生活保護を受けている人は、お葬式をする場合に「葬祭扶助」が出ます。
葬祭扶助というのは「葬儀社に支払うお金」のことです。
このお金を支給してもらうことによって、生活保護を受けていても自己負担0円でお葬式をすることが可能です。
ところが生活保護の葬祭扶助では、支給を受けるための条件を満たしていなければ受けることが出来ません。
また支給されたとしても基準額の上限からかなり減額されるケースもあります。
そこで今回は「生活保護を受けている人」「身内に生活保護を受けている人がいる人」が生活保護の葬祭扶助を受けるために知っておくべきことをわかりやすくまとめてみました。
生活保護の葬祭扶助を適切に受け取るためには!?
お葬式の費用の一部を負担する制度には様々なものがあります。
一般的には生前に故人が加入していた健康保険の種類によって内容は決まるもので、国民健康保険の場合は火葬場の使用料(火葬場で領収証が発行されるお金)が実費で支給されます。
ところが生活保護を受けている人に対する「葬祭扶助」は、火葬料金のみの支給ではありません。
お葬式をするために必要なお金(葬儀社に支払うお金)も「葬祭扶助」として支給されます。
ところがお葬式に必要なお金と知っても、支給される金額にはあらかじめ上限がつけられています。
上限は受給している人の住民票がある市区町村の級地によって変わります。
級地は1~3級地に分かれていて、1~2級地では20万1000円、3級地では17万5900円となっています。
この上限額は全国一律になっていて、「都心に住んでいるから高い」「田舎に住んでいるから安い」というわけではありません。
あくまでも基準に基づき設定された級地によって変わります。
ただ間違えないでほしいのは、支給される20万1000円(または17万5900円)が支給の上限額ということです。
つまり「これ以上の支給はありません」という目安なだけで、生活保護を受けていれば誰もが満額支給されるということではありません。
葬儀社を手配する前に申請をする
生活保護の支給を受けてお葬式をしようと考えている場合、「葬祭扶助の申請」をしなければお金を支給してもらうことはできません。
ただ亡くなった直後から喪主はいろいろな手配を迫られます。
例えば病院で亡くなった場合、すぐに病院側から「遺体を引き取る車の手配をしてください」といわれます。
遺体の引き取りには専用の車が必要になりますが、こうした車の手配は葬儀社にお葬式を依頼するとすぐにできます。
ただし葬儀社に手配をする前に「生活保護の葬祭扶助申請」をしないと、お金の支給を受けられない(または減額される)のが一般的です。
もちろん葬儀社に「生活保護の範囲内でお葬式をしたい」と申し出ることも大事なことです。
でもそれよりも前に生活保護の窓口に申請をしないといけないのです。
もっとも亡くなった直後に福祉事務所や市町村役場の窓口に行って申請をすることは、時間的に考えてもその当時の精神状態から考えても無理です。
そこで覚えていてほしいのが、「担当しているケースワーカーまたは民生委員への連絡」です。
実は葬儀社に依頼をする前に担当のケースワーカーまたは民生委員に連絡をするだけでも、葬祭扶助の申請の第一段階をクリアすることになります。
またこの連絡の時にどのような内容のお葬式をすればよいのか(どこまでの範囲が葬祭扶助として認められるのか)を確認します。
内容を確認し担当者から申請が認められると判断してもらえることで、初めて「葬祭扶助の申請が認められる」となります。
しかもここまでであれば電話連絡で対応してもらうことが出来ます。
ですから葬儀社に連絡をする前に、まずはケースワーカーまたは民生委員に電話で連絡をするようにしましょう。
申請が認められないうちに葬儀社を依頼すると大変なことになる
申請が認められないうちに葬儀社に葬儀の手配をすると、最悪の場合、生活保護の葬祭扶助を受けられなくなることがあります。
まず初めに知っておいてほしいのが、「お葬式を終わった後に申請しても基本的に認められない」ということです。
そもそも生活保護の扶助制度を利用するためには、必ず申請をすることとなっていますよね?
