夫の死後、夫側の親族との付き合い方に悩む人が増えています。
特に夫の両親や義理の兄弟姉妹との付き合い方には、「妻として付き合うべきか」「距離を置いて付き合うべきか」で悩む人が多いです。
そこで今回は夫と死別した妻として夫の両親や義理のきょうだいとの付き合い方のポイントをわかりやすく説明します。
死別した夫の両親や兄弟との付き合いは心の距離感が基準
死別した夫の両親や義理の兄弟姉妹との付き合い方について悩む人が多いのですが、その悩みの内容を詳しくきいてみると大きく分けて2つのケースに分かれています。
ケース①夫の死後も変わらずに付き合いたいと考えている妻
夫と死別したとしてもそれまで夫婦として連れ添ってきたわけですから、夫の両親や兄弟とも親密な関係が出来上がっていることもあります。
中には実の親や兄弟よりも相性がよく、実の親・実の兄弟のような付き合いをしている人もいます。
このようなケースの場合、夫と死別したことを理由に関係が変わってしまうということはほとんどありません。
どちらかというと夫が生きていた時以上に何かと気遣ってくれるようになり、心の寂しさを埋めてくれる存在となることもあります。
また死別した夫との間に子どもがいる場合、子どもの為にも夫の両親やきょうだいたちとの付き合いを続けていきたいと考える人もいます。
死別した夫とあなたの間には血のつながりはありません。
ですから夫の死別と同時に法律上でも婚姻関係は終了します。
ところが夫とあなたの間にできた子どもの場合は、夫の両親やきょうだいとも血縁関係があります。
そのため妻であるあなたに対する感情と「孫」「甥・姪」という立場になるあなたの子どもへの感情は違います。
特にまだ子どもが小さい場合、夫がいない分何かと不自由なことが出てきます。
シングルマザーとして生きるということはとても勇気のいることですし、心にも身体にも大きな負担がかかります。
こうした時に夫の両親やきょうだいのサポートはとにかくありがたいものです。
「父親の代わり」という存在にはなりませんが、それまで以上に深い愛情であなたの子どもたちを守ってくれます。
こうしたこともあって「夫の生前中から良好な家族関係が築けていた場合」または「死別した夫との子どもがまだ小さい場合」は、夫の死後も夫の両親や義理のきょうだいたちとの関係を続ける人が多いです。
ケース②夫の死を区切りにすっぱりと縁を切りたいと考えている妻
夫婦にはいろいろな面があります。
いい面もあれば悪い面もあり、その原因が夫や妻それぞれにある場合もあれば夫の両親や兄弟との関係にある場合もあります。
どちらにしても夫と死別する前にすでにあなたから夫への愛情が冷めてしまっていたのであれば、夫の死を区切りに全ての縁を切って新しい人生をスタートさせたいと考えるでしょう。
ただしこの場合も2つのケースが考えられます。
すでに「離婚」ということを考えていた夫が予想していたよりも早く亡くなった場合、あなたの気持ちでは「すぐにでもすべてを清算したい」と思うでしょう。
でも妻としての建前もありますし夫のお葬式では喪主を務めますので、お葬式に関することがひと段落つくまでは行動に移さないことが多いです。
これに対して時間の経過とともに死別した夫側の家族との関係を切りたいと考えるケースもあります。
特に夫の親の介護や夫側のきょうだいの金銭トラブルなどが関係してくると、このような気持ちにスライドしてくるケースが増えます。
・あなたが夫の死後も妻として生きていきたいのかがポイント
夫の両親や義理のきょうだいとの関係を考えるよりも大事なポイントは、あなたの気持ちにあります。
夫がすでに亡くなった今でもあなたが「私の夫は死ぬまで彼一人」と考えているのであれば、あなたは間違いなく「妻」です。
婚姻関係は終了したとしてもそれはあくまでも法的な解釈の上でのことであり、実質上は今でもあなたは死んだ夫の妻です。
でもあなたの心の中で「妻としての役目を果たすために夫の両親・きょうだいと付き合ってきた」というのであれば、死んだ夫との婚姻関係が終了した時点で夫の両親・きょうだいとの心のつながりも既に切れてしまっているはずです。
つまりこの問題の選択権は「あなた」にあるということです。
世間体や一般常識などに振り回されるようなことではありません。
たとえ夫の死をきっかけに夫の両親やきょうだいと縁を切ったとしても、夫側の親族が「これは非常識だ!」と声をあげることはありません。
もしもそのようなセリフが耳に入ってきたとしても、夫との婚姻関係が終了しているのですから何の問題もないのです。
だからこそこの問題は「あなたがどうしたいのか」にかかっているのです。
夫側の家族の本性は遺産相続の時に見極めろ!
