お葬式の費用の工面を切り口にした消費者金融のDMなどが、最近増えています。
その内容を見てみると「もしかしたら将来自分にも当てはまるかもしれない」と思う内容もあります。
ですからあなたがそれを見れば、「実際に急にお葬式となった時にお金がなかったら、やっぱり借金してでもお葬式はしないとダメなんだろうな…」と思ってしまうかもしれません。
でも本当にお葬式は借金をしてまでしなければいけないものなのでしょうか?
消費者金融などを利用してまでお金を借りなければ、お葬式をすることは出来ないのでしょうか?
お葬式は借金をしてでもあげるべき!?
お葬式はいつそのタイミングがやってくるかはわかりません。
もしかしたら何の前触れもなく突然亡くなってしまうこともあるかもしれません。
でも多くの場合、「何らかの病気が見つかり治療の結果、医療施設で亡くなる」が一般的です。
つまりお葬式の費用を工面する前に、高額な医療費がかかっているはずです。
医療費に関しては、大切な人の生死がかかっています。
ですから収入よりもはるかに高額な医療費であったとしても、「病気が治るのであれば…」という一路の望みをかけて借金に踏み切るという人もいるはずです。
でも治療期間が長引けば、その分治療費もかさんできます。
そしてじわりじわりと負担が重くなり、ついに自分の生活を維持することすらギリギリの状態に追い込まれてしまいます。
このような状態では、さすがに「お葬式の費用までは払えない」となるのはわかります。
そして「お葬式の費用を工面するためにまた借金をするしかない」と思い込んでしまう気持ちもよく分かります。
でもちょっと待ってください。
そもそもお葬式の費用のために借金をする必要などありません。
なぜなら日本の法律では生活保護法というものがあり、その中で「生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障する(「生活保護法」第一条より一部抜粋)」ことを法律で定めているのです。
生活保護法による「必要な保護」には、お葬式に関する費用の扶助もあります。
もちろん法律の中で「最低限度」という内容がありますから、生活保護で扶助してもらえるのはあくまでも「遺体の処理・火葬及び埋葬」にかかる費用です。
確かに一般的にイメージしているお葬式の内容とはずいぶん離れていますが、これでもれっきとしたお葬式です。
つまりお葬式の費用も払えない位生活に困窮しているのであれば、生活保護の申請をすることによってきちんとお葬式の費用も国が扶助してもらえるように法律で定められているのです。
ですから借金をしてまでお葬式をする必要など、どこにもないのです。
医療費も控除制度があることをあらかじめ知っておこう
生活保護を受けなかったとしても、医療費が高額になればその分負担は大きくなります。
でもその前に知っておいてほしいのが、医療費にも控除制度があるということです。
まず病気が見つかり、長期にわたって通院が必要といわれた場合です。
この場合はすぐに加入している健康保険の窓口で「限度額適用認定証」の申請をしましょう。
限度額適用認定証というのは1つの医療機関で支払う金額があらかじめ認定された限度額を超えた場合、限度額以上の医療費を控除してもらうことが出来る制度です。
これは窓口での支払いを済ませる前に行うことによって、保険加入者の負担を軽くするという方法です。
もちろん入院が必要となった場合も同じです。
「限度額適用認定証」を申請しておけば毎月の医療費が限度額の範囲内でおさまりますので、「突然医療費がかさんでお金に困ってしまう」ということがなくなります。
支払ってしまった高額な医療費も申請すれば払い戻ししてもらうことが出来る
限度額適用認定証を使わず高額な医療費を支払ってしまったという場合は、「高額医療費制度」を利用すれば自己負担限度額を超えた医療費を払い戻ししてもらうことが出来ます。
この場合は医療費を支払ったことを証明する書類などをもとに審査が行われ、認められると払い戻ししてもらえます。
ただし高額医療費制度の場合は、申請してから払い戻しを受けるまでに1~3か月程度かかります。
その間は被保険者及びその家族の負担となります。
