最近はお葬式のスタイルも様々なものがあります。
中でも特に人気があるのが「家族葬」です。弔問客が多い昔ながらのスタイルのお葬式は「一般的なお葬式」と呼ばれるのに対し、家族を中心としたごく小規模なお葬式のことを「家族葬」と言います。
でもこの「家族葬」というスタイルが定着化したことによって、ちょっとした問題が出ています。
それが「親族」の範囲です。
親族にも血のつながりの濃い人もいれば、普段付き合いのない遠い親族もいます。
一般的なお葬式であれば親族は「これらすべて」を指しますが、最近の家族葬では親族の範囲も家族によって決められるため一概には言えません。
ではお葬式における「親族の範囲」とは一体どうなっているのでしょうか?また家族葬の場合、「遺族」と「親族」はどのように区別すべきなのでしょうか?
お葬式の親族の範囲とは!?
お葬式といっても、最近では様々なスタイルのお葬式があります。
かつては遺族・親族のほかに近所の人や故人の関係者、遺族・親族のほかにも故人と交友のある人まで幅広く呼ぶのが一般的でした。
そのため昔は「お葬式の規模も大きく費用も高い」のがお葬式の常識でした。
つまりこのようなお葬式のことを、「一般的なお葬式」といいます。
ところが最近は「家族葬」の方が主流です。
家族葬といっても様々なケースがあります。
言葉の印象だけで見れば「家族だけで行うお葬式=家族葬」と思われるでしょう。
でも本当は「家族を含め概ね15名程度のお葬式=家族葬」なのです。
しかも家族葬の場合、「お葬式に呼ぶ親族の範囲」が問題になります。
もともと家族も親族も15名程度であれば全く問題がないのですが、もしも親族が50名もいるとしたら「どこまでを親族として扱うか」が問題になりますよね?
しかもこの時の判断に正しい基準はありません。
そのため親族としてお葬式に呼ぶ範囲を決めるのは、家族次第となります。
ですからお葬式における親族の範囲は、「一般的なお葬式」と「家族葬」では違うのです。
遺族と親族の違いは?
遺族と親族の違いについては、はっきりとした基準があります。
お葬式屋さんによっては親族に訃報連絡をする上での参考資料として「親族図」を準備しているところもあります。
ただし本来であれば「お葬式は故人と縁のある人が参列する」が基本です。
ですからわざわざ親族図を準備しないお葬式屋さんの方が圧倒的に多いです。
遺族とは?
正しくは「遺族=家族」ではありません。
ちょっと難しい言い方をしてしまうと、遺族とは「生計を共にしている血縁関係者」となります。
例えば40歳男性が故人だとしましょう。
男性には38歳の妻と15歳の娘がいます。
男性の両親は健在ですが、一緒には住んでいません。
この場合「遺族=妻・娘」となります。
もしも男性が独身ならば、たとえ両親と一緒に暮らしていなくても、「遺族=両親」となります。
ただこの考え方はあまり一般的ではありません。
男性にきょうだいがいる場合は、きょうだいも遺族として含めて考えます。
さらに男性の祖父母が生きているのであれば、祖父母も遺族となります。
この例では【娘・15歳】と設定しているのですが、もしも娘がすでに結婚し孫も生まれているのであれば、孫も遺族として考えるのが一般的です。
親族とは?
親族には「直系姻族」「傍系姻族」「傍系血族」の3つがあります。
この3つを分かりやすく説明するなら、故人と直接血のつながりのある親族(それぞれの配偶者とその家族も含む)を「傍系血族」といいます。
これに対して故人の配偶者の親族のことを「直系姻族」と「傍系姻族」といいます。
つまりこの2つは「故人と血縁関係がある」と「故人の配偶者と血縁関係にある」の2つに分かれると考えると分かりやすくなります。
★故人と血縁関係のある親族の方が優先される
お葬式で呼ぶ範囲を決める際にポイントとなるのが、「故人との血縁関係」です。
故人のきょうだいでも、血縁関係のあるきょうだいと配偶者のきょうだいでは「血縁関係のあるきょうだい」が優先されます。
これは父母においても同じです。
故人の両親は「遺族」として扱いますが、配偶者の両親の場合は「親族」として扱います。
孫においても「内孫」と「外孫」では扱いが変わります。
家族葬でお葬式に呼ぶ親族の範囲は!?
