あなたが思う葬儀屋で働いているスタッフのイメージはどうですか?
「真っ黒い服を着て一日中表情がない人」
「何を考えているかわからない人」
「お金の計算が早い人」
「特殊な技術を持っている人」
多分どれもあなたが思い描く葬儀スタッフのイメージの1つに違いないと思います。
でも葬儀の現場にいるスタッフには、お客に言えないことだってたくさんあります。
お客どころか、友人や家族にだって打ち明けられないこともあります。
それでもそういうことを胸の中にしまい込んで、お葬式の現場では与えられた仕事に向き合います。
ただだからと言って本音がないわけではありません。
葬儀スタッフ同士で飲み会をすると、日頃ため込んでいる本音が爆発します。
私も若い頃はこういう場で気持ちを吐き出すことで自分の気持ちを冷静に保っていた時期があります。
そこで今回は「お客に言いたくても言えない葬儀スタッフの本音」をあなたにほんの一部分だけ教えます。
何を考えているかわからない葬儀スタッフが本当は何を考えているのかが分かれば、ほんの少しだけあなたのお葬式に対するイメージも変わってくるかもしれません。
葬儀スタッフだって「イヤな現場」「見たくない現場」がある
葬儀スタッフが嫌がる現場
葬儀スタッフが嫌がる現場の1つに「神経質すぎる家族」があります。
お葬式の現場は独特の雰囲気があります。そこには人の死がありますし、死に向き合う人の姿もあります。
しかもそこでぶつかり合う感情には言葉でうまく表現できないものの方が多いです。
「悲しい」という言葉一つでもニュアンスが違います。
また「怒り」という感情もおこります。
かと思えば亡くなった人との思い出を振り返る中で「楽しい」と思う感情もおこります。
でもどの感情も常にずっと続くものではなく、しかも同時に別の感情が起こることもあります。
だからこそその場に立ち会うスタッフは神経を使います。
まず葬儀スタッフは「つかず離れずの距離」を保ちながら現場に立っていますし、担当者はそれぞれの現場スタッフの様子もチェックしながら現場全体を指揮します。
ですからよほどのことがない限りお客の希望を即座に対応できるようになっています。
でもこれはあくまでも一般的な場合です。
中には神経質すぎて何から何までチェックしなければ済まないという家族もいます。
これは現場スタッフにとってはかなり嫌がられます。
一番嫌気がさすのが、何か作業をする前に必ず「その作業にはどんな意味があるんですか?」と確認されることです。
一事が万事このような状態で質問攻めにあうと、さすがにベテランの葬儀スタッフでも現場から逃げたくなります。
なにしろこういうお客の場合、何か不備を見つけるとすぐにクレームを出してきます。
しかもそのクレームが思いもよらないところから生まれることも多いので、手出しをすることが出来なくなるのです。
ただしそんな理由で現場スタッフが逃げてしまうと、今度は「スタッフが少ない」「対応が悪い」という新たなクレームの原因になります。
だからこういうお客がいる現場は「出来るだけ避けたい」と思うのが現場スタッフの本音です。
現場スタッフが「見たくない現場」
お葬式は「誰かの死」が関係していますから、その現場には必ず亡くなった人の遺体があります。
亡くなった人はみんながみんな、キレイな顔をしているとは限りません。
事故や事件・自殺など特別な理由で亡くなった人は、やはり体や顔に損傷があるのでその他の理由で亡くなった人と比べると見るのを避けたくなることもあります。
でも病気で闘病生活の末に亡くなった人も、場合によっては同じことが言えます。
つまりどんな理由で亡くなったとしても、最期の顔がキレイな状態である保証はないのです。
痩せこけて目と口を大きく開いたまま、どのようにしても閉じさせることが出来ない遺体もあります。
また長期間呼吸器を使用していたことによって顎と歯が変形し、亡くなった後も呼吸器をつけていた状態のまま固まってしまっている人もいます。
またがんの場合、腫瘍が皮膚を拭き破り表面に出てきてしまうこともあります。
それが服などで隠すことが出来るのであれば幾分良いのですが、顔面に腫瘍が出来てしまうこともあります。