すでに払い終わってしまった医療費に関しては速やかに高額医療費の請求手続きをすればよいのですが、これからも治療が続く時には高額医療費の請求と同時に限度額適用認定証の申請もするようにしましょう。
こうしておけばこれまでかかった医療費も自己負担限度額以上であれば払い戻してもらえますし、今後治療や入院が長引いたとしても治療費のことで金銭的な不安を抱えることもなくなります。
お葬式では支出だけでなく収入もある
お葬式の支払いは、確かに家族にあります。
でもお葬式をする時には、お葬式に参加してくれる人からの香典もあります。
これは「一般的な収入」とは扱いが異なります。
そのためお葬式の一部を香典によって賄うことも出来るようになっています。
もちろんお葬式の規模が小さくなれば、お葬式に呼ぶ人の人数も限られますから香典による収入も限られてきます。
そのため家族が負担しなければいけない費用はかなり大きくなります。
でも親族であれば、生活に困っていることが分かれば出来るだけお葬式の費用が家族の負担にならないように配慮してくれます。
またどうしてもお葬式の費用が足りない場合も、消費者金融などからお金を借りるよりは安全で安心してお金を借りることができます。
本当に困った場合には「直葬」というお葬式の方法もある
いろいろなことをやってみてもどうしても自分たちの負担が大きいと感じた場合には、最近主流の「家族葬」ではなく「直葬」と呼ばれるお葬式のスタイルを選ぶことも一つの方法です。
直葬というのは、「火葬に必要なものだけをセットにしたお葬式のプラン」のことを言います。
そのため葬儀社によっては、「火葬式」「出棺式」などの表現を使うこともあります。
一般的なお葬式のイメージとは違い、亡くなった後火葬をするだけのお葬式になるのでかなり簡素化されたお葬式になります。
また直葬には「宗教者を呼ぶケース」と「宗教者を呼ばないケース」、さらに「立ち合いがあるケース」と「立ち合いなしのケース」の4つがあります。
最も値段が安いのは、「宗教者を呼ばず、基本的には立ち合いもしない直葬」となります。
これは葬儀社が遺体の安置・火葬・収骨・納骨までを代行するお葬式です。
宗教者を呼びませんから、戒名料やお布施もいりません。
安置や火葬などはすべて葬儀社が代行しますが、参列者の対応やお葬式の司会進行などが一切要りませんのでその分費用を抑えられます。
(※ただし納骨まで依頼する場合は、別途料金がかかるケースもあります)
直葬の中でも比較的料金が高くなるのが、「宗教者を依頼する直葬」です。
直葬ですので宗教者の儀式も火葬場の炉前で簡単に行うだけですが、宗教者への支払いが必要になります。仏教式の場合はお布施と戒名料が必要になります。
お坊さんの費用を抑えたいのであれば僧侶派遣サービスを利用する方法もある
「菩提寺はないけれどせめて最後にお坊さんの供養をお願いしたい」という場合は、僧侶派遣サービスを利用するという方法もあります。
僧侶派遣サービスでは、様々な宗派のお坊さんが登録しています。
さらにあらかじめ料金が決められていますので、依頼をする前に金額を確認できるというメリットがあります。
ただし「菩提寺がある」「お寺にお墓がある」場合はほとんど利用できません。
そもそもお寺で葬式をするのであれば、そのお寺に依頼をしなければ寺でお葬式をすることは出来ません。
また宗派が違うお坊さんに戒名を授けてもらった場合は、お墓への納骨を拒否されることもあります。
菩提寺がある場合は、まずは菩提寺に相談することが前提になります。
菩提寺からの許可が下りれば、僧侶派遣サービスを利用しても葬儀後にトラブルになることはありません。
まとめ
お葬式の費用は確かに大きな負担です。
でも借金をしてまでお葬式をする必要はどこにもありません。
生きている限り必ずこの世を去る運命にあるのが人ですから、お葬式も避けて通るわけにはいきません。
だからこそ本当に困っている場合には、様々な制度を利用すれば借金をしなくてもお葬式が出来るようになっています。
まずはお葬式の費用の前に利用できる制度がないか、確認してみましょう。
もしも医療費の控除や返金が受けられるのであれば、そこから手続きを始めてみましょう。
少しずつ整理していけば、必ず何か道は見えてくるはずです。