親族の範囲で最も悩みが多いのが、「家族葬」の場合です。
家族葬というお葬式のスタイルにも明確な基準がないのが実状なので、実際に家族葬でお葬式をしてみた人によって意見が異なります。
そこで3つのケースを例に挙げますから、あなたが考える家族葬に最も近いものを探してみてください。
・家族葬だけど比較的規模が大きなお葬式を行った人の場合
「家族葬」でも「一般的なお葬式」でも、お葬式で行わなければならないセレモニーや必要となる物に違いはありません。
そのため「家族葬のお葬式」といっても、場合によってはほぼ「一般的なお葬式」と同じ規模になることもあります。
このようなケースで家族が考える親族の範囲はこうなります。
・遺族(生計を共にしていた血縁者)
・故人と血縁関係のある親族(父母、父母のきょうだいとその家族、祖父母、祖父母のきょうだいとその家族、曽祖父母、曽祖父母のきょうだいとその家族)
・故人の配偶者の親族(配偶者の父母、配偶者のきょうだいとその家族、配偶者の祖父母)
・20~30名規模の一般的な家族葬を行った人の場合
基本的にはこの規模のお葬式を一般的に「家族葬」と呼びます。
遺族・親族の人数が概ね15名程度となり、その他一般の参列者を含めて20~30名となるお葬式です。
このようなケースで家族が考える親族の範囲はこうなります。
・遺族(生計を共にしていた血縁者)
・故人と血縁関係にある近い親族(父母、故人のきょうだい、故人のきょうだいの家族、祖父母)
・故人の配偶者の親族(配偶者の父母、配偶者のきょうだい)
・最もシンプルな家族葬を行った人の場合
親族には一切知らせず家族だけで行うというのが、最もシンプルな家族葬になります。
このようなケースで家族が考える親族の範囲はこうなります。
・遺族(生計を共にしていた血縁者)
・故人の両親
・故人のきょうだい(故人のきょうだいでも配偶者がいる場合は呼ばないことの方が多い)
・故人の配偶者の両親
家族葬で親族の範囲を決める時の注意点
家族葬の場合、親族全てに訃報連絡をするのであれば全く問題はありません。
でもお葬式に呼ぶ親族を限定してしまう場合、お葬式がきっかけで親族トラブルを引き起こす可能性があります。
そのため次のような点に注意してください。
・訃報連絡だけは全員にしておいた方がいい
家族葬の場合、規模を出来るだけ小さくするためにお葬式に呼ぶ親族を限定することがほとんどです。
でもそのことが、葬儀後に親族付き合いでトラブルとなることがあります。
呼ばれなかった親族の気持ちを考えてみれば、「どうしてあそこの親戚は呼ばれてウチだけ呼ばれなかったの?」と思うのは当然ですよね?
ですから訃報連絡に関しては、出来るだけ親族全員にしておく方が無難です。
ただその場合、「今回は事情があって家族だけの家族葬とさせていただきたいと思います」という一言を必ず付け加えてください。
そのことによって、お葬式に呼ばれない親族の気持ちも落ち着きます。
またお葬式が終わった後は「おかげさまで無事にお葬式を終わることが出来ました。ご配慮有難うございます。」といって、葬儀終了の報告と感謝の気持ちを必ず伝えるようにしましょう。
・最もシンプルな家族葬でも葬儀終了後は親族への報告を必ずすること
最もシンプルな家族葬を行ったとしても、葬儀後には親族へ訃報の連絡と葬儀が終了したことの報告をするのがマナーです。
葬儀後の親族への連絡をするタイミングとしては、初七日を終えてから2~3日以内が目安です。
お葬式が終わっても、お葬式の数日後には初七日を迎えます。
そのため家族にとっては亡くなってから初七日までの1週間は、スケジュールが埋まっており、キモチの落ち込みや体力の低下も著しいです。
ただし初七日法要が終わると、家族にも気持ちに少しゆとりが出来ます。
ですから初七日法要が終わったタイミングで連絡をするのが一番おすすめです。
その際には、「急なことだったので気が動転してしまい、連絡が遅れて大変失礼しました」とか「本人から家族だけで見送ってほしいというという強い希望がありまして、ご連絡が遅くなってしまいました」など必ず伝えるようにしてください。
この一言によって呼ばれなかった親族も、「家族や故人の希望だったのなら仕方がない」と理解をしてくれるはずです。
まとめ
お葬式での親族の範囲は、一般的なお葬式の場合はあまり難しく考えずに済みます。
ただしお葬式の規模が小さい家族葬においては、どこまでの親族をお葬式に呼ぶのかが重要になります。
もしも終活としてエンディングノートを書こうと思っているのであれば、お葬式に呼んでほしい人のリストも忘れずに作っておきましょう。
最近のお葬式では多くの場合が家族葬で行われるので、あなたが明確な指示を残しておけば残される家族が親族トラブルに巻き込まれることもありません。
これもあなたが家族にしてあげられる「最後の優しさ」といえます。