私がお葬式や相続の現場に数多く立ち会ってきた経験上断言できるのは、「夫側の家族の本性は遺産相続の時にわかる」ということです。
遺産相続には法定相続人というものがあります。
もちろん法定相続人によって遺産の取り分も変わってきます。
ただし本当にお金持ちの家庭では遺産相続争いがおこることはほとんどありません。
なにしろ遺産が多いということは、対策をしておかなければ必ず争いごとが起きるということがわかるからです。
ところが預貯金・不動産合わせて3000~5000万円前後の遺産相続が一番揉めます。
正直言ってこの程度の遺産は、ある程度の年齢以上の男性であれば大抵あてはまりますよね?
マイホームがあり預貯金が数百万円あるというケースがこれに当てはまりますから、いたって普通の家庭ですよね?
でもこのケースが一番相続で揉めるのです。
それまで仲良くしていたはずの夫側のきょうだいが、遺産があると分かったとたん態度を豹変させる場合もあります。
こうした瞬間を見てしまうと「これまで通りのお付き合いは出来ない」と感じる人も増えます。
ですから相手の本性を見抜くためにも、夫の遺産相続の時は相手の態度や言動を細かくチェックするようにしましょう。
夫側の親や兄弟と完全に縁を切る方法もある
夫の死別によってあなたと死んだ夫の間にあった婚姻関係は終了します。
でもこのままの状態では夫の両親や義理のきょうだいたち(これを「姻族関係」といいます)の扶養義務があなたに残ります。
そのためあなたが何の手続きも取らず彼らとの接触を断ったとしても、問題が起きた時に必ずあなたのところにも影響が起きます。
たとえば「夫のきょうだいが生活保護の申請をした」としましょう。
現在の状況では、生活保護の申請をしても受理されるのは極めて難しいです。
まず申請書が提出されると、申請者を扶養する義務がある人に役所から確認の連絡が来ます。
内容はあなたの経済状況の確認です。
「あなたは申請者に対して扶養の義務がありますが、あなた自身は申請者の扶養が出来ないほど経済的に困っているのですか?」と聞かれます。
これをあなたの周りの人に聞かれてしまうのは、とても恥ずかしいことですよね?
ただし夫の死後あなたは姻族関係の終了手続きを行っていませんから、役所が言うように「申請者の扶養義務者」の中にあなたも含まれているのです。
これは民法にもきちんと決められており、「姻族関係にあれば扶養する義務を負う」と書かれています。
ですからあなたがどんなに夫家族との接触を断っていたとしても、このような場合にはあなたにも責任がかかってくるのです。
こうしたケースをすべて回避するためには「婚姻関係終了届」を使います。
婚姻関係終了届は、申請するあなたの意思だけで手続きが出来ます。
親族の同意もいりません。
しかも手続きは市区町村役場の窓口に提出するだけです。
これによってあなたは夫との婚姻関係だけでなく、死別した夫との姻族との関係も終了できます。
姻族関係がなくなれば、夫の両親や義理の兄弟への扶養義務がなくなります。
まとめ
夫と死別した後の夫側の両親・きょうだいとの付き合い方については、時代と共に生活スタイルや価値観の変化などもあって昔とは大きく変わっています。
そのため今では夫の死後、死別離婚(いわゆる「婚姻関係終了届」のこと)をする人も増えています。
ただ紙切れ一枚とはいえ夫婦として歩んできた歴史もあるわけです。
その夫婦の歴史の中に夫の両親や義理のきょうだいとの付き合いもあります。
ですから夫の死によってすべてのことが終わってしまうということではありません。
いずれにしてもこの問題に決定権を持っているのは、残された妻である「あなた」になります。
あなたのこれからの人生は長いです。その人生の中でどのような方法が一番あなたにあっているのか、じっくりと考えてから結論を出すことをおすすめします。