孤独死の壮絶な現場を現役湯灌士が語ります。【閲覧注意】

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私は「湯灌士(ゆかんし)」として様々な遺体と接してきました。

湯灌士は「身体を洗って身支度をするプロ」でもありますが、遺体の修復をするという仕事もあります。

最期の時を迎える時、必ずしも誰かがその場に立ち会うとは限りません。

場合によっては孤独死で、死後日数がたってから遺体が発見されることもあります。

ほとんどの地域では、そのような状態で発見された場合は死因を特定するために警察署に搬送され遺体を検案します。

ただ都心では、監察医が現場に赴きその場で死体検案書を発行することが出来る地域もあります。

この場合は、遺体発見現場に湯灌士が呼ばれることもあります。

こうしたこともあって、私は湯灌士でありながら孤独死の現場に立ち会った経験があるのです。

孤独死は、一人暮らしをしている高齢者であれば一度はその不安を感じたことがあるはずです。

もちろん自治体も孤独死を未然に防ぐための対策に取り組んでいます。

ただし孤独死というのは「自然死」だけではありません。

病死の場合もありますし自殺の場合もあります。

そこで今回は湯灌士として私が見てきた「孤独死の現場」を一部だけ紹介します。

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孤独死にも2つのタイプがある

誰でもこの世を去る時にたった一人で逝ってしまいたいと思う人はいないはずです。

ですから望んで孤独死を迎える人はいないはずなのです。

それでも世の中には孤独死が後を絶ちません。

これまで何度となく孤独死の現場を見てきましたが、私が現場で感じたのは「孤独死にも2つのタイプがある」ということです。

 

・「一人暮らしで突然死→孤独死」の自宅は整理整頓されている

一人暮らしの場合、突然体に異変があった時にすぐに助けを呼ぶことが出来ずに死に至ってしまうことがあります。

いわゆる病気による「突然死」です。

病気による突然死にも様々なパターンがあります。

よくあるのが「お風呂に入浴中の突然死」です。

 

入浴中の突然死にもいろいろな状況がありますが、なかには湯船につかったまま何らかの病気が原因で意識を失ってしまい、そのまま大量の水を飲んで溺死してしまうケースもあります。

しかもこの状態のまま数日間放置されたままになると、腐敗が進んでしまい大変なことになります。

 

また就寝中に脳梗塞を起こし、そのまま死に至るというケースもよくあります。

この場合は発見が早ければ特に遺体に大きな変化はありませんが、電気毛布やこたつの中に入ったまま亡くなっている場合は腐敗が早まり大変なことになります。

でも一人暮らしでも生前に突然死の可能性についてきちんと考えている人の場合、家の中はきちんと整理整頓されていることがほとんどです。

 

食事の後片付けや洗濯物の整理、大事な書類などもわかりやすく整理されていることが多いので現場に入っても遺体の状況に驚くぐらいでそれ以外は何も変わったことはありません。

本当に「突然亡くなってしまった」という感じです。

 

・「周囲から孤立→孤独死」の自宅はごみ屋敷に近い

これは高齢者の一人暮らしとは限りません。

何らかの原因で周囲から孤立したまま一人暮らしで孤独死してしまった場合、自宅はごみ屋敷に近いです。

人の腐敗臭というのは独特なので、すでに腐敗がかなり進んでいる状態になると窓を閉め切っていても周りの住人が異変を感じるほどの悪臭がします。

 

そんな孤独死の現場は、玄関を開けるとすぐに五感がすべて潰れてしまうのではないかと思うような壮絶な悪臭に襲われます。

そしてほとんどの場合荷物が散乱して玄関から部屋に続く通路がなくなっています。

台所だけでなく部屋の至る所に汁が入ったままのカップラーメンの容器や食べ残した弁当があるので、大量のハエの羽音だけでも耳が壊れそうになります。

 

さらに飲み残しのペットボトルや脱ぎ捨てた服の山、何が入っているかわからないゴミ袋の山で部屋がすべて埋まっています。

そしてその部屋の奥に明らかに周りの異臭とは異なる腐敗臭の原因となっている遺体があります。

 

このようなごみ屋敷の中で孤独死している遺体のほとんどは、テーブルの周囲にあるわずかな生活スペースで見つかります。

このわずかなスペース以外はほぼごみですので、窓は締め切られていることが多いです。

さらに窓を開けたくてもベランダにも大量のごみが山積みになっているので、窓を開けることもできません。

 

さらにこの状態で室温が30℃以上になると1日で腐敗がかなり進みます。

数日たつと体にガスが溜まって膨らみますし、皮膚が避け体液が染み出してきます。

体の色も激しく変色しますし、激しい悪臭で息が出来ません。

さらにハエが体内に入り込んで卵を産むと、それがふかして体から大量のウジが出ています。

 

