最近主流になっている「家族葬」というお葬式のスタイル。
「家族」という言葉の温かさからなんとなく良いお葬式のイメージがありますが、実際にどんなことをするのかよくわからないという人も多いのでは?
もちろん家族葬には、小規模なお葬式を希望する人にとってはメリットがたくさんあります。
でも何がメリットで、どんなことが普通のお葬式と違うのかはよくわかりません。
しかも家族葬をする時に知っておかなければいけない注意点もあります。
そこで今回は「家族葬」にテーマを絞り、どんなことに注意すれば希望通りの家族葬になるのかを紹介していきます。
家族葬といっても普通のお葬式とやることは同じ
最近人気がある家族葬ですが、「家族」という言葉が入っているために「普通のお葬式とは違う特別なお葬式の仕方があるのでは?」と思ってしまうことがあります。
でも家族葬といっても、普通のお葬式の流れと大きく異なることはありません。
ただし家族葬という言葉そのものの歴史がそれほどないため、全体的なイメージが分からないという人の方が多いはずです。
家族葬にもメリットとデメリットがあります。
この2つが分かれば、家族葬をする上での注意点が見えてきます。
家族葬のメリット
家族葬は、本人と直接かかわりのある人だけで行う小規模なお葬式のことを言います。
「家族」という言葉は実際に血のつながりのある人のことを表すものですが、友人や知人であっても家族同然の付き合いをしていれば「家族」と考えることもできます。
ですから家族葬は「家族だけで行うお葬式」ということではなく、「本人と直接かかわりのある近い人だけで行うお葬式」と言い換えることもできます。
そんな家族葬には、こんなメリットがあります。
・本人らしいお葬式が出来る
本人と直接かかわりのある人が集まって行うお葬式ですから、どのようなお葬式をしたとしても「本人らしさ」を感じる演出をすることが出来ます。
例えば、遺影写真を例に挙げてみましょう。
遺影写真は葬儀後に仏間に飾っておくものですから、昔は男性であれば紋付き袴姿、女性も家紋入りの着物で写っている写真を使うのが一般的でした。
でも今は昔のような家の作りではなく、現代風のオシャレな内装の家も増えています。
そのため遺影の額も黒だけでなくシルバーやパープルなど、家の内装に合わせやすいフレームを選ぶことができます。
もちろん写真の衣装を着せ変えることも、今のお葬式では出来ます。
トレーナーからスーツや着物、ワンピースなどに着せ替えることもできます。
でもいくら遺影写真のためとはいえ、「生前ほとんどスーツを着たことがないおじいちゃんのスーツ姿」や「着物姿の印象しかないおばあちゃんのワンピース姿」はどうでしょうか?
さすがにこれではいくら顔が本人のものであったとしても、後から写真を見た時に違和感があるはずです。
ではもっと個性的な服装の場合はどうでしょうか?
野球のユニフォーム姿や地元の祭りの衣装など遺影写真は、お葬式の遺影写真の常識からしてみればあり得ません。
でも野球のユニフォームや祭りの衣装を着ている時の方が本人らしいと参列者全員が思っているのだとしたら、それこそが本人らしい写真といえます。
つまり家族葬は本人と直接かかわりのある人が集まって行うお葬式なので、一般的なお葬式の常識では考えられないような演出をすることができます。
これは家族葬のメリットといえるでしょう。
・ゆっくりとお別れをすることが出来る
一般的なお葬式では、多くの参列者が弔問に訪れます。
そのため遺族は参列者への対応に追われてしまい、最後の夜となるお通夜ですら本人とゆっくりお別れをする時間が取れません。
お葬式は「3日間戦争」と呼ばれることがあるほど、とても忙しいです。
たとえ親族であったとしても慣れない儀式や移動を繰り返していると、さすがに気持ちに余裕がなくなってきます。
でも家族葬の場合は参列者の多くが本人と生前に付き合いがある親族となりますから、多少のアクシデントがあってもある程度融通が利きます。
しかも普段から付き合いのあるわけですから、家族の精神的な負担もかなり減ります。
精神的に少しでもゆとりが出来るということは、その分ゆっくりとお別れをすることが出来るということです。
これも家族葬のメリットといえます。
・お葬式の予算がイメージしやすい
お葬式の予算がイメージしやすいのも、家族葬のメリットです。
たとえ親族であっても家族葬ではお葬式に呼ぶ範囲を家族が決められますから、それだけでもお葬式の規模をイメージすることが出来ます。
例を挙げてみましょう。もしもあなたが葬儀屋さんから「今回のお葬式には100名以上の参列者が予想されます」といわれたらどうしますか?
この情報からだと、お葬式の式場選びも最低100名は収容できる大きなホールを予約しなければいけなくなりますよね?
式場が大きくなるということは、式場の大きさに合わせた祭壇を選ばなければ見栄えも悪くなります。
さらに通夜式の後に通夜ぶるまいをするのであれば、どのような内容の料理と飲み物を何名分用意しなければいけないのかも考えなければいけません。
もちろん実際には食事をとらず弔問だけして帰っていく参列者もいますが、もしかしたら全員が料理を食べるかもしれません。
料理や飲み物が足りなくなるわけにはいきませんから、やはり多めに準備してしまいます。
でも食事は注文した以上、たとえ余ったとしても返金してもらうことはできません。
このようにお葬式の規模がイメージできない場合は家族が判断出来ないため、結果として葬儀屋さんに言われた通りの額で契約をすることになってしまいます。
これでは葬儀費用が高くなっても仕方がありません。
ところがお葬式の規模が自分でイメージできる範囲であればどうでしょうか?
