お葬式が終わった後に行う手続きの中には「遺族年金」というものもあります。
これは一定の年齢以上で受け取ることが出来る「老齢年金」とは違い、死亡した人の遺族が受け取ることが出来る年金です。
ただ遺族年金といっても2種類あります。
その種類によって受け取ることが出来る金額や期間、手続きの仕方が変わります。
そこで今回は、お葬式が終わった後の手続きとして知っておきたい「遺族年金」について分かりやすく解説していきます。
遺族年金は「どの年金に加入しているのか」によって種類が変わる
遺族年金は年金制度の1つです。
年金というと、一定の期間年金を納めていた人が老後に受け取ることが出来るお金のことを言います。
いわゆる「年金」と呼ばれるのがこのことで、正しくは「老齢年金」といいます。
遺族年金は「老齢年金」と関係があります。
年金に加入していた人が死亡した場合、本人が将来受け取るはずだった年金を遺族が受け取ることが出来ます。
これが「遺族年金」です。
遺族年金は、加入者がどの年金に加入していたかによって受給対象者(受給資格を持つ人)も変わります。
・遺族基礎年金と遺族厚生年金
遺族年金は、亡くなった人が加入していた年金の種類によって変わります。
まず国民年金に加入している場合は「遺族基礎年金」が受け取れます。
これに対して厚生年金に加入している場合は「遺族厚生年金」となります。
この2つの大きな違いは「受給資格を持つ対象者」にあるといえます。
遺族基礎年金では「子どもがいること」が前提条件となります。
配偶者がいたとしても、夫婦の間に子供がいない場合は遺族基礎年金を受け取ることはできません。
これに対して遺族厚生年金では、子供がいなくても配偶者は受け取ることが出来ます。
さらに受給資格を持つ対象者は配偶者だけとは限りません。
子供や孫、父母、祖父母も対象になります。
・誰が亡くなったのかもポイントになる
遺族基礎年金と遺族厚生年金には、もう一つの違いがあります。
遺族基礎年金では、「夫が亡くなった場合」「妻がなくなった場合」ともに受給の条件は同じです。
もちろん子供がいることが条件ですが、「配偶者の性別」が受給資格の違いになることはありません。
ところが遺族厚生年金では、受取人が夫の場合「55歳以上でなければ受給することはできない」となります。
つまりあなたの亡くなった妻が厚生年金に加入していても、あなたの年齢が50歳であれば遺族厚生年金を受け取ることはできません。
亡くなった人が国民年金に加入していた場合の遺族年金
亡くなった人が国民年金に加入していた場合、受給の対象者は「遺族基礎年金」を受け取ることが出来ます。
受給資格の対象者は「亡くなった人の子ども」または「子どもがいる配偶者」です。
もちろんどちらも故人の扶養家族(亡くなった人に生計を維持してもらっていた人)であることが前提条件になります。
ここで注意が必要なのが「亡くなった人に生計を維持してもらっていた人」という前提条件です。
「亡くなった人に生計を維持してもらっていた人」にはきちんとした条件があります。
まずは「同居していること」です。
同居している場合は、「亡くなった人に生計を維持してもらっていた」と考えることが出来ます。
では「進学のために一人暮らしをしていた子ども」の場合はどうなのでしょう?
家を出て一人暮らしをしているということは「別居」となりますよね?
これだけを見ると受給資格の対象から外れます。
ただ一般的に考えて「進学のために一人暮らしをしている」というのであれば、親からの仕送りを受けていたりしますよね?
また学生の場合は、健康保険も世帯主の「扶養親族」となります。
つまりこの場合は別居をしていたとしても「生計を維持してもらっていた」と言えます。
ですからこの場合は単なる別居とは違い、遺族基礎年金の受給資格対象者となります。
ちなみに「生計を維持してもらっていた」と認められるためには、収入または所得も関係します。
ここで注意しなければいけないのは、「亡くなった人の収入・所得」ではなく「遺族年金を受け取る人の収入・所得」だということです。
対象になるのは「前年の収入または所得」です。
それぞれに上限が設定されていて、収入の場合は「850万円未満であること」、所得の場合は「655万5000円未満であること」という条件が付きます。
・どれくらいもらうことが出来るのか
受給額は「子どもの人数」によって変わります。
原則として「77万9300円+子どもの加算額」が支払われる金額になります。
子どもの加算額は、「第1子」「第2子」までは1人当たり22万4300円が加算されます。
ただし第3子以降は、1人当たり7万4800円の加算となります。
・いつまで受給してもらうことが出来るのか
遺族基礎年金は「亡くなった人に子供がいること」が条件になります。
ただし受給の対象となる子どもの年齢があらかじめ「18歳を迎える年の3月31日まで」(※障害年金の障害等級1・2級の子どもの場合は20歳まで期間が延長されます)と決められています。
ですから子供の年齢が指定された年齢を達した場合は、対象の子どもは受給資格を失います。
そのため遺族基礎年金では、受給金額だけでなく受給期間においても子どもが関係してくるという点に注意が必要です。
・子供がいない配偶者は受け取れないの?