たとえば医療扶助を受ける場合もまずは担当窓口に申請をしてからになりますし、住宅扶助を受ける場合も必ず申請が必要になります。
これと同じくお葬式の費用の扶助を受けるためにも申請が必要なのです。
また葬儀社にお葬式の費用を支払ってから申請するのもNGです。
どちらかというとこちらのケースの方が問題で、「支給を受けなくても葬儀費用を支払うだけのお金がある(支払い能力がある)」と判断されてしまいます。
ですからこの場合は「支給を認めない」となるケースがほとんどです。
さらに厄介なのが「葬儀社にだけ生活保護を受けていることを伝えた」というケースです。
葬儀社はボランティアではありません。
あくまでもビジネスとしてお葬式を行っています。
ですから本音では「1円でも高く葬儀費用を取りたい」わけです。
生活保護の葬祭扶助の範囲内でお葬式を依頼されるよりは、少しでも高いお葬式の依頼を受けたいのです。
さらにここにちょっとした落とし穴があります。
生活保護を受けていたとしても、その人がどの範囲まで葬祭扶助として支給されるのか知らない人の方が圧倒的に多いのです。
ですから本来なら17万5900円が上限とされている地域であっても、打つ合わせ担当者は「20万円までは葬祭扶助として申請することが出来ますよ」と提案することもできるのです。
もっときわどいことをいえば、「生活保護の扶助として20万円までは支給されますから、皆さん方が協力してあと10万円準備してもらえば30万円のお葬式を自己負担10万円で行うことが出来ますよ」と提案することもできます。
ただこの提案にのってしまうと、支給される金額から自己負担した金額が減額されることがあります。
先ほどの例をもとに言えば、自己負担の10万円は「支給を受けなくても支払うことが出来るお金」となります。
つまり「支給されるはずお金-支払い能力があると判断されたお金=葬祭扶助として支給されるお金」となるので、実際に支給されるのは10万円となる可能性があるのです。
だからこそ葬儀社にお葬式の依頼をするよりも、ケースワーカーや民生委員に連絡をして葬祭扶助の申請が認められることを確認することを優先しなければいけないのです。
亡くなった人が生活保護を受けていても葬祭扶助を利用できない!?
生活保護の葬祭扶助を受けることが出来るのは、「葬儀を行う人(喪主)が生活に困窮していること」も条件になります。
例えばあなたの身内に生活保護を受けている人がいたとします。
その人には身寄りがなく、唯一血縁関係があるのが親戚にあたるあなただったとしましょう。
この場合、喪主(葬儀を行う人)は「あなた」になりますよね?
もちろんあなた自身も生活保護を受けているのであれば、このような場合でも葬祭扶助の対象となります。
ところがあなた自身は生活保護を受けてはおらず、経済状況を見てもお葬式の費用を支払う能力があるのであれば対象外になります。
あくまでも生活保護の葬祭扶助は「お葬式の費用を支払うことが出来ない(生活に困窮している)」という人に対する扶助制度です。
ですからたとえ故人が生活保護を受けていたとしても、喪主の経済状況次第で扶助制度を利用できないこともあるのです。
故人と申請者が異なる住民票の場合は要注意
亡くなった人と葬祭扶助の申請をする人の住民票が違う場合は注意が必要です。
前述でも説明しましたが、葬儀社に支払うお金の支給(基準額)は自治体によって違います。
もしも故人よりも申請者が住民票を置いている自治体の方が基準額の上限が高いのであれば問題ありませんが、逆の場合は差額分が自己負担となります。
また基準額は「申請者の住民票がある自治体」で申請します。
ですから住民票が違う場合は、支給額がいくらなのかを葬儀社に依頼する前に確認しなければいけません。
まとめ
生活保護の葬祭扶助では、「基準額の上限」が決められています。
きちんと内容を確認したうえで申請手続きをした上でお葬式を行うのであれば、減額されずほぼ満額支給されます。
ところが「葬祭扶助の申請をし忘れていた」「お葬式が終わってから申請した」「支払いが完了してから申請した」となると、最悪の場合申請してもお金が支給されないことがあります。
確実に自己負担0円でお葬式をしたいのであれば、お葬式を意識するようになったタイミングで一度ケースワーカーや民生委員に相談してみてください。
これも場合によっては電話でも対応してもらうことが出来ます。
ですから悩む前にまずは相談することが大事ですよ。