大切な人の自殺の知った時のあなたの心は、激しい動揺と後悔、怒り、悲しみと様々な感情が次々と襲ってきていることでしょう。
それでもどのような死を迎えたにしても、お葬式をする必要があります。
そしてあなた自身もその事実に向き合っていく必要があります。
でも今のあなたの心には様々な感情に支配され、何が正しいのか、どうすればよいのかわからない状態にあるはずです。
焦ることはありません。
少しずつでもいいですから、今、目の前に起こっていることだけに向き合っていきましょう。
今回はあなたが困った時に少しでも助けになれるように、お葬式の準備やお葬式当日の過ごし方、お葬式が終わった後にあなたの心の傷を少しだけでも忘れさせてくれるサポート機関などを紹介します。
自分以外の人が出来ることなら任せてしまえばいい
自殺という結末で人生を終えたからといって、お葬式まで秘密にして行う必要はありません。
確かにお葬式には「密葬(みっそう)」という方法があります。
でも密葬の本当の意味は、「規模の大きなお葬式を控えているために、火葬までは家族を含むごく親しい人だけの時間を過ごす」という意味があります。
ですから「誰にも知らせずにお葬式をすること」を密葬というのではありません。
どのような方法で死を迎えるにしても、大切な人との別れには変わりはありません。
家族や親族だけでなく、親しくしていた友人や仕事上で付き合いがあった人にとっても悲しい出来事です。
ただ自殺の場合は病気療養中に亡くなる場合と違い、ある日突然その事実が目の前にやってきます。
心の準備をする間もないまま、別れの現実だけが目の前にやってきます。
でもこれまで生きてきた中でたくさんの人と出会い、そしてたくさんの思い出を作って生きてきた人です。
そのうちの一人が、あなたであるはずです。
だから大切な人の姿がこの世に存在する限られた時間の中で、きちんとお別れをするようにしてみてください。
死因を伝える必要はない
訃報連絡を入れる際には、やはり死因を伝えなければいけなくなります。
でもあなたの口から本当の死因を伝える行為そのものも、あなたの心の傷が広がる原因になります。
その場合は「不慮の事故」という言葉を使ってください。
こうすることによって、あなた自身の心がほんの少しだけ普通でいられるようになります。
お葬式の際に返礼品とともに弔問客に渡すお礼状も、「不慮の事故のため」という文言を使ってください。
一般的には「病気療養中のところ」という表現を使いますが、それ以外の場合は「不慮の事故」という表現を使っても問題はありません。
心が少し落ち着いてから対面してもかまわない
大切な人の体に傷や死を連想させるような跡が残されている場合、そのことを直接目にすることはあなたの心を深く傷つけます。
その場合は、葬儀社の湯灌(ゆかん)サービスを利用してください。
湯灌士は、亡くなった人の体を洗うだけではありません。
亡くなった人の体の傷を隠す技術を持っています。
さらに「復顏(ふくがん)」といって、顔の表情をもとの穏やかな表情に戻す技術も持っています。
ですから湯灌サービスを使えば、あなたが大切な人の死を連想するような傷や表情はなくなり、少しでも心を落ち着かせて対面をすることが出来るようになります。
大切な人との対面だからこそ、時間を焦って対面する必要はありません。
少し時間が空いたとしても、あなたが知っているいつもの顔を見てあげることが出来ればそれでよいのです。
限られた時間をどう過ごしたいのかだけ考えればいい
どのような死を迎えた場合であっても、亡くなってからお葬式をするまでの時間は限られています。
この時間だけは、残された人にとって平等に与えられたものです。
この時間を「どう過ごしたいのか」ということだけを考えるのが、残された人が本当にしなければいけないことです。
弔問客の対応やお葬式の打ち合わせなど他人に任せることが出来るものがあれば、思い切って任せてしまってください。
あなたは「残された時間を大切な人とどう過ごすのか」ということだけを考えればよいのです。
そばにいて顔を見ているのが辛いのであれば、そのことを周りに伝えてその場を離れてもいいのです。
やってあげたいことがあるのなら、「お葬式だからダメかな?」なんて思わずどんどんやってあげればいいのです。
そのことが許されるのも、大切な人の身近にいたあなただからこそしてあげられることなのです。
あなたがどのような行動をとったとしても、大切な人はそのことを責めたりしません。
また周りの人もあなたの行動がおかしいと思うこともありません。
何も心配せず、あなたは限られた時間をあなたがしたいように過ごせばよいのです。