もちろんこの状態で湯灌士が現場に呼ばれる時には、「遺体の処置をして納棺し葬儀場へ移動させるまで」が仕事になります。

私は何度もこのような現場に立ち会いましたが、目の前にある遺体を「人ではなく物体」と思い込まなければとてもじゃないですがその場にいることすらできません。

思考そのものがストップするのです。

 

なにしろ葬儀社スタッフですら中に入ろうとしないのですから、作業はすべて一人です。

何とかして遺体を引き取ために、ごみ屋敷の中で遺体の鼻や口から這い出てくるウジ虫をピンセットで取りながら、体液が漏れないようにするための専用の袋に収めるための処置をしなければいけません。

 

手袋をしていても肌が破けて体液が流れ出している遺体のグニョグニョ・ヌルヌルする感触は伝わります。

またどんなに振り払っても作業をしている私の腕にまで大量のウジが這い上がってきます。

さらにその周りには大量なハエが飛び回っています。

 

そんな状態のまま1時間以上も一人きりで部屋の中で作業を続けようやく納棺用の専用の袋に入れる処置が終わると、完全防備した葬儀社スタッフが納棺の手伝いのために現場に入ってきます。

遺体を棺に入れてようやく現場から出ることが出来た私に「よくこんな現場にいて平気で作業が出来るなぁ。俺は無理だわ」と声をかけてきた葬儀社スタッフがいました。

あなたが私の立場なら、このセリフにどんな言葉で返しますか?

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孤独死したい人はいない

こんな壮絶な孤独死の現場に遭遇しながらも、私は「誰だって自分から孤独死したい人はいない」と断言します。

たとえごみ屋敷の中で孤独死した人であっても、もしもごみ屋敷にならなければ孤独死していたとしてももう少し早く発見されたかもしれません。

さらにさかのぼれば、ごみ屋敷の原因にも何らかの理由があったかもしれません。

 

リストラされて家族に見放され、何もかもが嫌になって引きこもった末に自宅で自殺をした人もいました。

この人は鴨居に紐をかけて首つりしたものの、発見されるまでそのままの状態だったので足元には腐敗臭のもととなる体液が水たまりを作っていました。

この人の場合も警察から連絡を受けた家族は、現場で遺体発見の状況を警察から説明されると「もっと早く気が付いてあげればよかった!」と激しく後悔していました。

 

また病気で自由に歩くことが出来なくなってしまいだんだん部屋がごみ屋敷になってしまった一人暮らし齢者が孤独死した場合も、元気だったころは町内会の集まりにも積極的に参加する社交的な人だったといいます。

体を壊してほとんど家から出なくなっていたことに周囲が気付いた時には家がごみ屋敷状態になっていて、そのころから周りとの交流を拒否するようになったといいます。

どちらの場合も「もしもあの時…」という言葉は必ず出てきます。

それでも孤独死がなくならないのが現実なのです。

孤独死の現場は特殊なクリーニングが必要

孤独死の現場は、後処理をするのにも高額な費用が掛かります。

まず遺品の引き取り手がいない場合は、すべて処分をしなければいけません。

ましてごみ屋敷化している場合は、家財道具の整理をする前に大量のごみを処分しなければいけません。

 

家財道具やごみをすべて処分しても、腐敗した遺体が発見された部屋の悪臭は取れません。

そもそも現場でわずか数時間作業をしていた私ですら強烈な腐敗臭が服や髪にしみつくほどなのです。

さすがに服はその場で処分しましたが、髪は何度洗っても臭いが残っている気がしてたまりませんでした。

 

さらに問題なのは悪臭の原因である体液の存在です。

腐敗した遺体からしみ出した体液からの悪臭は、ふき取っただけでは取れません。

畳や床の奥までしみこんでしまうとただのハウスクリーニングでは臭いは取れません。

 

このような現場のハウスクリーニングは、腐敗臭の処理などを専門に行う特殊なハウスクリーニング業者に依頼しなければきれいになりません。

もちろん専用の機械と特殊な薬剤などを使いますからその費用は高額です。

しかも賃貸マンションの場合、契約を解除する時には原状回復するのが原則です。


まとめ

孤独死は一人暮らしをしている人だけの問題ではありません。

「あなたが孤独死するリスク」と「あなたの家族が孤独死するリスク」は同じなのです。

孤独死は「もしもあの時」と思う前に手を打たなければ、現実問題になった時に大変なことになります。

 

でも何度も言いますが、人として生まれた限り誰一人として自ら孤独死したいと思う人はいないのです。

たとえ自殺という方法をとったとしても、それ以外の方法が見つからないところまで追い込まれた先に孤独な死があるのです。

だからこそ今一度、あなたは「あなたの大切な人のこと」を考えてみてください。

将来「もしもあの時」と思うことがないように…。

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