思いはあるはずです。
そのため挨拶の締めくくりに、「今後は残されました遺族一同にも、故人同様のご指導・ご鞭撻を賜りますよう宜しくお願い申し上げます」などのような一文を加えます。
家族葬の場合でも挨拶は必要なの?
家族葬というと「家族のみで行うお葬式」というイメージがあるかもしれませんが、実際には「家族・親族以外に故人と親しい付き合いをしていた人を含む小規模なお葬式」を家族葬といいます。
ですからいくら家族葬であったとしても、お通夜やお葬式で喪主の挨拶は必要になります。
ただし家族と限られた親族のみで行う家族葬の場合は、改まった文章での挨拶は省略することもあります。
必ず喪主が挨拶をしなければいけないの?
本来であれば喪主が挨拶をするのがベストです。
でも必ずしもそれぞれのシーンで喪主が挨拶をしなければいけないということはありません。
ですから故人のきょうだいや子ども、孫が喪主の代理として挨拶をしてもマナー違反ではありません。
ただしその場合は、故人とどのようなつながりがあるのかということを挨拶の冒頭で述べる必要があります。
【例文】
本日はお忙しい中、ご会葬いただき誠にありがとうございます。
私は故人の○○(続柄)にあたります○○○○(名前)と申します。喪主・○○になりかわり、遺族代表として一言御礼の挨拶を申し上げます。
挨拶をするときは文章を見ながらでもマナー違反ではない?
お葬式の挨拶文には、普段ほとんど使わないような難しい言葉や表現が随所に含まれています。
また限られた時間の中で弔問客に失礼がないように挨拶をしなければいけませんから、やはりあらかじめ文章を準備しておくことは大切です。
さて問題は「準備した文章を見ながら挨拶をしても良いのか」という点ですよね?
これは見ながら挨拶をしたとしても特に問題はありません。
ただしどのシーンでの挨拶にしても、必ず締めの言葉として「本日は誠にありがとうございました」という言葉があります。
もしも少しでも遺族としての感謝の気持ちを直接伝えたいと思うのであれば、最後の「ありがとうございます」の部分だけは文章を見ずにお客様の顔を見ながら挨拶をするのも一つの方法です。
お葬式で喪主の挨拶をする際の作法とは?
お葬式で喪主の挨拶をする際、タブーとされているのは「遺影に向かってお尻を向けること」です。
遺族を代表する挨拶なので式場の中央で挨拶をする方が良いと考えるかもしれませんが、弔問客はあくまでも「故人とのお別れ」をするために式場を訪れています。
ですからいくら喪主の挨拶といっても、遺影に背を向けて謝辞を行うのはタブーです。
ちなみに式場のスペースの関係でどうしても遺影(遺体または遺骨)に背中を向けなければいけない場合も、体の向きを少しずらすなどの方法をとれば問題ありません。
挨拶をする際の流れ
①司会者から挨拶をする人の名前が紹介される
②挨拶を行う位置にスタンドマイクが準備される
③マイクの1歩手前まで進む
④弔問客に対して深く一礼する
⑤挨拶文を読み上げる
⑥後ろに大きく一歩下がり、弔問客に対して深く一礼する
⑦所定の席に戻る
オリジナルの挨拶文を作るときのポイントは?
最近ではオリジナルの挨拶文を作って喪主の挨拶を行う人も増えています。
たしかにありきたりの定型文よりもオリジナルの文章の方が、挨拶を聞く側の印象はぐっと良くなります。
ただしそれぞれの挨拶では、必ず文章の中に加えなければいけないポイントがあります(※1章を参考にしてください)。
どのような内容のオリジナル文を作っても構いませんが、必ず文章の中に加えなければならない挨拶の言葉は忘れずに加えるようにします。
また挨拶にかかる時間にも注意が必要です。
弔問客の中には忙しいスケジュールの合間を縫って式場に駆けつけている人もいます。
また告別式の終了後に火葬を控えている場合は、定刻通りに閉式しなければ、その後に控えている出棺・火葬のスケジュールに影響が出ることもあります。
基本的には3分程度を目安に挨拶を済ませるということが理想ですが、長い挨拶文であったとしても5分を超えることのないようにするのが喪主としてのマナーといえます。
まとめ
喪主の挨拶といっても、それぞれのシーンによって挨拶の言葉やポイントは変わります。
いずれにしても、相手に対する感謝の気持ちが伝わるような挨拶を心がけることが一番です。