お葬式に出席する人数があらかじめ分かっていれば、人数分の席が準備出来る式場を手配すればよいのです。
式場がコンパクトであれば、式場の広さに合わせたコンパクトな祭壇を準備すればいいわけです。
さらに料理や飲み物もほとんどロスなく準備をすることが出来ますから、余計な追加料金を請求されることもありません。
つまり家族葬の場合はお葬式の規模がイメージしやすいために、無駄を省いたお葬式の予算を立てることが出来ます。
これも家族葬のメリットになります。
家族葬のデメリットから見る注意点とは?
家族葬は小規模なお葬式を考えている家族にとってメリットばかりのように思われますが、実はデメリットもあります。
しかもこのデメリットがあまり知られていないため、思わぬトラブルに巻き込まれてしまうこともあります。
そこで家族葬のデメリットから、実際に家族葬をする場合の注意点を見ていきましょう。
・お葬式に呼ぶ親族の範囲が決められない
お葬式は家族だけでなく、本人の親族や配偶者の親族なども出席します。
一般的なお葬式の場合は、今後の付き合いなどを考えてほとんどの親族が出席します。
ところが家族葬の場合は、お葬式に呼ぶ親族の範囲を遺族が決めることになります。
しかも家族葬といっても「親族を呼ぶ範囲をどこまでとするのか」にはっきりとした基準はありません。
一緒に生活をしている家族だけでお葬式をするのも家族葬といえるのですが、さすがにこれでは密葬と同じ扱いになってしまいます。
実際に家族葬でお葬式を済ませた人の多くは、近い親族や普段から付き合いのある親族を呼んでいます。
もともと親族の人数が少ない場合は問題がないのですが、親族の人数が多いと「どの範囲までをお葬式に呼ぶのか」が問題になります。
さらにこのことが元でトラブルになってしまうこともあります。
その中には「呼ばれなかった親族が気分を害してしまい、その後一切の親戚付き合いを拒否されてしまった」というケースもあります。
家族葬の場合は、「どの範囲までの親族を呼ぶのか」を十分に注意しておくことが必要です。
・家族の希望がほとんど実現しなかった
家族葬といっても、お葬式の内容としては一般的なお葬式と何も変わりません。
ただ違うのは「お葬式の規模が小さくなるだけ」です。
ところが「家族」という言葉がついているために「家族の希望通りのお葬式が出来る」と勘違いをしてしまいがちです。
でも本当に家族の希望通りのお葬式をするためには、その希望を叶えるためのオプションが必要になります。
たとえば「ジャズが好きだったお父さんのためにジャズの生演奏でお葬式をしたい」という希望があったとしましょう。
普通のお葬式であれば多くの弔問客の対応などもあるため、たとえ家族からの希望があったとしても演奏時間や内容が制限されたり、場合によっては希望が全く叶わないこともあります。
その点だけで見てみれば、時間やスケジュールの調整がしやすい家族葬では希望通りのお葬式とすることはできるはずです。
でもジャズの生演奏は通常のお葬式のプランにはありません。
ですからオプションプランとして追加料金が発生します。
つまり家族葬だからといって、家族の希望がすべて叶うというわけではないということです。
場合によっては追加料金が発生することもありますし、たとえ家族葬であっても儀式の進行上どうしても希望がかなえられないこともあります。
・家族葬だからといって安いお葬式が出来るわけではない
家族葬だと葬儀の規模が小さくなるため、普通のお葬式と比べると安くお葬式をすることが出来ます。
でも規模が小さいということは、預かる香典の数も限られるということです。
お葬式の予算を考える時には出費ばかり考えてしまいますが、実際には香典による収入もあります。
普通のお葬式では規模が大きくなりますから費用も高くなりますが、香典としての収入もその分増えます。
ですからお葬式の予算を考える時には「お葬式の費用=葬儀代金-香典」という計算式を使います。
さらに詳しくお葬式の費用を計算するならば、香典の相場をもとにお葬式に呼ぶ人の人数から香典による収入見込み額を計算することもできます。
例えば、40代以上の親族を10名呼んで50万円の家族葬を葬儀社に依頼したことにしてみましょう。
40代以上の親族の場合は香典の相場が5万円ですから、10名×5万円となり香典での収入は50万円になります。
もちろんお葬式には葬儀代金以外に火葬料金や宗教者への支払い(仏式の場合はお寺へのお布施と戒名料)がありますから、香典以外にも手出しは必要です。
また香典の金額の相場は年齢だけでなく付き合いの度合いによっても違いますし、地域によっても違いがあります。
それでも家族以外の人をお葬式に呼べば、少なくとも香典としての収入が入ってきます。
ところが安くお葬式を済ませたいためだけに家族以外のだれも呼ばない家族葬をしてしまうと、香典による収入は見込めません。
つまり「家族葬だからといってお葬式の費用が安くなる」というのは大きな間違いなのです。
あくまでもお葬式の規模が小さくなるだけで、一般的なお葬式の儀式は家族葬も普通のお葬式も同じなのですから、お葬式の収支を考えれば「家族葬=安い葬儀」では決してないのです。
まとめ
本人と付き合いのある人とゆっくりお別れをすることが出来る家族葬ですが、名前のイメージ通りに考えてしまうと後で様々な問題が起きます。
参列者が少ないお葬式を考えている場合はメリットが大きい家族葬ですが、お葬式の費用を安くしたいと考えている場合にはデメリットが大きいことを十分に注意しておきましょう。