遺族代表挨拶は何も遺族がしなければいけないというわけではない
お葬式をする以上、一般会葬者に対して遺族を代用して謝辞(あいさつ)をする必要があります。
でも必ずしも遺族が謝辞を述べなければいけないということではありません。
場合によっては、お葬式の司会者に挨拶文を代読してもらうこともできます。
また挨拶の原稿は、葬儀社に相談すればすぐに準備してくれます。
もしも人前に立って挨拶をする心の余裕もないのであれば、このような方法もあるということを覚えておいてください。
お葬式はきちんとした方がいい
どのような死の迎え方をしたにしても、きちんとお葬式をした方が残された人の心の傷を少しでも癒してくれます。
たしかに突然の別れを前にして茫然自失の状態であることは十分に理解できます。
でもお葬式をするということは、「あなたの苦しみを周りの人が少しずつ引き受けてくれる」ということでもあります。
とくに自殺の場合、死の予兆があるわけでもなく突然その時がやってきます。
そのため家族だけでなく、本人とつながりのある人にとっても大きなショックとなります。
でも別れに立ち会うことによって一人ひとりがその現実を認め、どのようにすれば前に一歩踏み出すことが出来るのかということを考えるきっかけになります。
ところが亡くなったことを誰にも知らせずにお葬式を済ませてしまうと、後から人づてに訃報を知った人が弔問に訪れてきます。
お葬式と違い時間が限られているというわけではないですから、伝えたくない事実もそれまでの様子などもすべて話さなければならなくなります。
しかもようやくほんの少しだけ普通の生活が出来るようになった頃にこうしたことに直面すると、またあなたの心の傷は疼き出します。
お葬式は、残された人が人前で悲しむことを社会的に許された場所です。
でもお葬式が終われば、少しずつでも日常生活に戻っていかなければいけません。
悲しみや様々な感情に押しつぶされそうになった時に、あなたの状況を理解してくれる人がいるということはとても大切なことです。
だからこそお葬式はどのような事情があるにしても、きちんとやった方が良いのです。
苦しくてどうしようもない時には周りにサポートしてもらうこと
自殺で大切な人を失くしてしまった人の多くが、「早く前を向いて立ち直らなきゃ」と思っています。
でも人の死の悲しみは、心が感じるものです。
いくらあなたが頑張ろうとしても、頭の中で思う事と心が感じることは必ずしも一緒ではありません。
「時間が経てば乗り越えられる」という人もいますが、人の死の悲しみは忘れることなどできません。
悲しい思い出の上に新しい思い出がバームクーヘンのように積み重なっていくだけで、断面を切り取ってみれば必ず底辺に残っています。
でも新しい思い出を積み重ねるためには、あなたの心の上に重くのしかかっている様々な感情をどこかに一度置いてくる必要があります。
そんな時に役に立つ機関があります。
NPO法人 グリーフケア・サポートプラザ
自殺で大切な人を失くしてしまった人々の心のケアを目的に活動しています。
同じような体験をした遺族が集まり互いの想いを語り合う会をも要していた李、電話での「辞し遺族慶長電話」というサポートなどを行っています。
特定非営利活動法人 全国自死遺族総合支援センター
ボランティアだけでなく行政やグリーフケアの専門家など様々な立場や分野を超えて活動をしているサポート団体です。
2008年に設立した団体ですが、2011年からは自殺に限らず大切な人を失くしてしまった人のためのサポート活動も行っています。
そのほかにおすすめの方法
大切な人の死を体験してしまった人の心には、大きなストレスがかかっています。
ストレスは精神的な症状だけでなく、身体的な症状を引き起こすことがあります。
特に身体に現れる不快な症状の場合は、内科を受診しても「問題がない」といわれます。
このような場合は、心療内科を受診してください。
症状によっては薬で身体的な症状を緩和させることもできます。
またカウンセリングを受けることによって、あなたが抱えている心の辛さを外に吐き出すことも症状緩和に効果があることもあります。
まとめ
大切な人を自殺で失くしてしまった時には、とにかく「今」だけを考えるようにしてください。
いろいろな感情があなたを襲ってくるでしょうが、気持ちの整理をつけることがそんなに簡単に出来るはずはありません。
でも「今」という時間だけを考えていけば、少しずつでも時間は過ぎていきます。
繰り返すことによって、ほんの少しずつ今以上のことを考えることが出来るようになります。
とにかく周りにサポートしてもらって今を過ごしていきましょう。
それが今のあなたにとって一番大切なことです。