終活という言葉が一般的に認知されるようになってから、「自分の葬式費用について考えるようになった」という人が増えています。
とはいっても葬儀にかかる費用には様々なものがあるので、実際にどれくらいのお金を残せば家族の負担にならないかということも心配なはずです。
では葬儀代を生命保険で支払うことは、実際に可能なのでしょうか?
もしも葬儀費用を目的に生命保険を見直すのなら、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか?
葬儀費用がまかなえる生命保険に入っていてもお金は必要
生命保険には様々なタイプのものがあります。
病気の保証に手厚い保険もあれば、葬儀費用など亡くなった後の保証に特化したものもあります。
中でも最近注目されているのは、「葬儀代金が支払われる保険」です。
でもお葬式の費用で一番の問題は、「お葬式の費用はその場で払わなければならないものもある」ということです。
現金で支払わなければいけない費用も葬儀費用にはある
お葬式の費用というとどうしても「葬儀社に支払うお金」と思い込みがちですが、これは正しい認識ではありません。
あくまでも葬儀社に支払う費用は「葬儀費用の一部」でしかありません。
まずお葬式には、必ず「火葬」がセットになります。
火葬をするには「火葬場」を利用します。
ですから「火葬をする」ということは、「火葬場の使用する」ということになります。
ただ火葬にかかる費用のことを一般的には「火葬料」といいますので、「使用料」といわれるとピンと来ないかもしれません。
でも火葬するためには専用の火葬場でなければいけませんから、正しくは「火葬場の使用料」となるわけです。
ちなみに火葬をするためには、「火葬場の使用料」を支払わなければいけません。
支払窓口は、火葬場の運営体制によって違いますが、大きく分けると「公営火葬場」と「民営火葬場」になります。
火葬場の使用料金は、公営火葬場の方が民営火葬場よりも安く設定されています。
ただ運営そのものが自治体に任されているので、同じ公営火葬場であっても地域によって使用料は異なります。
では「民営火葬場はどうなのか?」となりますよね?
民営火葬場の場合は運営そのものが民間会社ですから、価格の設定も運営する民間会社が決めます。
相場を見てみると、やはり公営火葬場よりも高い傾向にあるのが民営火葬場です。
「価格が高いのなら民営火葬場を使わなければいい」と思うかもしれません。
たしかにその考え方は間違ってはいません。
ただし公営火葬場がない地域では必ずしもそうは言い切れません。
そもそも火葬場は「遺体を焼却する施設」ですから、新たに公営火葬場を建設するとなっても、建設予定地周辺住民からの反対は避けられません。
激しい反対運動に合えば、たとえ建設案が浮上したとしても実現までに長い時間を要することは必至です。
このような場合は、やはり値段が高かったとしても民営火葬場を利用するしかありません。
さらに火葬場は予約制になっています。利用希望者が集中すれば、必然的に予約が取りづらくなります。
公営・民営火葬場が同じ管轄エリアにあった場合は、必然的に使用料が安い公営火葬場の方に予約は殺到します。
このように火葬場が込み合っているときは、予約をとるまでに1週間以上かかることもあります。
そうなれば「時間を優先する・価格を優先する」の二者択一となった場合には、値段が高い民営火葬場を利用するという選択も出てきます。
そして一番の問題は、火葬場の使用料は原則「現金で前払い」ということです。
いくら葬儀代金の保証をしてくれる生命保険に加入していたとしても、亡くなってから数日以内に支払いに応じてくれることはありません。
つまりお葬式の費用の中には、火葬場の使用料のように現金ですぐに支払わなければならないお金もあるということです。
お坊さんへのお布施も現金・当日払いが基本
日本のお葬式では多くの人が仏教式でのお葬式を行います。
仏教式でのお葬式は、お坊さんを呼ぶことになります。
お坊さんにお葬式を依頼するという場合は、お葬式会場で読経供養をすることに対する「お布施」とは別に、位牌に書く名前(一般的には「戒名」といいます)に対する費用「戒名料」がかかります。
このお布施と戒名料も、原則として現金で当日払いとなります。
お布施と戒名料は、あくまでも宗教儀式に対する費用ですから、相場というものがありません。
もちろんお布施の金額は建前上は「お気持ちの範囲で」なのですが、実際にはあらかじめ寺によってきめられています。
また戒名料については、授けてもらう名前の位によって料金が変わるのが一般的です。
戒名料の設定もお寺次第ですから、これも相場というものがありません。
少なくともはっきりとわかることといえば、授けていただく名前の位が高くなるほど戒名料は上がります。
ちなみに戒名料だけでも、授けていただく名前の位によっては100万円以上するものもあります。
でもこれだけ高額であったとしても、お布施と戒名料は原則として現金・当日払いとなります。
保険の支払いを受けるまでには葬儀社への支払いも済ませなければいけない
葬儀社への支払いはお葬式当日に行うわけではありません。
でもあらかじめ支払い期限については葬儀社から話があります。
一般的には葬儀終了から数日以内または初七日法要の翌日を支払期限としています。
これはお葬式に関する変動費用などの清算が関係するためであり、いつまでも支払いを待ってくれるということではありません。
あくまでも期限内に支払いを済ませることが前提となっているだけです。
でも加入していた生命保険の保険金を支払ってもらうためには、支払い請求手続きをした後になります。
あわただしいお葬式の合間に生命保険の請求手続きをするということはあり得ません。
ですからお葬式が終わってから数日以内に支払期限を迎える葬儀社への支払いまでに、生命保険の保険料が家族に支払われるということもあり得ません。
そう考えれば、あなたがいくら生命保険の保険金でお葬式の費用を賄ってもらおうと考えていたとしても、誰かが一度はお葬式にかかる費用を立て替える必要があるということになります。
生命保険が失効になっていないことが前提
家族に内緒で葬儀代金がもらえる生命保険に加入していた場合、一番問題になるのが「保険の補償の失効」です。
保険料は基本的に本人の口座から自動引き落としとなるのですが、病気などを理由に医療施設などに入居するとお金の管理を本人がすることは難しくなります。
しかも家族に内緒で保険に加入しているとなれば、家族が本人の銀行口座から毎月保険料が引き落とされていることも知りません。
このような時に一番問題になるのが、「残高不足による保険料の未払い」となります。
葬儀代が出る生命保険にも、保険料を滞納した場合の「失効の猶予期間」はあります。
でもこの猶予期間は、2回目の滞納があった月の末日までです。
つまり翌月の1日には加入していた保険は失効してしまいます。
保険の見直しをする場合は必ず家族を同席させること
せっかく家族の負担にならないように葬儀代として保険料を積み立ててきても、何らかの理由で生命保険の補償資格を失効してしまっては何の意味もありません。
もちろん元気なうちは問題ありませんが、いつ状況が変わるかはわかりません。
自分のお葬式の負担を家族にかけないために保険料を見直したいというのであれば、保険の契約の際に家族に同席してもらうようにすることです。
こうしておけば自分でお金の管理や判断が出来なくなったときでも、そのことが理由で保険料を滞納する心配もありません。
また速やかに家族が保険金の請求をすることで、その負担を少しでも減らすことが出来ます。
まとめ
自分のお葬式の費用を生命保険の保険金で準備しておこうと思うことは、決して間違ってはいません。
でも保険金の支払いを受けるまでには時間がかかることや、お葬式では式当日までに現金で準備しなければいけない費用があるということを忘れがちです。
また葬儀代金が出る生命保険の場合は、最後まで滞納をしないことが何よりも大事になります。
自分がお金の管理や様々な物事の判断がつかなくなった場合のことも考えておくことが、何よりも家族のためになりますよ。