皮膚の表面に出てきた腫瘍は悪臭がするので、腫瘍部分を隠したとしても臭いを消すことが出来ません。
このような遺体を見てなんとも思わない葬儀スタッフはいません。
遺体を前にしても動揺している様子を見せないようにしますが、本音は「今すぐ目をそらしてしまいたい」です。
あまりにもひどい状態や恐ろしい表情をしている故人を見ると、その光景が頭の中に記憶として残ります。
だから出来るだけその場面を見ないようにしたいのです。
でもその様子をお客さんが見ていることも分かっています。
お客さんにとっては故人の最期がどのような表情や状態であったとしても、大切な人であることには変わりありません。
ですから故人をわざと見ないようにしている葬儀スタッフがいるのを家族が知れば、不快に思うのは当然です。
そのことをよくわかっているからこそ、どんな場面であっても目をそらせずにいるのが葬儀スタッフなのです。
「おい、葬儀屋!」と呼ばれるのが一番イライラする
葬儀スタッフの呼び方にもいろいろなものがありますが、葬儀スタッフが一番イラっとするのが「おい、葬儀屋!」という呼び方です。
確かに葬儀スタッフは「葬儀屋」のスタッフです。
わざわざ自分の名前を主張する必要もありませんし、担当者以外は自分からお客さんに名乗る必要もありません。
ですからお客さんから呼ばれるときにも名前で呼ばれることはないのが一般的です。
でも普通は「葬儀屋さん」とか「○○(葬儀者名)さん」という呼び方をしますよね?
これなら葬儀スタッフとしても違和感はないのです。
ただ「葬儀屋」と呼ばれるのはちょっとムッとします。
同じ意味ではあるのですが「葬儀屋さん」と呼ばれるのと「葬儀屋」と呼ばれるのは大きな違いを感じます。
まして「おい、葬儀屋!」と呼ばれるのは心外です。
呼ばれれば笑顔で返事をしますが、その裏で「こいつ、一体何者のつもりだよ!」と毒を吐いています。
葬儀スタッフも葬儀の現場でもらい泣きすることはある
葬儀の現場に立ち会うスタッフも、思わずもらい泣きしてしまうことはあります。
お葬式といっても、遺体がまだそばにあり顔を見ることが出来るうちはどこかで家族も「きちんと家族として見送らなければ!」という気持ちがあります。
だから強い悲しみが襲ってきたとしても、それを何とかこらえようと頑張っているのが側にいてもわかります。
でも火葬場に到着し、炉の中に棺が入っていく瞬間はその感情を抑えることが出来なくなります。
「いやぁ!行かないで!」と泣き崩れてしまう人もいますし、炉の扉を火葬場のスタッフが閉めるのを「やめて!閉めないで!」とつかみかかって止めようとする人もいます。
でもそれはいくら葬儀スタッフでもどうにもしてあげることが出来ません。
今にも倒れてしまいそうな家族の背中を支えてあげることしかできませんし、声をかけることもできません。
しかも火葬場には家族以外にも親族やほかの利用者の姿もあります。
だから無情な仕打ちだとは思いながらも、火入れをしなければいけないのです。
葬儀スタッフの中には火葬場の対応を専門に担当するスタッフもいますが、このような専門スタッフはそこに至るまでの家族の様子は知りません。
だからドライに対応できます。
でも引き取りから葬儀までを立ち合い、その上で火葬場の火入れに立ち会うとなるとそこに至るまでの家族の想いがすべて伝わってくるのでとてもドライにはなり切れません。
だから「自分がちゃんとしていなければいけない」ということはわかっていても、思わずもらい泣きしてしまうことがあるのです。
まとめ
葬儀スタッフの本音は、この業界で働く人以外で語られることはほとんどありません。
もちろん葬儀スタッフの本音はほかにもたくさんあります。
でもそこまではさすがに紹介できません。
でも葬儀の現場で無表情に見えるスタッフも、実はいろいろなことを考えながら現場に立ち会っているのだということが分かってもらえればそれで十分。
葬儀スタッフは「世間からどのように思われてもこの仕事をしていれば仕方のないことだ」と割り切って現場に立っています。
だからお客さんの中に一人でも本音を知っている人がいると思うことが出来るだけでも、今、目の前にあるお葬式に真摯に向き合おうと思うことが出来るのです。