ひとりっ子の親であれば、「自分が亡くなった後一人ぼっちになってしまう子供のためにできるだけ多くの財産を残してあげたい」と考えたことが一度はあるはずです。
でもその気持ちを実現するためには、元気な今のうちにきちんと相続対策をしておかないといけません。
今回は、ひとりっ子の親だからこそ知っておきたい相続対策について分かりやすく説明していきます。
遺産には相続税が!生前に対策をしなければ負担が増える
遺産を相続する場合、法定相続人の人数によって基礎控除額(非課税分)が大きくなります。
つまり一人っ子の場合は法定相続人の人数が少ない分、基礎控除額が小さくなるということです。
財産を残せば残すほど税金が割高になってお金が残らない
ひとりっ子の親であれば「自分にもしものことがあったときのためにお金をきちんと残しておきたい」という親心があるのはよくわかります。
でもせっかく残した財産にも「相続税」がかかってきます。
相続税には基礎控除額が決まっています。
基礎控除とは相続人一人に対して一定金額の相続税が控除されるという仕組みです。
主な相続人は配偶者と子供になりますので、子供の数が多いほど基礎控除額が増えるということになります。
言い換えれば一人っ子の場合は基礎控除額が小さいということなのです。
相続税は遺産に対してかかってきますので、何も対策をしていなければ「財産を残すほど税金が高くなる」ということになります。
一人っ子の場合は、相続財産が少なくても高額な相続税を支払うことになるかも…
遺産となるのは預貯金だけではありません。
自宅が持ち家の場合は、家も不動産としてみなされるため相続税の対象になります。
そのため実家を相続するだけなのに相続税が高額になってしまうということも…。
不動産の価値によっても異なりますが、場合によっては相続税が高すぎて実家を手放さなければならなくなることもあります。
これは「持ち家の場合も相続させるなら何らかの対策をとっておいた方が得」ということが良くわかる例ですね。
生前贈与で相続対策を!
ひとりっ子に対する相続税対策で有効なのが「生前贈与」です。
もちろん贈与をするにしても「贈与税」がかかります。
ただし「暦年贈与」を利用すれば年間110万円以下の場合贈与税がかからないのです。
暦年贈与のポイントは「毎年110万円ずつ贈与する」ということです。
贈与税は1月1日~12月31日で贈与された金額に対して税金がかかってきます。
だからこそ「年間110万円ずつ贈与」がポイントなのです。
もちろん贈与税が控除される金額が限定されているので「一度に財産を相続させたい」という場合には向きませんが、財産を確実に子供に残すことが出来ますし相続税対策にもなります。
孫の教育資金として財産を贈与することもできる
ひとりっ子であっても孫がいる場合、孫に対する教育資金として財産を贈与することが出来ます。
これは30歳未満の子供や孫の教育資金として贈与した場合が対象になります。
しかも1人当たり1500万円までであれば非課税となります。
ただしここでも注意点があります。1500万円までの非課税枠の対象となるのは「学校に払うお金」ということが前提にあります。
同じ教育資金でも「留学費用」に関しては「学校に払うお金」とはみなされません。
もちろん非課税枠はありますが、この場合は500万円までが上限となります。
家の購入資金を援助するなら消費税増税前までに購入を!
子供の家の購入資金を援助する場合も贈与税の非課税枠があります。
ただこの非課税枠は消費税の増減によって限度額が変わってきます。
最も非課税枠が大きいのが「消費税増税の前後」です。
なんと最大3000万円までが非課税になります。
ただし注意しなければならないのは、最大3000万円の非課税枠があるのは2019年4月~2020年3月までの1年間のみ。
2020年4月からは非課税枠が50%カットの1500万円までさがります。
ひとりっ子の親だからこそやっておきたい相続トラブル対策
ひとりっ子ということは、法定相続人の数が少ないということです。
片方の親が亡くなった場合は、法定相続人は2人(喪主を務める親と子供)となります。
ところが残った親も他界した場合は、法定相続人が1人になってしまいます。
こうなると「二次相続」についても考えておかないと、相続税のために子供が苦労をすることになります。
二世帯住宅にすることで相続税の負担を軽くできる
親と二世帯住宅に住んでいれば、「小規模宅地の特例」が活用できます。
しかも登記をする際に「共有登記(敷地内のすべての不動産を親子で1/2ずつ所有する)」であれば、敷地内のすべての不動産が相続税減額の対象になります。
親子で二世帯住宅に住むのであれば、登記をする際も共有登記にしておくことが相続税対策としては効果があります。
孫を養子にすることで法定相続人の人数を増やすこともできる
相続税の基礎控除額を大きくして相続税対策をするという方法もあります。
これは「孫を養子にする」という方法なのですが、子供になれば法定相続人となりますから基礎控除額の計算をする際にも有利になります。
仏壇やお墓は生きているうちに購入するのがポイント
亡くなった後に必要になるもので高額なものといえば「お墓」と「仏壇」があります。
相続税は財産に対してかかるものですが、お墓や仏壇などは「祭祀財産」といい相続税の対象外となります。
お墓の購入費は平均200万円
お墓の購入費といっても現在の法律では「墓地を購入する」ということはできません。
つまりお墓を立てるためには墓地の使用権を買い取り、その土地に墓石を立てるということになります。
ですから購入するためには「土地の永代使用料」「墓石料」がかかります。
また管理型墓園の場合はお墓の購入費とは別に「管理費」がかかります。
これらの費用を合計した金額がお墓を購入費となるため、平均相場は200万円と高額なのです。
仏壇は仏具もセットで購入するから高額になる
日々の供養のために必要になる仏壇の金額はピンキリです。
1万円から購入できるものもあれば数百万円にもなる場合もあります。
ただどのような仏壇を購入するにしても「仏具」を別に購入しなければいけません。
これらの物をすべてそろえるとなるとかなりの金額になります。
そのため仏壇・仏具をそろえるためにローンを組むこともよくあります。
ただ仏壇や仏具も相続税の対象外になります。そのため子供の負担を減らしたいのであれば、生前に自分で準備をしておく方が賢い方法といえます。
生前に準備するにしても注意点がある
お墓や仏壇を生前に準備することは相続税対策に効果があります。
ただし注意しなければいけないこともあります。
★生前に全ての支払いが終わっていること
現金で一括で購入するのであればよいのですが、金額が高額なだけにローンで購入することの方が多いのがお墓と仏壇です。
ただしローンが残った状態で亡くなってしまうと、残っているローンは「債務」となります。
そのため相続税の対象になります。
つまり生前に準備して得をしたいのであれば「現金一括で購入する」または「生きているうちにローンを完済する」のどちらかでなければいけません。
★あまりにも高額な仏壇は課税対象になることも…
仏壇や仏具は非課税ですが、あまりにも高額な仏壇は「資産目的」とみなされる場合があります。
投資や骨とう品としての性質が高いと判断された場合は、仏壇であっても相続税の対象になります。
まとめ
頼る相手がいなくなってしまうひとりっ子だからこそ、出来るだけ財産を残してあげたいという親心はよくわかります。
でも一生懸命築いてきた財産だからこそ、確実に子供に受け継がせなければ何の意味もありません。
そのためにも元気なうちから計画的に財産を残すようにしていくことが、ひとりっ子の親として子供のためにしてあげられる相続対策になるのです。