お葬式が終わった後に手続きをしなければいけないことはたくさんあります。
役所の手続きなどは誰でもすぐに気が付きますが、盲点になっているのが相続税です。
相続税は、今や「お金持ちだけに関係する手続き」ではありません。
2015年に行われた大幅な改正のせいで、基礎控除額が大きく変わりました。
そのため相続税は「お金持ちの税金」ではなく「みんなの税金」に変わってしまったのです。
でも相続税には控除されるお金があります。
その一つが「お葬式の費用」です。
お葬式の費用は数百万単位とかなり高額ですので、葬儀費用次第で課税対象から外れることもあります。
ただしお葬式にかかった費用のすべてが控除の対象になるわけではありません。
何が控除の対象になって何が対象にならないのかが分かれば、お金を無駄にすることもなくしかも相続税対策にもなります。
そこで今回は「相続税対策に役立つ葬儀費用の予算の立て方」をわかりやすく解説!
大事な財産を守るためにもきちんとその仕組みを勉強していきましょう。
相続が「争続」になるのはお金持ちではなく一般家庭の方
「相続で揉め事が起きる」と話すと「うちは揉めるほど財産はないから大丈夫」という人が多いのですが、実際に相続をするとなった時に揉めるのはお金持ちではありません。
財産がある家では生前贈与など相続税対策をきちんとしている人が多いので、それほど問題になることはありません。
ところが相続税が大幅に改正されたことを知らない一般家庭では、相続に関する意識もそれほど高くありません。
ところがいざ相続となった時に思っている以上に親の財産があることが分かると、急に揉め事が起こります。
さらに問題なのは相続税の基礎控除額が変わったため、これまで「お金持ちだけの税金」だったはずの相続税があなたにも関係することになるかもしれないのです。
法改正後は法定相続人2人に対する基礎控除額は4200万円
相続税が「お金持ちの人の税金」といわれたのは基礎控除額が高く設定されていたからです。
基礎控除額はこれまで何度か改正されました。
特にバブル景気が崩壊して以降、相続税が問題で破産するケースが増えました。
そのため1980年代後半までは法定相続人が2人の場合の基礎控除額が2800万円だったのを7000万円まで引き上げました。
そのためよほど財産がある家庭でなければ相続税の対象にはならなくなったため「お金持ちの税金」というイメージが定着したのです。
ところが2015年に行われた法改正によって、相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられました。
これによって法定相続人が2人の場合の基礎控除額が4200万円になったのです。
そもそも相続の対象となる主な財産は「土地・建物」「現金(預貯金)」「生命保険」「有価証券」「お金に換えることが出来る物」の5つあります。
この中で最もウェイトを占めているのが「土地」です。
建物そのものは資産として計算するときそれほど高く評価されません。
ところが土地は評価額も高くなります。
ですから土地の評価額が高い都市部になるほど相続税が高くなります。
さらに東京オリンピックの開催を控え今後土地の評価が上がることが予想される地域で土地を持っている場合は、ほとんどの人が相続の対象になると考えていた方がよいのです。
相続税の申告・納税は亡くなってから10か月以内
相続税がみんなの税金になったことで問題なのが、相続税の申告・納税の期限です。
相続税の申告と納税の手続きには、様々な書類を準備する必要があります。
そのうちの一つである戸籍謄本も、亡くなった人の戸籍謄本だけでなく相続をする人全員のものが必要になります。
そのほかにも印鑑証明書や住民票などの書類を準備しなければいけませんし、申告書の記入も必要になります。
さらに相続税の申告・納税は「亡くなったことを知った日から10か月以内」となっています。
四十九日法要と納骨を済ませてやっとひと段落ついたころにはもう期限が迫っているのです。
お葬式の費用も相続税の控除の対象になる
相続税には法定相続人の人数によって基礎控除額が決められていますが、お葬式の費用も相続税の控除の対象になります。
お葬式の費用の全国平均が約200万円ですから、相続する財産からこれだけの金額を差し引いてもらうことが出来るとなればかなりの節税になります。
ところがこの仕組みを知らない人も多く、さらに控除の対象になるということを知らずにうっかり領収証を処分してしまうこともあります。
葬儀社に支払う葬儀費用で相続税の控除の対象になるもの
・遺体の搬送費用
遺体を搬送するためにかかった費用は控除の対象です。
これは葬儀社に支払うお金に含まれます。
・棺・骨壺
棺も骨壺も一般的なお葬式をする上で必ず必要になるものです。
ですからこれらの費用は控除の対象になります。
もちろんこれらの費用は葬儀社に支払うお金に含まれます。
・喪主が準備する供物・供花
供物と供花については「誰が支払うのか」によって変わります。
もしも喪主が支払うのであれば「お葬式にかかった費用」と考えられるので控除の対象になります。
ただし親族や友人・知人が供物・供花費用を支払う場合は対象になりません。
・交通費
明らかに葬儀費用として認められるのは、式場から火葬場までの移動に関する交通費です。
これは「お葬式をする上で必要な費用」として認められるので控除の対象になります。
遠方から葬儀に参列するための交通費に関しては、税務署の判断次第です。
過去に私が担当した家族の場合、外国に住む故人の娘が葬儀に参列するために支払った航空運賃が控除の対象として認められたケースがあります。
ところが別の家族の場合は、故人のきょうだいが利用した航空運賃とホテル代を控除として申告したところ認められませんでした。
ただ航空運賃などはかなりの高額になるので、とにかく領収証を取っておくということがポイントです。
金額が大きいので認められればかなりお得ですよね。
・祭壇
祭壇は葬儀を行う上で必要なものと認められます。
ですから祭壇にかかった費用についても控除の対象になります。
・告別式終了までにかかった食事代
お葬式の費用として認められる食事代は、「告別式終了までに支払ったもの」になります。
わかりやすい費用でいえば通夜ぶるまいの食事や飲み物がこれに当たります。
そのほかにも告別式までに支払った弁当やアルコール類、菓子なども認められます。
ただし火葬後に繰り上げ法要を行った場合、法要後の食事は対象外です。
あくまでも「お葬式の費用として支払ったお金」が控除の対象なので注意が必要です。
葬儀社以外に支払う葬儀費用で控除の対象になるもの
・お布施
お坊さんの読経供養に対するお布施は控除の対象になります。
ただしお布施は領収証の発行が出来ません。
そのため「支払った日付」「寺名」「金額」をメモとして残しておきましょう。
・戒名料
戒名料もお葬式の費用として認められます。
こちらも領収証がありませんので、支払った金額は必ずメモしておきましょう。
・お車料
お坊さんに「お車料」を渡したお金も控除になります。
お布施や戒名料と同じようにメモに残しておきましょう。
・心付け
心付けはお葬式の慣習として準備することがあります。
これもお葬式の費用として認められます。
心付けに関しても領収証がありませんので、必ず領収証の代わりとなるメモを残しておきましょう。
まとめ
お葬式の費用が相続税の対策になるということは、これからお葬式をする人なら必ず覚えておいた方が役立ちます。
もしも相続税の対象になった場合もお葬式の費用は高額ですので、申告することで課税の対象から外れる可能性もあります。
ただ香典返しについては要注意です。いただいた香典は収入にはなりませんので所得税の申告の必要がありませんが、香典返しはいただいた香典に対するお礼ですので相続税の控除対象になりません。
いずれにしてもお葬式の予算を計算する時には、「相続税の控除対象になる」「控除にならない」の違いをきちんと理解しておくことがポイントです。
またお葬式当日までに支払ったお金に対しては必ず領収証をもらうことも大事なポイントですよ。