子どもがいない配偶者は、残念ですが遺族基礎年金を受け取ることはできません。
このように言ってしまうと「子どもがいないだけで損をするなんて!」と思いますよね?
でも安心してください。
子どもがいなくても「死亡一時金」を受け取ることはできます。
この場合は「国民年金保険料の納付期間が36か月以上あること(納付期間には免除期間も含む)」「老齢年金を受け取らずに配偶者が亡くなった」の2つを満たしていれば受給対象になります。
ただ死亡一時金は「死亡した人の配偶者だけが対象」というわけじゃないのです。
優先順位が決められていて、最も優先順位が高いのが「配偶者」となります。
そのため配偶者がいない場合は「子ども→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹」の順で受給できます。
ちなみに「一時金」とあるように、あくまでも支払いは1度しかありません。
また「遺族基礎年金を受け取ることが出来ない場合」に限られているので、誰もが対象になるということではありません。
それでも対象になるのであれば、申請手続きによって受給することが出来ます。
ですから「子供がいないから私には関係ないのね…」と諦めないで、家族や親族の中で受給の対象者がいないかきちんと調べることも大切ですよ。
亡くなった人が厚生年金に加入している場合の遺族年金
亡くなった人が厚生年金に加入していた場合、受給の対象者は「遺族厚生年金」を受け取ることが出来ます。
受給資格の対象者は「亡くなった人の妻」「子ども」「孫」「夫」「父母」「祖父母」です。
遺族基礎年金とは違って受給資格を持つ人の対象が広いことが大きなポイントです。
ただし優先順位が付いています。
優先順位は「妻→子ども→父母→孫→祖父母」となっていて優先順位が高い人が受給者となります。
ちなみに遺族厚生年金を受け取りながら遺族基礎年金を受け取ることもできます。
もちろん遺族基礎年金の場合は受給資格を持つ人の対象の範囲が限定されているので、条件を満たしているかチェックする必要があります。
・どれくらいもらうことが出来るのか
受給額は加入者の「年金加入実績」が関係します。
そのため一概に「いくらもらえる」ということは言えません。
金額の計算方法もちょっと複雑なので、ここでの説明は省略します。
ただ「どうしても詳しい金額が知りたい」という人は、日本年金機構のホームページを確認してみてください。
こちらであればあなたの知りたい情報を知ることが出来ますよ。
・いつまで受給してもらうことが出来るのか
遺族厚生年金は、「加入者がなくなった時期」が大きなポイントになります。
何しろ支給金額が「年金加入実績」と関係しているので、長く加入しているほど金額は大きくなります。
また亡くなった時点での受給者の年齢または子どもの有無も関係します。
子どもがいなくても受け取ることはできますが、30歳未満の妻で子供がいない場合は「5年間の支給」となります。
ただし30歳以上の妻の場合は、子どもがいてもいなくても妻が死ぬまで受け取ることが出来ます。
ちなみに妻が40~65歳の場合は、一定の要件を満たしている場合「中高齢寡婦加算」として年間58万4500円が加算されます。
・子供がいない配偶者は受け取れないの?
遺族厚生年金は子どもの有無は受給資格に影響ありません。
ただ年齢によっては「寡婦年金」を受け取ることが出来る場合もあります。
寡婦年金の対象となるのは「子供がいない60~65歳の妻」となっています。
受給するためには「保険料を10年以上支払っていること」が条件になります。
その上で亡くなった夫と10年以上夫婦関係があった場合に対象になります。
最近は熟年結婚も多いですが、遺産相続などの問題で子どもたちがトラブルを起こさないために「事実婚」としているカップルも増えています。
でもこの場合、いくら事実上の夫婦関係が10年以上あったとしても「婚姻関係にある」とは判断されません。
ですから事実婚の夫婦の場合は寡婦年金の対象にはなりません。
まとめ
遺族年金は、年金加入者がなくなった場合に遺族が受け取ることが出来るお金です。
亡くなった人がどの年金に加入していたかによっても異なりますが、本来加入者が受け取るはずだった年金を受け取ることになるので対象者になっているのであればきちんと手続きをすることがおすすめです。
ただ遺族基礎年金と遺族厚生年金では受給資格を持つ対象者や支給額に違いがあります。
そのためまずは「どの年金に加入していたのか」がポイントです。
ちなみに遺族年金は非課税ですから、受給しても相続税の対象にはなりません。
遺族にとってはその後の生活を支える大事なお金ですから、しっかりと手続きを進めるようにしましょうね。